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三四郎の言い分、父ちゃんの言い訳 Posted on 2026/09/18 辻 仁成 作家 パリ

三四郎の言い分、父ちゃんの言い訳

おつかれさまです。
三四郎にもきっと言い分があるんでしょうね。
なんで、ぼくはいつも決まった時間に、おしっこしろって、言われるんだ?
なんでぼくはいつもドッグフードなんだ?
なんでぼくはスーパーに入れないんだ?
なんでぼくはみんなが食事をしているときにテーブルの下にいなきゃいけないんだ?
なんでぼくだけ犬なんだ?
たまに、そんな風に思っているんだろうなって、顔をするんですよね。
この子、犬生の輪廻があるとしたら、もう、次は人間になるんじゃないかってくらい、めっちゃ、悟っているんです。
悟り犬・・・。
ぼくが仕事をしている時は、ソファの先端に顎を突き出し、しょっちゅうため息をついて、遠くを見ているんですよね。
ドッグトレーナーさんに預けても、この子だけ、池の湖面を見つめてみんなと遊ばないで考え事しているんですよ、と言われます。普段から物憂げな感じで、哲学をしています。
だいたい、めったに吠えないので、吠えたりすると、えええ、お前、まさか、犬だったんか、と驚く父ちゃんなのであります。
「なんでおれは犬なんだ!?」
三四郎にも言い分があるんでしょうな。
たまに、人間だったら、どんな奴なんだろう、って、夏目漱石の吾輩は猫である、じゃないんだけれど、あいつの横顔を見つめて、思う父ちゃんです。
「パパしゃん、ぼくはこれからどこへ行く?」

三四郎の言い分、父ちゃんの言い訳



犬と生きはじめてから、ぼくの中でいろいろな変化がありましたよ。
今日、インスタのラジオで語ったことですが、自然とか生き物と向き合っていると、自分が健全でないとならない気がするんです。
宇宙からの波動を受け止めるだけのキャパシティを持っていないと、自然や昆虫や動物からの清らかなメッセージを受け取れない気がする。
とくに、宇宙から届くメッセージって、些末なことに忙殺されてばかりいると見逃しがちですからね。
広大な場所で、全身をかいほうして聞き取らないと受け取れないパルスなんです。
大自然と向き合っていると、聞こえてくる声、というものがありまして、そういうものを尊いと思うようになってきました。
ノルマンディで犬と暮らしているのは、そういうものをきちんとキャッチするためだと思っています。
もちろん、東京やパリも好きですけれど、最近は、そこは遊びや仕事に行く場所になってしまいました。
この年齢にならないと気が付かないことかもしれませんね。
三四郎は、たぶん、その入り口の役割をしてくれているように思うんです。
ぼくが心を開けない時には、本当につまらなそうにしている。まさに、ぼくにとっては鏡のような存在ですね。

三四郎の言い分、父ちゃんの言い訳



「さんちゃん、ぼくにだって、言い分はあるよ。ぼくだって、反論をしたいし、世の中に対して訴えたい。でも、それは作品の中にいつもいれて、本当の姿はかくして生きているんだよ。こうやって、自然に耳をかたむけていると、聞こえてくる台地の声がある。あとどのくらい生きられるかわからないけれど、ぼくのそばにいてくれるだけでありがたい。まず、ぼくは毎朝、君に、おはよう、が言えるし、毎晩、君に、また明日ね、おやすみ、が言える。これは素晴らしいことじゃないか。言える相手がいる、ということ。今日もありがとう」

三四郎の言い分、父ちゃんの言い訳



三四郎の言い分、父ちゃんの言い訳

父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
そうですね、小説「泡」を読了しました。よく印刷されていました。ありがとうございます。
今日、「となりのヒトナリ」生配信させてもらいました。けっこう、深い話になりましたね。それから、ここではとくに宣伝はしないことにしていますが、ストーリーズを通して、ライブ情報などは流す約束ができました。笑。
アルバムジャケットが出来てきました。ディスクユニオンで予約をされると特典のポストカードが付くそうです。あはは。
皆さんの書棚に、きっと、小説「泡」と新譜「詠み人知らず」並びますね。うれしいな。孤独をあいする男の喜び。
終わりなき表現の道、突き進んでおります。
小さな声で、はい、えいえいおー。

三四郎の言い分、父ちゃんの言い訳

辻仁成 Art Gallery
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Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。