ノルマンディ、ツジ村便り
辻村相談窓口、「友だちって、な~に?」 Posted on 2026/10/13 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
さっそく、こんなご相談が届いております。
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匿名希望Oさん
「辻さん、友だちって、どこらへんから友だちと呼べる、と思いますか? 私は知り合いがめっちゃ多いんですが、親友かどうか、疑わしいんです。なんでも相談できる人はそれなりにいますけれど、真剣に聞いてもらえたか、よくわかりません。わからないまま、うやむやに年月が過ぎて、友だちなのかしら、といつも首をかしげております。辻さんにとって、どういう人間を友だちと定義されているか、教えてください」

おこたえしまーす。
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そうですね。友だちは多くない、父ちゃんです。同じく、知り合いはめっちゃいますよ。
ラインもよく交換しますが、すぐ、ブロックしたりするから、笑、友だちの定義を語る資格があるのか、ちょっとわかりませんね、すいません。
ま、パリでなら、よくここに登場する野本とかは、気を使わないでいい関係で、友だちと思いますが、線引きは難しいですね。
野本の下の名前は、まさふみ、だったと思いますが、
「あ、あ、おれ、マサ、よろしく!」
と、よくカフェで出会ったフランス人とかに、飲んだ勢いで言うてます。
なんかね、愛されキャラだから、みんなが「マサ!」と呼ぶのが嬉しくて、父ちゃんも、ノルマンディ周辺では、
「あ、ぼくね、ヒト。ヒトって呼んで、よろしく!」
と自己紹介しまくっているのですが、ヒト~と呼んでくれる人がまだまだマサに比べるとだんちで少ないのが、父ちゃんなのであります~。だから、あの生き方羨ましいな~、って、どっか憧憬の目で見ているのも事実。
ま、それにしても、俺たちの時代はもう終わったのかもしれませんよ。新しい世代が、パリでものし上がっていて、ぼくとか野本はもはや戦力外通知を受けた控えの選手みたいな感じ。えへへ。
オデオンとか、サンジェルマンでプレとか、オペラとか、サンタンヌ界隈で、こっそりと飲んだくれております。


2023年、パリの歴史的大音楽堂、オランピア劇場でのライブのスポンサーをやってくれたのが、この野本で、音頭をとってくれなかったら、あんなでかい会場で辻仁成はライブが出来なかったかもしれません。マジです。
冬のカフェ・ドゥ・マゴに野本を呼び出し、「あのな~、俺を男にしてくれ」
と頼んだんですわ。
「え、なんや、男じゃなかったんかい!」
「あほ、ちゃうわ。そうじゃなくて、実はな、オランピア劇場でライブやるんや、手伝ってくれ。旗をあげる」
と頼んだ時に、二つ返事で、
「おおお、そりゃあ、旗あげたれ。そうか、男にしてやる」
と言ってくれたあの瞬間、じーん、忘れられません。
ここぞという時に、手を差し出してくれる人が一人いたら、人間っちゅうもんは、なんとかやっていけるのだと思います。
辻史の中で、音楽においては、武道館でやったことよりも、フランスの殿堂オランピアを埋めたことがやっぱり、大きかった。集大成というか、死ぬ時に思い出すのは、あのステージの上で「ラヴィアンローズ」を歌った瞬間だったかな、と思うんです。
憧れていたエディット・ピアフと同じステージで、「バラ色の人生」を歌ってやった。まったく、ニュースにはならなかったけれど、でも、俺はやった。手伝ってくれたんが、野本でした。
やったという事実が、大事なんですよ。
シングルファザーになって、苦しかった時期の中で、あの瞬間だけ、一瞬、輝くことが出来た。そして、その金星は、最初に手を挙げてくれた友人のおかげが、大きい。
こういうものはね、理屈じゃない。
昔、よくごちそうしてあげていた若い連中がいたんですが、けれど、風向きが変わると、みんな一瞬で雲散霧消。
くらーく、息子の弁当をコツコツ作ってた時に、
「ちょっと飲もうか?」
と不意に連絡してきたのが、野本、でした。呼び出されて、どうでもいい話をだらだら、されてから、たまに会って、飲むようになった。でもね、どん底の時にはそういうなんでもない感じで、寄り添ってくれる奴って、すごいことちゃいますか?
「どうや、最近、無理したらあかんで。たまに、飲もうか」
と敵だらけだと思っていた世界で、野本が言ったんですよ。笑。「あ、まあ、ええよ」とぼくは嬉しいくせに、そう言ったわけです。人間不信ってことばがありますが、それをひっくり返すのも、人間の力なんですわ。思わぬところに味方はいます。
そういう人を見失ったらいけん。
ま、友だちってのは、なんやろな、調子のいい時に集まって来る奴らなんかじゃなくて、つらい時に、なんか飲むか、という感じで、出現するやつこそ、本物だと思う。
そういう人間が一人いたら、やっていけるで。マジで。そういう一人を大事にしたらええ。
でも、ゼロはあかん。ゼロってことはなんかじぶんが悪い、と思った方がいい。ぼくも長いことゼロでした。笑。
昨日、久しぶりに、野本と飲んだんですよ。
「なんか最近、飲んでないから、ちょっと飲もうか」
ぼくが誘って・・・。左岸のいつものカフェで・・・。酔いました。
☆
小さな声で、えいえいおー。

父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
安東美術館での「歌う詩人」デビューライブ、近づいてきましたねー。新しい仲間たちと、最高の音をはじきますね。そして、セットリストがさきほど決まりました。
18日、19日(青山マンダラ)、新しい生きざまをお届けします。
わくわく。



