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パリ最新情報「ストリートアートでエールを送る。パリで広がる青と黄色のカラー」 Posted on 2022/04/02 Design Stories  

ヨーロッパの各都市で見かけるストリートアート。
ここパリでも盛んで、アーティストたちがこぞって腕を競う激戦区となっている。
街のいたる所に見られる彼らの作品だが、どこからが芸術で、どこからが落書きなのか線引きが難しい。
一見なんの秩序もないように見えるが、近年のパリでは市が正式な許可を下しており、決められた場所であれば申請後に作品を残せるようになっている。
そして今、パリのストリートアーティストたちが、作品を通してウクライナに連帯している。



パリ最新情報「ストリートアートでエールを送る。パリで広がる青と黄色のカラー」

※パリで一番小さなストリートアート、直径5cmの猫ちゃん

パリ13区は、ストリートアートを芸術として受け入れ、その振興に最も積極的に携わっている地区だ。
パリ中心から離れているこの地区は戦前、ほとんどが森か空き地であった。
1970年代になると外国人労働者を受け入れるため、白い壁の無機質な高層アパートがいくつも建設された。日本の公団のような建物である。

時は経っても、13区は観光客にとって特別な理由がない限り訪ねる場所とはならなかった。
そこで13区の区長、ジェローム・クメ氏は2013年に「町おこし」としてアパートの壁をキャンバスにすることを提案した。

パリ最新情報「ストリートアートでエールを送る。パリで広がる青と黄色のカラー」

地球カレッジ

地域のギャラリーと協力し、世界各国から応募者を集め、優秀なアーティストを書類審査を経て選抜する。
そうすることで次第にアマチュアの落書きが減っていき、13区には自然とプロたちによる壁画だけが残っていった。

現代的なアパート・無機質な白い壁ばかりだったパリ13区が、ストリートアートによって意味や存在を持ち出した。世界的にもこの地区のストリートアートは大変有名で、今ではガイド付きで観光客が訪れるほどになった。

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※フランス人アーティスト、セス・グローブペインター氏による作品。

戦禍のキーウ市(キエフ市)もまた、世界有数のストリートアートの街だ。
パリ13区にはウクライナ系のアーティストが多数住んでおり、侵攻が始まってから次々とウクライナに連帯するストリートアートが発表されている。
例えば写真の女の子の絵は、今パリで最も注目を集めている作品だ。
アーティストのグローブペインター氏は、2014年のウクライナ紛争中に現地ドンバスに滞在した経験があり、そこで出会った子供をモチーフにした。



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※女性アーティスト、キャロル・B・コラージュ氏による作品。

コラージュ氏は当初、3月8日の国際女性デーに合わせたストリートアートを描く予定だった。しかしウクライナ侵攻を受け、急遽内容を変更。
紫色は、女性の権利と平等を象徴している。そして同時に「自由、平等、連帯」というモットーを掲げ、ウクライナ国民への連帯を切手風に表した。



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※イギリス人アーティスト、ケル・アブストラクト氏による作品。『自身の権利のために戦え』

こうしてパリ13区では、プロたちによる素晴らしいストリートアートを見ることができる。
思い起こせばパリ同時多発テロの時、そしてコロナ禍と、壁に描かれる内容はしばしば風刺的なものが多かった。
糾弾、支援、意識改革、メッセージ性、これこそアーティストが手段で示すもの。
「マーキング要素」の強い落書きとは180度異なる、パリ13区のストリートアートであった。(ル)

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