日本では、本日、2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられた。
子を持つ親としても、18歳を迎えて新たに成人する子も、「こんなに早く大人になって大丈夫なのかな」と不安を感じる人は少なくないだろう。

フランスでは1974年より成人年齢が18歳と定められており、世界的にも18歳成人というのが一般的なようだ。
それでは18歳で「大人」になることのメリット・デメリットはどんなものがあるのだろうか。フランスの例を挙げながら、日本との違いを比較・ご紹介していきたい。

まずは飲酒・喫煙の可能性だ。
日本では18歳成人となっても、飲酒・喫煙開始が可能な年齢は20歳から。これは、アルコールやタバコの健康被害が懸念されることから20歳からと設定されている。

一方、フランスではどちらも18歳から解禁される。
健康志向が浸透し、フランスでも最近の若者はアルコールを飲まなくなったとされているが、それでも2年の差は大きいような気がする。

タバコに関しても、フランスは「喫煙大国」のイメージがある。確かに日本に比べると、喫煙風景は未だにパリのあちこちで目にする。
日本円にして1箱1000円前後もする高級嗜好品を、18歳の若者が手を付けてしまって良いものだろうか。これに関しては本人の責任といえど、デメリットの方が大きいのではないだろうか。

そしてこれから日本もフランスと同様になるのが、男女ともに18歳で婚姻が可能になることだ。
日本では高校進学率の上昇や、結婚にはある程度の成熟が必要と判断された結果、女性の婚姻年齢が16歳→18歳に引き上げられた。

フランスでは性別関係なく18歳と定められているが、妊娠しているなど重大な理由がある場合のみ、自治体の承認と父母の同意により18歳未満の者でも婚姻が可能になることがある。また、離婚後の再婚禁止期間も定められていない。
これについてはやはり、フランスでの「女性の権利」が尊重されているといって良いだろう。

また、意外と思われるかもしれないが、フランスではかなりスパルタな家庭が多い。
スキンシップは多めでも、金銭面での甘やかしはしない、とのいうのが一般的なのだ。
18歳を過ぎたら、両親の援助に頼るのではなく、友人やカップルで同居しながら助け合う。

選挙権が与えられるのだから、「まだ大学生だから親におんぶで抱っこでも仕方がない」というエクスキューズが通用しないのである。
経済的な独立こそ大人の証にほかならない、そういった考えが染みついているので、親との同居は全くといって良いほど見られない。
そのため高齢のおじいちゃん、おばあちゃんが1人暮らしをしているのが日本より多く見受けられる。家族との連絡は頻繁にとっているようだが、これも個人主義の行き着く先、といったところだろうか。

そして、叫ばれる若者の「政治離れ」について。
フランスでもコロナ禍の政府の対応を巡って政治に「幻滅」する若者が少なくないが、それでもマクロン大統領に対抗するデモが学生のあいだで行われるなど、熱い若年層が存在するのは確かだ。

2020年には、フランス南東部のバンジュー村で19歳の現役大学生、ユゴー・ビオレ氏が村長に抜擢されている。
未熟な点を指摘する声もあるとのことだが、18歳で選挙権が与えられ、政治に参加することができるのは国にとってメリットの方が大きい。
それによって若年層を導く社会の「受け皿」を整えることも必要となるので、結果的に良い方向につながるのではないだろうか。

また、10年パスポートの取得、携帯電話やアパートの契約なども18歳から親の同意なしで可能となる。
ただ、悪質な事業者による高額な商品販売など、軽犯罪に巻き込まれる可能性があるのは日本もフランスも同じである。
フランスでは法律で7日間のクーリング・オフ期間が定められているものの、経済観念だけは早い段階でしっかりと身に着けさせたいものだ。

18歳成人の新たな法律について、ほとんどの人が「経済的な心配」を抱いていると思う。
しかし、フランス家庭を見ていると、「自立」とは何か、そして「親が支える」とはどういうことかを考えさせられる機会が多い。
親子の情愛は国によって違うので一括りにできないが、少なくとも40年近く18歳成人がまかり通っている国から学んだことは大きい。
いずれにしろ、教育の場が成熟する、現実味をもって指導するなど、大人にとっても学びが増えるのは間違いない。（大）