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パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」 Posted on 2026/09/16 Design Stories  

 
パリの中心部、シャトレ。大型駅やショッピングモールがあり、常に多くの人が行き交う場所。実は、そこから歩いてすぐのところに、ほとんど知られていない中世の塔「ジャン・サン・プールの塔(La tour Jean-sans-Peur )」がある。
 

パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

※ジャン・サン・プールの塔



 
自分もきちんと調べるまでは知らなかったのだが、ジャン・サン・プールの塔は1409〜1411年に建てられた塔で、歴史的建造物にも指定されている。今あるパリの、オスマン建築が形づくられた約400年も前から、ここに存在しているということだ。

しかも、元々は塔だけの建物ではなかった。中世フランスの名諸侯、ブルゴーニュ公ジャン・サン・プールの邸宅が隣接していて、巨大な館はすでに失われたのだが、この塔だけが21世紀の現在に残されたという。
 

パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

※チケット売り場ではワンちゃんがお出迎え。趣のあるエントランス

パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

※かつて塔には立派な屋敷が隣接していた

 
予約不要で入場できるジャン・サン・プールの塔。チケット代を現地で払うと、まるで古城のような塔の内部を自由に見学することができる。
塔は、今でいう5階建ての高さ。屋内の中央に設置された螺旋階段に沿って、塔の上部へと登っていく。 エレベーターが存在しない中世の塔なので、この細い螺旋階段を昇り降りしながら見学する仕組みになっている。
 

パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

※自分の偉大さを誇示するため、どの建造物よりも高い塔を熱望したというジャン



 
ジャン・サン・プールとは、フランス語で「恐れ知らずのジャン」を意味する。ファーストネームがジャンで、サン・プールが“恐れ知らず”という呼び名だ。
つまり彼は、百年戦争期のフランスで強大な力を持った有力貴族で、呼び名のとおり軍事にも政治にも長けた人物だったという。一方では政敵の暗殺を命じるなど、かなり物騒な顔も持っていたとのこと。パリに構えたこの邸宅&塔は、そうした活動の拠点の一つだった。

だからだろうか、現在のジャン・サン・プールの塔は、“中世の素敵な塔”というよりも、“緊張感のある、かつての権力闘争の場所”という印象を少なからず受けた。
 

パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

※ジャン・サン・プールのプライベートな居室。奥にはパリ最古の「トイレ」が

 
内部は想像したよりもずっと規模が小さく、螺旋階段の途中途中に現れる小部屋を一つずつ訪問していくイメージ。なかでも興味深かったのは、ジャン公のプライベートな居室であった。
ここは塔の上部にあって、私的な会合や、執務のために設けられた部屋なのだそう。さらに部屋の奥には、パリで現存する最古級の「トイレ」まで残されていた。
このトイレは暖炉の裏側にあり、実は壁の内側にパイプも通っていて、地下の槽へと導く構造だったという。暖炉の熱を利用して、「トイレ暖房」も備えていたという事実にも驚いてしまった。
そんな約600年前の、超一流貴族の邸宅設備を見られるのがジャン・サン・プールの塔の面白いところかもしれない。
 

パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

※中世の衣服(下着)の展示などもある



パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

 
もう一つ、螺旋階段の上部にある、石造の「ヴォールト(天井)」も見逃せない。これはオーク、ホップ、サンザシなどの植物が絡み合うように彫られていて、中世フランス彫刻の傑作の一つだという。また、植物には、ジャン・サン・プールの家系を表す「家系樹」のような意味も込められているそうだ。

こうして塔は古城のような雰囲気があるものの、実際には本格的な防御設備というわけではなく、権力を示す意味合いがやはり強かった。
 

パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

※ベランダから見た塔の上部

パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

※かつては塔の隣にジャンの屋敷があった



パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

※塔の最上部、屋根裏のような雰囲気

 
最上階には当時の衣装も再現され、中央にはジャンの息子、フィリップ・ル・ボンの姿が。中世の貴重な建築物と、権力をめぐるフランスの歴史と、当時の富裕層のゆたかな暮らし。小さいながら、ジャン・サン・プールの塔ではこれらすべてを一度に感じることができたと思う。

一階には自由に使えるテラスも用意されていて、最後にはここに戻ってくる。塔を出たあとではいきなり現代に戻されたような、不思議な感覚を抱いてしまった。
こうして、“シャトレ”というパリの中心地に突如現れるジャン・サン・プールの塔。華やかではないかもしれないが、今見ているパリの、さらにその前のパリの姿がここにはある。(大)
 

パリ・アート情報「パリに突如現れる、秘密の中世の塔」

【ジャン・サン・プールの塔(La tour Jean-sans-Peur)】

住所:20 Rue Étienne Marcel, 75002 Paris
開館時間:水曜~日曜、13:30~18:00
閉館日:月曜、火曜
入場料:一般7ユーロ

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