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パリ最新情報「仏ファストフードの洗える容器、イートインの風景はどう変わった?」 Posted on 2023/01/07 Design Stories  

 
フランスのファストフード店では今、イートイン用の使い捨て容器が使用禁止となっている。
これは年明けの1月1日から始まったもので、昨年末のパリ最新情報でもご紹介させていただいた。
目的の一番にはゴミ削減、そしてCO2の削減がある。
また2020年に施行されたフランスの「廃棄物対策法」の一環を担う存在として、数か月前から各ファストフード店で着々と準備が進んでいた。

例えば大手マクドナルドではこれまで、年間平均で22万トンのゴミを排出していたという。
しかしこれを洗って繰り返し使える食器に変更させると、年間約18トンのゴミ削減に繋がり、CO2対策にも大きな改善が期待できるとのことだ。
そんな洗える容器のスタートから約一週間。
人々の反応は? 洗って繰り返し使える食器の使用が本当に使い捨てよりエコなのか? 盗難問題は? といった各疑問を検証するため、実際に首都パリのファストフード店に足を運んだ。
 

パリ最新情報「仏ファストフードの洗える容器、イートインの風景はどう変わった?」



 
パリ中心部にあるマクドナルドでは、1日から繰り返し使える食器に変更となっていた。
ただ一部店舗では設備が追いついていないといい、場所によっては遅れてスタートとなる店舗もあるようだ。

対象の容器はポテト、ドリンク、ナゲット、デザート類、サラダ。
ポテトやドリンクはサイズごとに異なる容器が用意されており、そのほとんどが生分解性プラスチックでできている。
ただラージサイズのドリンクやアイスのカップ、デザート類の皿には、セラミックかガラスの容器が使用されていた。
なお、ハンバーガーの包み紙だけは味と形状を保つために使用が許可されている。

※生分解性プラスチック…プラスチックと同等の耐久性で、バクテリアなどの微生物によって最終的には水と二酸化炭素に分解される。
 

パリ最新情報「仏ファストフードの洗える容器、イートインの風景はどう変わった?」

※ナゲット4個入り。蓋つき

 
さてフランス国民の反応はというと、そのほとんどが賛成派で、「味が変わらないので、ゼロウェイストに繋がるのならばこちらの方が良い」「家庭でもゴミの分別や食器洗い機へのカトラリーの入れ方を子供に教えているので、今回の切り替えはすんなり受け入れることができます」と肯定的な意見が続出しているそうだ。
 

パリ最新情報「仏ファストフードの洗える容器、イートインの風景はどう変わった?」

※ゴミ箱にはいつもの分別に加え、洗える容器専用のBOXができた

地球カレッジ



 
こうした試みはフランスが世界初となっているわけだが、やはりデメリットも早々に露呈されている。
それは、施行前から危惧されていた「食器の盗難問題」だ。
開始から一週間足らずで、フランス全国のファストフード店では盗難が予想以上に発生している。
今回対象となっている店舗は店内に20席以上を持つマクドナルド、KFC、サブウェイ、バーガーキングなどだ。
そして盗難がいちばん多いのは、大手チェーン店の「ポテトカップ」だといい、そのデザイン・プレミア感から、観光地およびパリ郊外などで頻発しているという。
 

パリ最新情報「仏ファストフードの洗える容器、イートインの風景はどう変わった?」

パリ最新情報「仏ファストフードの洗える容器、イートインの風景はどう変わった?」

※すべての容器の底には防水性のICチップが貼り付けられている。GPS機能は無いが、在庫管理のため容器が店の中にあるか、それとも店の外にあるかだけが分かる装置となっている



 
また洗って繰り返し使える食器の使用が、本当に使い捨てよりエコなのか?という疑問もある。
それについては専門家、仏各紙などがきっぱり「イエス」と答えている。
というのは、ファストフード業界においては、使い捨て容器の「製造・配送」時に最も多くのCO2を排出するためだ。
例えば、まず箱や包装紙を生産し、工場から各所まで輸送する(何カ所か中継する)。
国内で何万店舗もあるファーストフード店に一つ一つ届け、その後は大量のゴミをリサイクル、焼却、埋め立ての各施設にまた輸送しなければならない。
それが長距離であればあるほどCO2排出量が増えるということで、総合的に見ても洗って繰り返し使う方がよほどメリットが大きい。
 

パリ最新情報「仏ファストフードの洗える容器、イートインの風景はどう変わった?」

 
マクドナルドを初めとしたファストフード店では、新型の高性能・食器洗浄乾燥機を導入している。
店員たちの仕事は増えたというが、結果的に増員したのは1〜3名ほどで、この食器洗浄乾燥機は3分間・60度の温度で洗浄から乾燥までのすべてが可能だという。
まだまだ対応の追いつかない店舗はあるものの、こうした光景がこれからのスタンダードになっていくのだろう。(チ)
 

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