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欧州最新情報「イタリアで屋外でのマスク着用義務がなくなった日」 Posted on 2021/06/30 Design Stories  

イタリア全土がついに真っ白になった。全州がホワイトゾーンになったのである。イタリアでは、感染状況に応じて、州ごとにホワイト、イエロー、オレンジ、レッド(ロックダウン)と色分けされ行動制限が決められている。ホワイトという最終段階は、日常生活にほぼ近い状態である。

2021年6月28日、新規感染者数389名、陽性率は、0.5%(検査数75,861件)、死者28名。
そしてこの日、ホワイトゾーンに限り、パンデミックの象徴であるマスクの規制が緩和され、屋外でのマスク着用の義務がなくなった。しかし、感染の可能性を防ぐために、いくつかルールや制限は、残されている。
屋外であっても、人との距離を保てないような集まりの場面では、着用が義務付けられている。公共交通機関、バー、レストラン、ショップ、ショッピングセンターなど屋内に入る際には、マスク着用の義務があり、外出時には必ずマスクを持っていかなければならない。

欧州最新情報「イタリアで屋外でのマスク着用義務がなくなった日」



感染者数が少ないホワイトゾーンの状況であれば、屋外でのウイルスの循環が非常に少なく、科学技術委員の専門家は疫学的状況が悪化することはないと予測している。しかし、海外で変異株「デルタ」、さらに変異した「デルタ・プラス」が急増していることで警戒が高まり慎重な姿勢である。

今後、イタリアでも「デルタ」、「デルタ・プラス」症例が急増した場合、どのようになるであろうか。ミラノ大学のウイルス学者は、ワクチン接種が完了しても、感染の可能性があり、2回のワクチン接種で重症化は非常に稀であると発表した。そのため、より一層、ワクチン接種2回の完了が大切になってきている。

イタリアのワクチン接種率は、2021年6月28日現在、少なくとも1回接種した人は、全人口の54.47%、2回接種完了者は、全人口の30.39%となっている。(接種キャンペーンの対象である12歳以上で考えると少なくとも1回接種した人は、62.73%、2回接種完了者の割合は33.72%)

欧州最新情報「イタリアで屋外でのマスク着用義務がなくなった日」



7月1日から欧州デジタルグリーンCOVID証明書(DGC:Digital green certificate)がスタートする。イタリアでは、すでに5月中旬から観光のための移動、高齢者施設へのアクセス、レッドゾーンやオレンジゾーンなど行動制限のある地域への移動のためにグリーンパスを独自に発行している。これは、欧州デジタルグリーンCOVID証明書と同じである。

イタリアでは、1回目のワクチン接種者に対しても、接種後15日目から2回目の接種日まで有効としている。欧州委員会の規則では、加盟国が同じ条件で予防接種証明書を受け入れることを求めているため、1回目の接種に関する証明書を持つ自国民の渡航制限を解除することを決定した場合には、他のEU市民を同じように扱うことになっている。そのため、イタリアでは、他の加盟国からの1回目接種者も受け入れている。
しかし、イタリア国内の移動は可能であっても、他のEUへ国境を越えて旅行する場合、加盟国の判断によっては、2回の接種サイクル完了を待たなければならない。

ワクチン接種以外の取得条件もある。
COVID感染後の回復から6カ月以内であること、分子検査(PCR検査)、または、抗原検査の陰性結果の証明で、イタリアでは、いずれの検査方法も有効期限は48時間以内とされている。
(欧州デジタルグリーンCOVID証明書では、分子検査は72時間以内、抗原検査は48時間以内)



イタリアのグリーンパスは、観光以外に様々な場面で必要とされている。例えば、結婚式の参加、高齢者施設にいる家族への面会、見本市、集会、会議、スポーツイベント、コンサートへの参加、また今後、クラブやディスコが再開された時には、入場するためにも使われる。そして、再びレッドゾーン、オレンジゾーンになった場合、州を越えて移動する際に使われることになる。
グリーンパスをチェックする権利を有する人は、警察や公務員、結婚披露宴などパーティ、芸術やスポーツのイベントが行われる施設や場所の管理者と許可を受けた従業員となっている。
それでは、ホテル宿泊などはどうなのかという質問に対して保健衛生省のスペランツァ大臣は、ホテル経営者、レストラン経営者、ショップ経営者は、顧客にグリーンパスを求める権利はないと明言している。

欧州最新情報「イタリアで屋外でのマスク着用義務がなくなった日」

ワクチン接種が進む一方、No Vax (予防接種に反対する人、特に子供に予防接種を受けさせることに反対する親)の論争もある。
ミラノの国立劇場では、観客、劇場の従業員、劇団員の健康を守るため感染対策規則に沿って、入場時に「8ヶ月以内のワクチン接種証明書」「15日以上経過した初回のワクチン接種証明書」「24時間以内に実施された分子または抗原性検査による陰性結果」のいずれかの証明書の要求を発表した。
これに対してFacebook上のコメント欄でNo Vaxの論争が巻き起こった。

ワクチン接種の権利が18歳以下の若年層にまで拡大されたことで、ワクチン接種をめぐって親子間で対立するケースがでてきている。12歳~18歳のワクチン接種のインフォームド・コンセントの必要書類には、親または親権を有する人の署名が必要であり、ワクチン接種に同伴し、親の身分証明書の提示も必要になる。

フィレンツェ市に住む17歳の少年は、両親がワクチン接種に同意してくれないとトスカーナ州の弁護士協会の弁護士に相談した。両親に対する子供の申し立ての裁判所での手続きを開始するには、少年が検察庁の民事介入室に行かなければならない。弁護士は、裁判所を巻き込まずに解決策を見つけたいと考え、両親に対して説得をしていく方針である。現時点では、まだ訴訟は始まっていない。
この弁護士は、アレッツォ市に住むワクチン接種を希望する16歳の少年からの依頼も抱えている。

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実際、私が暮らしている町でも同じようなケースがある。両親は、ともにワクチン接種済みであるが、15歳の息子には、ワクチンを接種させたくないとしている。重症化しにくい年齢であり、研究が進んでワクチンが安全であるとわかる段階まで待ちたいので同意するつもりはないと語り、近所のバールで議論となった。
その時、離れたテーブルで新聞を読んでいたレオナルドが、「隣のビエッラ県で2回のワクチン接種済みの人がデルタ変異株に感染したらしい」と呟いた。
屋外でのマスク着用義務がなくなった日、バールでは、約半数が今まで通り、マスクを手にしていた。

スペランツァ大臣は、3回目のワクチン接種を進める可能性を発表した。”3回目のワクチン接種が必要になる可能性が非常に高く、変異株をカバーするために「修正」されたワクチンを接種することになるであろう。(奥)

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