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パリ最新情報「日本の金継ぎと、パリジェンヌの『KINTSUGI』」 Posted on 2023/03/26 Design Stories  

 
日本の伝統的な修復技術、金継ぎに魅せられたパリジェンヌがいる。
金継ぎは欠けた器を新しく生まれ変わらせる、日本古来の修理法である。
この金継ぎが実は「価値あるサステナブルな取り組み」として、今のパリで関心を集めているのだという。
 

パリ最新情報「日本の金継ぎと、パリジェンヌの『KINTSUGI』」

 
パリ10区にある「ブランシュ・パティーヌ(blanche patine)」のオーナーであるセシルさんは、パリでも非常に珍しい女性の金継ぎ師。
19世紀フランスの陶器を集めたショールームを経営するほか、独学で学んだ金継ぎを地元フランス人に向けて展開している。

もとは美術品オークションの会社に勤務していたというセシルさんは、幼いころから絵を描くこと、そしてアンティークの陶器が大好きだったという。
金継ぎとの出会いも必然だったといい、後に本や動画を見ながら、独学で技術を習得する。
惚れ込んだ理由としては、「傷を隠したりなかったことにするのではなく、“歴史”として丸ごと愛するという金継ぎの哲学が、人生の哲学にも通じた」とセシルさんは語ってくれた。
 

パリ最新情報「日本の金継ぎと、パリジェンヌの『KINTSUGI』」

※金継ぎ師のセシルさん、アンティーク陶器は19世紀から20世紀初頭のフランス製。



 
修復を行う陶器はすべてフランスのもので、第2次世界大戦以降に生産されなくなった貴重な陶器を専門としている。
買い付けも自身で行い、フランス中を愛車で旅しながら見つけていくのだとか。
立ち寄る場所はさまざまで、蚤の市や各地のオークション、古いお城から遺産として受け取ることもあるという。
 

パリ最新情報「日本の金継ぎと、パリジェンヌの『KINTSUGI』」

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現地フランス人の評判はもちろん良い。
蚤の市にあるように、フランスには物を大事に扱い、次世代へと引き継いでいく文化がある。
実際に、ショールームを訪れた時にはパリのバイヤーが詰めかけていた。
また顧客にはシュバル・ブランホテル(パリ最新の高級ホテル)のチーフシェフもいる。
彼が経営するいくつかのレストランでは現在、金継ぎの皿が採用されているのだという。
 

パリ最新情報「日本の金継ぎと、パリジェンヌの『KINTSUGI』」

 
セシルさんが一つの金継ぎにかける時間は最低でも一ヵ月。
傷の大きなもの、複雑なものは四ヵ月ほどかかるといい、一番の敵である「湿度」と戦いながら、自宅やアトリエで丁寧に金継ぎを施す。
使用する道具は日本からわざわざ取り寄せることもあるそうだ。
さらに道具箱は軍人だった祖父が使用していた、第二次世界大戦中のランチボックス(木箱)を使っているということで、歴史を丸ごと愛する彼女の哲学がここでも見て取れた。
 

パリ最新情報「日本の金継ぎと、パリジェンヌの『KINTSUGI』」

※パリ10区にある「blanche patine」のショールーム。予約制。



 
傷や劣化を個性に変える金継ぎ技術。
フランスではこうした「物に第二の人生」を与える取り組みが、重めの社会情勢を経てますます広がっている。
金継ぎに関しては長く使い続けるだけでなく、陶器が辿った物語とともに芸術的価値を上げていく、というのがフランス人の価値観にもぴたりとフィットしたようだ。
日本文化とフランス文化の融合は至るところで見られるが、今回のKINTSUGIはこれまでにない、とても素敵なフュージョンだった。(セ)
 

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