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ロンドン最新情報「全面解除が一旦見送りとなったイギリス。政府が出したコロナ対策とは」 Posted on 2021/06/16 Design Stories  

 
規制緩和へのロードマップを3月以来、第3段階まで順調に進めてきたイングランドだが、最終段階として早ければ今月21日に予定されていた「すべてのソーシャルディスタンスの撤廃」が、4週間先の7月19日まで見送られる見込みになった。
今日、法案が国会で可決される見通しだ。
イギリス国内では、感染力の強いデルタ株がコロナウイルスの9割を占めるとされ、感染者が増え続けている。
医療科学企業ゾーイー(Z O E)社とロンドン大学キングスカレッジのティム・スペンサー教授(遺伝疫学)らが共同で行っている非営利の調査プロジェクトによると、デルタ株はのどの痛みと鼻水、頭痛が主な症状で、感染して症状が出ても「風邪をこじらせた」と勘違いしやすい。
デルタ株に対してもワクチンは有効で、入院患者の中にワクチンの2回の接種を完了した人は非常に少ないと、NHS(国家保健サービス)が認めている。
また、感染者が多発していたボルトンなどの一部自治体では、重点的なワクチン接種計画などが功を奏し、感染者は減りはじめている。
イングランドでは今日から21歳以上のワクチン接種の予約受付が開始され、今週末までに18歳以上の成人全員が予約対象になる見込みだ。
政府は、4週間かけて広範にワクチン接種を進めることで、安全に規制緩和ができると自信を示している。
 

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ジョンソン首相は、結婚式に関してだけは、招待客の定員を撤廃するという目立った規制緩和を決めた。
首相自身が5月末、昨年生まれた息子の母親であるキャリー・シモンズさんとウエストミンスター大聖堂で、規制に従い定員30人の招待客を招いて結婚式を挙げたばかり。
ただし、6月21日以降の結婚式でも、参列者はソーシャルディスタンスを守り、飲食はテーブルサービスに限り、屋内にダンスフロアを設けてはならない。
また、結婚する二人以外の出席者は、飲食時以外はマスクを着用する。
「ワイングラスを片手に踊って騒ぐ」という通常の結婚式と異なる光景になることは確実だ。
 

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昨年3月以来営業が禁止されているナイトクラブの再開は延期される。
パブやレストランは、引き続きソーシャルディスタンスの順守が義務づけられる。
各自治体では、規制を緩めて路上に屋外席を設けることで席数を最大限に確保できるように配慮しているが、店のつくりによっては通常の3分の1ほどしか客が入れられない。
英国ビール・パブ組合は、4週間の規制緩和延期により、業界の損失は4億ポンドにのぼると推計している。
劇場やコンサートホールは、観客を通常の定員の50%に抑えて営業している。
6月21日以降は定員100%分のチケットをすでに完売した公演もあり、主催者は振替に対応しなくてはならない。
また、劇場内に設けられた豪華なシャンデリアが下がるバーやレストランで、賑やかな雰囲気の中ディナーや食前酒を味わうのも楽しみのひとつだが、ロンドンの劇場街ウエストエンドでも、現在は路上にテーブルと椅子を並べる劇場が目立つ。
 

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政府はかねてから、すべての規制緩和を不可逆的に進め、ロックダウンに後戻りしないことを公言し、慎重な姿勢を示している。
前回の5月の規制緩和では海外旅行が解禁になったものの、検疫期間なしで渡航できる「青色」の国に含まれていたポルトガルがその後「黄色」に格下げされ、旅行中のイギリス人が高騰したフライトに殺到し、検疫開始前に予定を切り上げて帰国するなど混乱が生じた。
今年の夏休みは国内旅行が人気で、イギリス国内の宿泊施設はすでに満室のところが多い。
ただし、夏は通常、イギリス各地で大小さまざまな野外フェスティバル1000件ほどが開催されて大勢の若者や家族連れがキャンプをしてにぎわうが、6月と7月に予定されていたフェスティバルの多くがすでに中止された。
アーティストや技術者ら8万5000人について、補償を政府に求める声が与野党の国会議員から上がっている。
イギリスの音楽業界はブレグジットによっても、ヨーロッパ各国の公演でのビザ取得の費用や機材輸送にかかる関税の発生で打撃を受けていて、イギリスの一大産業でありながら、漁業従事者などに比べて政府の補償の遅れが批判されている。
 

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一方、6月21日以降も引き続き、「できる限り在宅勤務を行うように」との要請が続くことについては、おおむね歓迎されているようだ。以前はラッシュアワーだった朝9時台のロンドン地下鉄も、今は1つおきに座席に座るソーシャルディスタンスが十分に順守でき、快適だ。
公共交通機関やショップ、飲食店などではマスク着用が義務づけられていて、イギリス人の間でもマスク着用が定着してきた。
通勤時間の地下鉄車内では、職場で配布されたらしい使い捨ての不織布のマスクを使用する人が目立ち、それ以外の場面では布製のマスクが多数派だ。
マスク着用規定の撤廃が可能かどうかについて、政府は専門家に調査を委託しているとBBCが伝えている。

7月末までにすべての成人に少なくとも1回のワクチン接種を行うという政府目標は達成できる見込みだが、イギリスに以前の世界が戻ってくるのはまだ先になりそうだ。それでも、夏に向けてワクチン接種が進んでいることで、おおむね希望的な空気が感じられる。(清)
 

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