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パリ最新情報「コロナ治療薬『パキロビッド』はどんなクスリ?」 Posted on 2023/03/14 Design Stories  

ファイザー社のコロナ治療薬 Paxlovid(パキロビッド)。重症化するリスクのある人にのみ処方されるこの薬は、症状が出てから5日以内に服用する必要があるため、フランスでは、街の薬局で購入可能となっている。一体どんな薬なのか?実際に服用した人からも話を聞いてみた。

パリ最新情報「コロナ治療薬『パキロビッド』はどんなクスリ?」

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どんな薬?
アメリカの製薬会社ファイザーが開発した経口抗ウイルス剤で、「ニルマトレルビル」と「リトナビル」2種類の錠剤。コロナ陽性と診断された後、できるだけ早く、最大でも症状が出てから5日以内に服用する必要がある。ウイルスの複製に必要な酵素を標的とし、その働きを阻害することにより、体内でコロナウイルスが増えるのを抑える。朝と晩、1回につき、ニルマトレルビル2錠とリトナビル1錠の合計3錠を1日2回、5日間服用。食後でなくてもよいが、できれば12時間あけるのが好ましいようだ。フランスでは2022年2月より、販売開始。

どのようにコロナに反応するのか?
まず、パキロビッドによる治療は、重症化リスクがある人にのみ行われる。フランスでは主に以下のような人が対象になっており、処方は医師の判断となる。
・年齢やワクチン接種の有無にかかわらず、免疫抑制疾患をもつ人。
・年齢に関係なく、重症化リスクの高い併存疾患を持つ人で、ワクチン接種が完全でない場合(ワクチン未接種、1回目のブースター未接種、60歳以上の2回目のブースター未接種)。
・全ての60歳以上の人(合併症がない場合も含む)で、ワクチン接種スケジュールが完全でない場合(特に2回目のブースターの未接種)。

パリ最新情報「コロナ治療薬『パキロビッド』はどんなクスリ?」



入手方法は?
フランスでは、パキロビッドは薬局で入手できる最初のコロナ治療薬となる。処方箋が必要で、受診して医師に作成してもらうか、なるべく早い服用が必要なため、3ヶ月の期限付きで事前に処方箋を出してもらい、医療専門家の監督下で実施されるRT-PCRまたは抗原テストでコロナ陽性が確認されればすぐに購入することができる。重症化リスクのある人にとっては、予め処方箋をもらっておけるのはありがたい。
値段は30錠入り1箱5~7ユーロ。(ただし、処方箋が必要)

効果は?
フランス国立衛生局は、パキロビッドは「さまざまな変異株に対して有効である」と発表している。この治療薬の有効性を確認するデータによると、投与後にコロナ重症化(入院または死亡)リスクが約85.2%減少すると実証されている。

副作用は?
2022年9月に医薬品庁が確認した副作用は165例で、そのうち61%は重篤なものではなかった。保健当局が特に監視しているのは、服用後に動脈性高血圧を発症する可能性があること(6例中、2例は重篤)。しかし、「ほとんどの場合、血圧の上昇は一過性であった」とANSM(フランス当局の医薬品安全局)は発表しており、臨床試験で報告された高血圧の発生率は1%未満であった。高血圧の他には、下痢や消化不良、発疹、味覚不全、めまい、筋肉痛、吐き気などが報告されている。

パキロビッドを使用できない人は?
・血液透析を受けている末期腎臓病患者を含む、重度の肝障害または重度の腎障害のある人。(中等度の腎障害のある患者には用量の調整が必要)
・妊娠中及び避妊していない妊娠可能な女性への使用。
・授乳中の人。治療開始から終了後7日間は授乳を中断する必要がある。
・ホルモン併用避妊薬を使用している人。リトナビルの使用は、複合型ホルモン避妊薬の効果を低下させる可能性があるため。
・併用禁忌の薬(結構たくさんある)を服用している人。医師は他の治療薬を服用しているかどうかを必ず確認する。解熱剤アセトアミノフェンは併用可能。

パリ最新情報「コロナ治療薬『パキロビッド』はどんなクスリ?」



コロナ陽性になり、実際パキロビッドを服用した人に尋ねてみると、まず、自宅の検査キットでコロナ陽性反応が出たため薬局で検査、陽性が確定した時点で主治医に連絡し、パキロビッドが処方された。メールで送ってもらった処方箋を印刷し、家族が薬局へ行くと、処方箋の原本があるか尋ねられたが、メールで貰ったと説明するとすぐに購入させてくれたとのこと。※フランスでは「ドクトリブ」という医師の診察予約サイトがあり、ビデオ診察もあるため、処方箋などはすべてサイト内で取得することができる。薬局では保険証をコンピューターに通すため、同じ処方箋で何度も薬を購入することはできない。

副作用については、目立ったものはなかったが、下痢やムカムカなどが少しあったという。服用しなかった状態と比べることはできないが、辛かったのは2日ほどで、陰性に戻るのも早く、比較的軽症で済んだのではないか、と話していた。
しかし、アメリカのバイデン大統領はパキロビッドの服用後、一度は陰性になったものの、再び陽性になったとのニュースがあった。パキロビッドの治療を受ける患者のうち、ごく少数が『リバウンド』で陽性になることがあるそうだ。それは体内(各臓器)に潜伏しているウイルスが何らかのきっかけで再活性化するから、らしい。

日本での入手には、「パキロビッド登録センター」への登録が必要のようだが、処方可能な医療機関はたくさんあるようなので重症化リスクのある人はまず医師に相談し、入手方法を知っておくと良いかもしれない。

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