欧州最新情報

パリ最新情報「フランスで増える大学生の貧困、食糧支援のニーズも拡大」 Posted on 2023/09/29 Design Stories  

 
9月より新年度を迎えたフランスでは、続くインフレのため貧困に陥る大学生たちが増えていると、大きなニュースになった。
事実、パリをはじめとした各地の学生たちは、食糧配給などの外部支援をますます利用するようになっている。
しかしフランスにおける学生たちの貧困は、今に始まったことではなかった。
パンデミックが何十万人もの若者を孤立、不安、貧困に陥れた後、2年連続のインフレが学生の生活環境を著しく悪化させたのである。
 



パリ最新情報「フランスで増える大学生の貧困、食糧支援のニーズも拡大」

 
フランスの自助組織Cop1が行った最近の調査によれば、お金がないために、36%もの学生が満足に食事を取れていないという。
一方でフランスには若者の貧困を救うため、大学生を対象にした食糧支援システムがある。
これはコロナ禍より始まったボランティア活動の一環で、民間団体が地域各所に配布センターを設け、食品や衛生用品を学生たちに無料で配る、というものだ。

当初はコロナ禍が落ち着くまで、と思われていたが、続くインフレにより状況はますます悪化。
食糧を配布する民間団体の一つ、Linkee(リンキー)協会の発表によると、配給に並ぶ学生の77%が、1ヶ月の生活費を100ユーロ(約1万5700円)以下、つまり1日3.27ユーロ(約513円)でまかなっているそうだ。
2023年の新年度に入ってからは、同協会はすでに150万食以上の食事を全国の学生に配給している(2022年全体では100万食だった)。
また別の非営利団体は、「特にパリ地域で学生の食糧難が発生している」と警鐘を鳴らす。
国外からの留学生も多く、物価の高いパリではこうした若者が特に目立っているという。
 



パリ最新情報「フランスで増える大学生の貧困、食糧支援のニーズも拡大」

 
新年度を迎え、支援する側も大忙しだ。
例えばLinkee(リンキー)協会には、今では7000人を超すボランティアのメンバーがいる。
中には同じ学生受給者もボランティア活動をしているそうで(列に並ぶ学生の羞恥心を取り除く効果があるとのこと)、彼らは企業の食堂や学校、病院で余った食品を、内部の強固なネットワークにより引き取っている。

開催日はいつも満席で、およそ600人〜800人の学生たちが列に並ぶ。
※学生は事前登録が必要で、学生証を持参する。
学生たちが受け取れる食品の内容としては、乾燥パスタ、牛乳、卵、米、パン、野菜や果物、菓子類、シャンプーや歯磨き、生理用品など、重さにして7〜8kg相当、1週間分となる。

配布を行うボランティアはみな笑顔で、時間をかけて学生一人ひとりと会話をするそうだ。
会場は和やかな雰囲気だというが、どんどん増える学生を目の当たりにしたボランティアの一人は、「学生の不安定さが爆発しています。ほとんど非常事態です」と仏テレビ番組のインタビューにて答えていた。
 



パリ最新情報「フランスで増える大学生の貧困、食糧支援のニーズも拡大」

 
フランスの全国学生組合(Unef)によると、フランスの大学生の3分の1以上が自活のためにフルタイムでアルバイトをしており、これが試験に落ちるリスクを40%高めているという。
またリンキー協会のジュリアン・メイモン代表は9月、「フランスのどの大学でも、このような行列ができています。憂慮すべきことです」と述べた。
新年度を迎え、こうした状況を仏各紙は一斉に報じたが、一部のメディアは「マクロン政権は、裕福な者だけが勝てる社会で学生生活を一変させようとしている」などと報道した。(大)
 

自分流×帝京大学