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パリ最新情報「2025年の夏から泳げるセーヌ川に!水質改善の効果が見られたパリ」 Posted on 2022/09/29 Design Stories  

 
9月中旬、パリ市は街のシンボルであるセーヌ川に、少なくとも4ヶ所の水浴場を設けると確約した。
2025年夏よりオープン予定で、市内ではエッフェル塔付近やブローニュの森付近、12区のベルシー橋近くなどに水浴場が開設される。
またパリ市外では、グランパリ(パリ拡大計画・郊外7つの地域にまたがる)において、セーヌ川に面する16のコミューンに合計で20の候補地が特定されている。
 

パリ最新情報「2025年の夏から泳げるセーヌ川に!水質改善の効果が見られたパリ」



 
パリ市を含む関係機関は、2016年よりセーヌ川委員会(le Comité Seine)を設立し、セーヌ川の水質改善プロジェクトに意欲的に取り組んできた。
パリ市によれば、このプロジェクトは大変困難ではあるものの、セーヌ川の水質は20年前に比較すると大幅に改善されており、1970年代には2種しか生息していなかった魚の種類が、今では35種にまで増えているとのことだ。
2024年のパリ五輪ではオープンウォータースイミングやトライアスロンの競技がセーヌ川で開催予定だが、これが川の水質改善に向けた起爆剤にもなったという。

パリのセーヌ川では水質の問題から1923年より遊泳が禁止されている。
しかし時は流れ、セーヌ川の水質改善は当時のパリ市長ジャック・シラク氏(後のフランス大統領)によって90年代から進められてきた。
シラク氏は「セーヌ川の水質が改善されていることを示すため、自分はセーヌ川で泳ぐ」と公言していたが、残念ながら任期中の実現は果たせなかった。
 

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その思いを引き継いだのは、現市長のアンヌ・イダルゴ氏である。
2016年以降のプロジェクトではまず、セーヌ川の上流にある排水回収のコンプライアンスが大きな課題となっており、改善工事には総額30億ユーロ近くを投入する必要があった。
具体的には、パリ市、国、イル・ド・フランス(パリを含む首都圏)地方公共衛生局などの自治体関係者が一丸となり、パリ上流の下水処理場(Noisy-le-Grand、Valenton)の排水改修工事を行った。

また同地域では、衛生を担当する自治体と水道局が、個人宅およそ23000戸を割り出し下水管の不良接続を改善した。
これはつまり、「家庭や企業から出る排水が処理されないままセーヌ川に流されることはもうない」ということを示唆している。

なお2024年パリ五輪組織委員会のトニー・エスタンゲ会長は9月22日、「この夏に行われた水質検査では、すでに水泳ができるレベルを記録しており、オリンピック期間中の衛生状態はさらに良くなると確信しています」と仏メディアに対して述べており、2025年のセーヌ川遊泳解禁に向けて大きな自信を見せた。

ただセーヌ川で泳げるのはあくまでも設置された水浴場となり、一般人がそのままドボンと飛び込むのは多大な危険が伴うため辞めていただきたいとパリ市は主張する。
 

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パリ首都圏では今後、セーヌ河岸に現代アート美術館やカフェなどが新設される予定だ。
河岸付近を新しい交流の場とすることで、パリ市およびパリ郊外のセーヌ川周辺に再び活気を与える目的があるという。

パリ市はこのたび、水浴場はオリンピック開催後の素晴らしい遺産となる、とした上で「セーヌ川に泳ぎに行くパリジャンの白黒写真は、もう遠い記憶ではなくなりました」と述べている。
こうして長年パリ市が尽力したセーヌ川の水質改善問題は、2022年になってようやく良い結果が報告された。(大)
 

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