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総力特集・パリ最新情報「新型コロナワクチンに関する全ての疑問にこたえる」 Posted on 2021/01/16 Design Stories  

新型コロナウイルスにはじまり、新型コロナウイルスに終えた2020年。
フランスでは2019年に比べ、死者の数が9%増加していることが判明した。コロナによる影響も当然大きい上での結果であろう。
この新型コロナウイルスの猛威に打ち勝つため、唯一の希望は「ワクチン」しかない。
しかし、この新型コロナワクチンとはどういうものか、私たちは実際まだよくわかっていないことが多い。そのために、不安も大きい。
日本では春頃からワクチン接種がはじまるとされているが、一足先に接種がはじまっているフランスでは、連日、ワクチンの有効性や疑問、ワクチンに関する分析調査の結果などが、報道されている。
※ちなみに、さきほどの最新ニュースで、ファイザー社が欧州へのワクチン出荷に3週間程度の遅れが出る可能性を発表、フランスは騒然となっている。
ただでさえ、足りないと言われているワクチン、このことが欧州各国のワクチン接種計画にどのような影響を与えるのか、注目される。

DS編集部がここ最近、フランスの各紙、各メディアで取り上げられた「ワクチンに関する話題」を集め、医学ジャーナリスト、医大生らの協力も得て、信ぴょう性の高そうなものをデータ化し、ここに分かりやすくまとめてみた。
※これらの情報は日進月歩移り変わる内容を含んでいるので、新しい情報が入り次第、加筆修正させて頂きます。



疑問1、現在、フランスで接種されている二種類のワクチンの効果、違いはあるのか?

・市場に出回っているワクチンは全て有効な結果を出しているが、現在、フランスで接種が始まっているRNAワクチンの場合、フランス国立衛生局によると、臨床的な観点から、ファイザーのワクチンもモデルナのワクチンも効果はほぼ同じである、と発表されている。

疑問2、では、ファイザーとモデルナのワクチンの違いは何?

・ファイザー/BioNTechのワクチンは−80度で最大半年、2度から8度(冷蔵庫)で5日間保管可能なのに対し、モデルナのワクチンは−20度で最大半年、2度から8度(冷蔵庫)で30日間保管できるので、モデルナのワクチンの方が現時点では、保管条件の制限が少ない。



疑問3、季節性インフルエンザのワクチンとコロナワクチンの有効性の違いが知りたい。

・季節性インフルエンザワクチンの有効性は、年によって60~70%くらいだとされている。
・ファイザー/BioNTechのワクチンは43,000人を対象とした第3相試験がされ、2回の投与で95%の有効性を達成。
・モデルナワクチンは30,400人を対象とした第3相試験がされ94%の有効性を達成している。
・アストラゼネカ社が開発したワクチンの有効性は約70%と推定されている。

疑問4、他にはどういう種類のワクチンがあるのか?

・現在、RNAワクチン(ファイザー/BioNTech、モデルナ社)をはじめ、ウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ社)、不活性ワクチン(シノバック研究所とシノファーム研究所の中国ワクチン)、組み替えタンパク質ワクチン(サノフィ社)といった4つの異なる新型コロナワクチンが発表されている。



疑問5、新型コロナワクチンは変異型ウイルスにも効果があるのか?

・まだ正確には確認されていない。
現在までに16種類の変異型ウイルスに対する試験が行なわれていて、今のところ有効性があるとされている。
・しかし、慎重になる必要はあり、例えば英国の変異型ウイルスに対してはワクチンの有効性があるようだが、南アフリカの変異型ウイルスにはいくつかの懸念が出ている模様。
・将来的には必要に応じてワクチンを適応(塩基配列を変える)させなければならなくなるが、その対応に約6週間が必要になると言われている。
・1月15日の最新の情報として、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ社は南アフリカの変異型ウイルスに対する新しいワクチンを作り始めているとのこと。

疑問6、ワクチンの効果はどのくらいの持続するのか? 

・フランス高等保健機構はワクチン効果の持続期間について「今のところ確立されていない」と発表している。
・12月初旬の情報だが、34人を対象に実施された臨床試験研究で、モデルナ社のワクチンはワクチン接種後、少なくとも90日間抗体を持続したと発表されており、感染後に獲得する免疫よりも高いレベルで抗体が持続している。
・持続期間に関しては、今のところ、最低3ヶ月から8ヶ月程度有効であろうと言われている。



疑問7、新型コロナワクチンは2回接種するが、2回目の注射は、1回目の注射で使用したものとは異なるワクチンを使用してもよいの?

・フランスではワクチンのミックス接種は行われない。
・今のところ、イギリスだけが「ミックスワクチン」を可能としているが、とはいえ、ワクチンをミックスさせるのはワクチンが不足している場合や初回投与時に使用したワクチンが患者や医師に知られていない場合など、例外的な理由がある場合のみ行われるようだ。
・英国当局は、ファイザー社のメッセンジャーRNAワクチンとアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンの類似性を指摘することで、ワクチンのミックスを正当化しているけれど、実際には、新型コロナワクチンにおいてこのようなハイブリッドなアプローチについての研究はまだ行われていない。

疑問8、ワクチンの副作用について。

・他のワクチンと同じように副作用はある。
・ファイザー社のワクチンで観察された症状としては、注射した部位に痛みが出る(80%以上)、倦怠感(60%以上)、頭痛(50%以上)、筋肉痛や悪寒(30%以上)など。
モデルナワクチンでは、注射した部位の痛み(92%)、倦怠感(70%)、頭痛(64.7%)、筋肉痛(61.5%)が主な副作用反応として報告されている。
・それらの副作用は一般的に低度〜中度のもので、1~2日で消えるとされている。そして、その副作用が起きる確率は年齢が高いほど低い。



疑問9、 これまでに、ワクチン接種で重篤な合併症などはあった?

・あるようだが、これらの症例は現在、どのメディアも調査中の段階としている。
・米国疾病対策センター(CDC)によると、 12月23日の時点で、アメリカでは約189万回投与のうち4,393件(0.2%)の重篤な副作用が報告されており、アナフィラキシー反応が21件(0.0011%)、そのうち7件は既往歴があったと発表された。

疑問10、フランスでは?

・フランスでは1月14日現在、約24万7千人に投与したうちの30件ほどの副作用が報告されており、そのうち、6件(アレルギー反応が4例、頻脈が2例)の比較的重度な副作用が報告されている。

疑問11、すでにコロナに罹った人もワクチンを接種した方が良いのか?

・パリ10区にあるラリボワジエール病院のブリュノ・メガーバン医師によると、「理論的には、コロナに罹った人は保護されているのでワクチン接種の緊急性はないが、既に感染した場合でも、発症から最低3ヶ月以上をあけ、ワクチン接種を検討してもよい」とのこと。

2月11日の情報では、一度新型コロナに罹った人においては、ワクチン接種は1回で十分である、とのことだった。



疑問12、新型コロナワクチンは妊婦、授乳に問題がないのか?

・ファイザー社とモデルナ社が実施した臨床動物試験では、現時点(2021年1月15日)で、妊娠、胎児発育に対する副作用は認められていない。
・しかしながら、念のため、フランスでは、妊婦はワクチン接種の対象外となっている。
・英国当局は、妊娠中や授乳中の女性は、ワクチン接種を受ける前に医師や薬剤師の助言を求めることを促しており、”予防策として、ワクチンを接種してから少なくとも2ヶ月は妊娠を避けるべき”と推奨している。
・母乳中にワクチンが排泄される可能性に関しては、まだデータがないようで、見つけられなかった。

疑問13、新型コロナのワクチン接種を受けてもアルコールは摂取できるのか?

・ロシアは、最初の注射の前2週間、2回目の注射の後に3週間、合計2ヶ月間禁酒するように政府が指示している。
・ロシアの保健機関のトップは「強い免疫力を身につけたいなら、お酒を飲まない方がいい 」と発言。
・フランスの公衆衛生高等評議会は、B型肝炎ワクチンの不反応の要因の一つとして、「アルコールの過剰摂取」をあげているが、新型コロナワクチンとアルコールの関係については、科学的に検証されていない。

疑問14、日本でも2月頃から、まずファイザー/BioNTech社のワクチンから接種が始まるが、ファイザー/BioNTech社とモデルナ社が開発したRNAワクチンが発表された当初、mRNAがヒトの遺伝子に入り込むという噂が流れ、フランスで多くの人がワクチン接種を敬遠する一因にもなった。メッセンジャーRNA(mRNA)は,ヒトの遺伝子に入り込み、影響を及ぼすのか?

・メッセンジャーRNA(mRNA)は、ヒトの遺伝子には入り込めない、とフランスの科学者たちは口を揃えている。メッセンジャーRNAを使ったワクチンが承認されたのは今回が史上初めてのことだが、もともと、がんや感染症のmRNAワクチンの開発は十分進んでいた。mRNAは近々実用化されるだろうと世界が注目していた医薬である。

(井)(中)(み)(三)

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