JINSEI STORIES

尻尾のある生春巻き Posted on 2025/05/19 辻 仁成 作家 パリ

ノルマンディに戻った。
ぼくの小さなアパルトマンから車で10分くらいの村、オンフルールは、エリック・サティの生家があって、ぼくが大好きなところだ。
交通の便が悪く、電車ではいけないので、日本人観光客の皆さんにはちょっと不便なのだけれど、フランス中から、大勢の人を惹きつける魅力がここにはたくさんある。
一つは港で、もう一つは市場で、もう一つは、サティを生んだこの村の雰囲気かな。
ジムノペディ、大好き!!!
知り合いの編集者さんが休暇で来ているというので、マルシェで待ち合わせ、お茶をすることになった。
「最近、どうなの? 書いているの?」
「うん、ちょうど、100枚くらいの中編を書きあげたところ。でも、1年以上かかった。最近は絵の方が楽しくて、書く時間が足りない」
「そういう時もあるよ。焦らないで生きていこう」
75歳の年長の編集者さん、いつもいいことを言う。
ぼくはせっかちだから、今まで突進して生きてきたけれど、最近は、筆も遅くなった。というか、用心深くなった。ぽんぽんと仕事をしないようにしている。
小説も、100枚しかない短い小説に1年も費やしてしまった。でも、三田文学という文芸誌から依頼された創作なので、ビジネスではない。
時間をかければかけるほど、いい作品が出来る。
ぼくはそういう仕事にシフトしている。
マルシェに行き、コリアンダーとシブレットなどの野菜を買った。

尻尾のある生春巻き

尻尾のある生春巻き

※ 父ちゃんが演奏するエリック・サティ、そしてこれまでの絵画作品も鑑賞できるYouTube



さて、今日は、編集者のZ氏を招いて、軽く家呑みをすることになった。
この人とも、一緒に仕事をしようと約束してから、すでに10年以上の歳月が流れているが、いまだ、二人のコラボ作品は世に出てない、あはは。
そのくらいのマイペースな人間関係の方がいいね。
ということで、美味しい白ワインを貰ったので新鮮なコリアンダーとシブレットをつかって、生春巻きを作ることにした。
よいですかな?
父ちゃんの生春巻きには、尻尾が生えているよ!!!!
えへへ。

尻尾のある生春巻き

はい、材料は写真のような感じで、ただ、生春巻きの皮とビーフンがあれば、基本は、OK。
乾燥ビーフンは、フランス製で、しかも、玄米で出来ている。

尻尾のある生春巻き

コリアンダーにシブレットはマストアイテム。新鮮なのが手に入ったので、美味しいのが出来そうな予感、すでに・・・。

尻尾のある生春巻き

もう一度、主な材料!!!
おさらいしますよ。
サラダともやし、熱湯で戻したビーフン、えび。
えびはマルシェの魚屋で蒸したのを買って、殻をとりました。

尻尾のある生春巻き

生春巻きの皮は水で濡らして、硬く絞った付近の上に乗せておけばすぐに柔らかくなります。
そこにお好きな具材を載せて巻くだけ。めっちゃ、簡単だよね!

尻尾のある生春巻き

えびが綺麗に見えるように、野菜の部分のちょっと上にえびを置いて、くるっと巻いた時に下になるよう・・・。
下に敷いているのは、日本でゲットしたふきんです。よく洗って、使います。

尻尾のある生春巻き

はい、完成。



「生春巻き、美味しいね」
と編集者のZさん。
胡麻ダレのソースにちょっと付けて食べるのである。うまいね。
「うん、野菜サラダだと思ってもらえるといいよ。手で掴んで食べられるサラダ」
「確かに、いくらでも食べられるね」
ということで、二人で、全部完食してしまった。
アペロのおつまみ、と思って作っていたのだけれど、美味しかったんだよね。
満腹でした。
みなさんも、ぜひやってみてね。
ボナペティ!

尻尾のある生春巻き



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
気の早い話ですが、10月中旬から行われるぼくのパリでの個展のフライヤーが出来てきてきました。記念に作った感じですが、あっという間に、欲しいという知人たちに奪われ、残り僅かに・・・。あはは。これから、まず、日本の三越と天満屋の個展があるのにね・・・。楽しみだな~。

尻尾のある生春巻き

尻尾のある生春巻き

尻尾のある生春巻き



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