某月某日、今日、ぼくはついに二度目のワクチン接種を終えた。
これがどういうことを意味しているかというと、ファイザー社ワクチンの二回接種により、ぼくが重症化するリスクほぼなくなるということである。
本当かどうか専門家ではないぼくには調べようもないけど、CDCによると、二回接種したことで94％のコロナウイルスに対しての有効性があがるということで、アメリカではワクチンを二回接種するとマスクをしなくていいらしい。
今日のニュースで、変異株にも有効だと分かった、ということだから、さらに、安心材料が増えた。
疑り深いぼくはマスクをし続けるけど、ともかく、二回接種によって、これまでの不安は相当和らぐことになった。
英国は国民全体の接種が進み、今日、コロナによる死者がゼロという結果を出した。
全世界で接種が進み、コロナを封じ込めることが出来れば、また元の世界に近づくことが出来る。

今日、予約時間である11時より少し前に接種会場（前回と同じであった）に到着すると、びっくり、すでに長打の列が出来ていた。
前回は、数人が並んでいた程度だったのに・・・。
この列に普通に並んでいると予約時間を超えてしまうなぁ、と思っていると、係の人がやってきて、
「二回目の接種の方はこちらです」
と手を挙げたので、その人のあとについていき、一番先に割り込ませてもらうことが出来た。

二回目は医師による問診もなく、そのまま待合室に通された。
フランスは6月1日から18歳以上のすべての人がワクチン接種できるようになったので、争奪戦というのか、空きが出ると一瞬でなくなってしまうような状況になっていて、今日の接種会場にはベビーカーを押してきた人や、若者など前回とはぜんぜん違う若い世代の人たちでごった返していた。
外に並んで、接種して、会場から出るまでに要した時間は30分だった。
問診のある人でも、45分程度で終わる。
トントントン、というもの凄い速度で、ガンガンガン、とワクチンを打っている印象だ。

前回の接種の時は医師が打っていたけれど、今回は看護師さんだった。
「すいません。ぼくは日本の作家なんですけど、記事を書くのに写真、撮影してもいいですか？」
「ええ、どうぞ。日本はどうですか？」
「ちょっと日本は出遅れましたけど、今、急ピッチで始まったところです」
「そうですね。今はワクチンに頼るしかないのが現状だから、早く進むといいですね」
「フランスはどうです？」
「ご覧のとおり、私たちは休みなし。まるでロボットのように朝から晩まで打ちまくってるわよ。はい、ムッシュは左腕になりますよ」
そう言うと看護師さんがぼくの腕の消毒をし、次の瞬間、針を刺した。

「はい、終わり。15分、じっと控室で待って、問題なさそうなら、そのまま退出してください」
一回目より、呆気なかった。
流れ作業的な、オートメーション接種という状態であった。
出口のところに、なぜか、サイン帖のようなものがあり、みんな「メルシー」とか書いていたので、ぼくも「ありがとう」と日本語で書き残しておいた。
「すごい、スムーズでした。ありがとうございます」
「このワクチンセンターのオーガナイズ、ばっちりだった。ブラボー」
「スパシーバ（ロシア語でありがとう）」
などなど・・・。
他に、スペイン語のメッセージなどもあった。
日本人、ロシア人、スペイン人、アメリカ人なども、接種を受けていた。

接種後、ぼくは行きつけのカフェに行き、昼食をたべることにした。
「ワクチン接種してきたんですか？」
ギャルソンのセドリックに言われて、びっくりした。
「何でわかったの？　君、超能力者か？　顔に書いてある？？？」
「だって、ワクチン接種バッジ付けてるから」
笑った。
「あ、忘れてた。受付でくれたから付けたまま、外すの忘れてたよ。かっこわりー」
「いいじゃないですか。それ、こっちも安心できるから、付けていてくださいよ。いいシステムだと思う。接客業のぼくらかすると、ワクチン接種バッジ付けてきてくれる人は大歓迎ですよ」
ぼくらは笑いあった。
「ムッシュ、体調は？」
「問題ない。ぜんぜん、副反応とかなし」
「よかったですね。じゃあ、今日は何にします？　栄養付けないと」
「今日の日替わり定食は？」
「フランボワーズソースで食べる小鴨ローストです」
「いいね。で、付け合わせは？」
「小さなジャガイモのソテーですよ」
「いいなー。じゃあ、白ワインね」
「今日はやめときましょう。お医者さんがいいと言っても、ぼくがムッシュの健康を管理します。ペリエをシャンパンだと思って飲んでください」
ぼくらは笑いあった。
「そうするよ」

ということで、これを書いている今、ぼくの体調は絶好調。一回目の接種の時はちょっとだるさが出たし、腕も痛かったけど、今回はなし。
今夜はおとなしく休んで、明日に備えることにしよう。