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滞仏日記「襲いかかる感染拡大の新しい波。欧州はこの冬の波から抜け出せるのか」 Posted on 2021/11/19 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、フランスの一日の感染者数が再び2万人を超えた。
つい、ちょっと前まで数千人程度で推移していたので、新型コロナをある程度抑え込むことに成功したのかな、ワクチンの成果が出たのかな、と安心していた矢先に、ドイツが5万人を超え、英国も10月後半に5万人を一時超えた。(今は3万8千人)
この両国だけではなく、欧州全体で、オランダやベルギー、オーストリアなど各国で軒並み感染者数が大幅に拡大して、不意にまたしても、悪夢に怯えている。
明らかに欧州はこの冬、感染再拡大の波に飲み込まれることになりそうだ。それもかなり大きな波に・・・。
ぼくは今日、パリ中心部でいくつかの打ち合わせをやったのだけど、やはり、なんとなく、人込みは避けたい気分だった。寒くなったことで、人々は閉め切ったカフェや屋内に潜り込んだ。
夏にはあったテラス席は、もう撤去されてしまった。
再び、カウンター周辺に人々が集まり、大きな声で、唾を飛ばしあって飲んでいる。
これは危険な気配である。
感染が増える要因は増している。



それでも、フランスのワクチン接種率は87、6%に達しているので、感染拡大はしているものの、政府がコロナをある程度抑え込んでいるのは事実だと思う。
ドイツはアンチ・ワクチン派の人が多いので、接種率は68%どまりだ。
ドイツで急激に感染者が増えたのと、この接種率との関連はやはり、無視することはできないかもしれない。
感染者数が2万人を超えたフランス政府は、今現在、クリスマスに向けて部分的ロックダウンなどをする予定はない、としている。
フランスでは12月1日から50歳以上(64歳まで)の人の三回目のワクチン接種が許可される。
冬が深くなる前に、ブースター接種で対抗する構えである。
ぼくは1日に、予約をいれ、さっさと三回目を接種する予定だけど、友人のブノワは、もう打たない、と断言している。
「今までは、衛生パスを手に入れるために仕方なく打ったが、もう、打たない」と態度を変えた。
アンチではないけど、ブノワのような考えを持った人が増えているのも事実で、政府関係者らは頭の痛いところ・・・。
積極的にブースター接種をする人がどこまで増えるのかは、微妙かもしれない。

滞仏日記「襲いかかる感染拡大の新しい波。欧州はこの冬の波から抜け出せるのか」



そういえば、不思議な現象も起きている。
接種率が高いのに、感染者数も高いという国があちこちで出ている点だ。
違いはなんだろう? 
国によってワクチンが違うので、もしかすると、ワクチンの差も関係があるのだろうか? 韓国や英国の接種率は高いが、感染者率も高い。
日本はなぜ、コロナをここまで制御できたのか、ワクチンとの関連性など、専門家のしっかりとした意見を待ちたい。
実は、土曜日(20日)、新世代賞の選考会がある。
ぼくは日本での選考会を、9月の時点で、やめにした。
というのは、冬に、欧州人の日常性からかんがみるに、再拡大が起こると確信していたからだ。
その時点で、オンラインでの選考会へと切り替えて準備をすすめてきたのだ。
それはどうやら、正解だったようだ。
(明日、20日、YouTubeで生配信をします。詳しくはツイートしますね)

つづく。



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