JINSEI STORIES

滞仏日記「息子になりすまして、食堂に忍び込もうとする三四郎。待て!」 Posted on 2022/02/10 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、NHK・BSPの「ボンジュール、辻仁成の冬ごはん」(放送は23日の21時51分から)がクランクアップしたので、フランス側の撮影チームが集まり、呑もっちゃんの「国虎」でうどんをすするコロナ禍絶滅祈願打ち上げをやった。
感染が半減したとはいえ、まだ一日20万人の感染者、夜の宴会は避け、ごんぶとの四国うどんで真昼間、太く長い番組の成功を祈願して、食べまくった。
基本は自撮りだけど、遠征先とか、実景とか、子犬を迎えに行く場面などはカメラマンが撮影している。そりゃあ、そうだよね~。笑。
もちろん、準主役の三四郎も連れていった。
「うわあ、かわいい」
と店員さんらが、歓声をあげた。
「三四郎、かわいい」
とすでに、その存在が知れ渡っていた~。
とうの三四郎、「えへへ、それほどでも~」としんのすけポーズ?
周囲のフランス人からも、熱視線を集める、うちの子。
父ちゃん、自分のことのように喜んだ。
四国のうどんを食べながら、(ぼくはカツカレーにした)、撮影の労をねぎらう父ちゃんであった。
放送が待ち遠しい。どんな番組になっているのだろう?

滞仏日記「息子になりすまして、食堂に忍び込もうとする三四郎。待て!」



ところが、打ち上げをしている最中に、秋にやろうとしていたパリの劇場ライブの日程が、別のアーティストにとられてしまう、というハプニングが飛びこみ、まじか~、と大騒ぎになった。
昨日は、出来ると確信していたので、有頂天になっていたのに、9月25日に予定していたライブがその日は出来なくなった、という結末? (まだ、希望があります)
日曜日だったので、その日は、複数のアーティストが奪い合う状態が続いていたのだけど、プロモーターのベルトランは「おさえる自信がある」と断言していたので、やる気だった父ちゃんだが、ここは、ちょっと仕切り直し。
長引くコロナ禍で二年にも渡ってライブが出来なかったフランスのアーティストたちが、ここにきて、活動を活発化させてきたのだ。オミクロンは去るのだろうか・・・。
プロモーターも優秀な人物だけど、別の日を探さないとならない。
人生、山あり谷あり。
でも、「ぼく、諦めるの得意じゃない」が信条なので、ここは一旦、落ち着くことにして、勝つカレーを食べ、未来を見つめ直す父ちゃんであった。

滞仏日記「息子になりすまして、食堂に忍び込もうとする三四郎。待て!」



打ち上げ後、ぼくは三四郎とオペラ地区を散歩した。
オペラ大通りを歩き、三四郎と一緒に人々を眺めた。子犬は行きかう人々を眺めて、何を思っているのであろう。
あの山奥のブリーダーさんの犬の園から出てきて二週間、いまだ都会の雑音には慣れてはいないが、それでも、慣れるしかないのだ。
オートバイが通過するたび、四つの足を踏ん張って、動かなくなり、その都度、ぼくがしゃがみこんで、大丈夫だよ、サンシー、ぼくがいるよ、と宥めている。
ちっちゃな黒い生き物で、こいつ、生きてるんだな、とその奮闘ぶりを見下ろしながら、なんとなく、じーんとする父ちゃんであった。

滞仏日記「息子になりすまして、食堂に忍び込もうとする三四郎。待て!」



滞仏日記「息子になりすまして、食堂に忍び込もうとする三四郎。待て!」

家に帰ると、全自動掃除機の五郎ちゃんが絶賛、掃除中なのであった。
いつも、午後2時にタイマーをかけており、勝手に掃除を開始する仕組み。
だから、家を出る前に全部の家のドアを開けとかなければならない。
五郎ちゃん、今、学習中で、3つの部屋の地図が出来た。残り、3つだ。
どこにどういう家具が置いてあるのか、全部、記載済み。それを父ちゃんは携帯でチェックできる~。(すごーい時代だぁ)
ちょうど、帰った時に、三四郎の部屋の掃除中で、久々のご対面となった。
初回は、田舎から出てきたばかりのサンシー、ロボット掃除機が怖くて逃げ回ったが、この子犬も学習能力が高い!
そして、さすが狩猟犬である。
迫ってくる五郎のスペシウム光線を交わしながら、余裕で対峙していた。
もはや眼中にはない。ふーん、という感じなのであーる。
五郎ちゃん、ご苦労さまです。おかげで、部屋がきれいになりました。

滞仏日記「息子になりすまして、食堂に忍び込もうとする三四郎。待て!」



夕方、文章教室の提出作品を読んで、(全部、読みましたよー)その中から、いくつかのエッセイを選び、授業の方向性を考えている、父ちゃん・・・。
気が付くと、夜になっていたので、(結構、時間かかった)、息子のためにごはんを作って、
「じゅーとー、ごはんだよー」
と呼んだら、
三四郎が、すまし顔で、ぼくの方へとやってきて、ドアの隙間から食堂に普通に入ろうとしたので、ぼくも普通に右足をすっと差しだし、
「君は三四郎だよね」
と言ったら、えへへ、という顔をして自分のベッドに戻っていった。

滞仏日記「息子になりすまして、食堂に忍び込もうとする三四郎。待て!」

息子がご飯を食べている間、父ちゃんは、三四郎にも食べさせたのであーる。
大きな息子と赤ちゃんの息子、子育ては終わらないねぇ。
寝る前に、三四郎と近所を一時間走り、子犬をくたくたにさせてから、眠るという毎日。
ぼくのアルコール量はグンと減って、おかげさまで、お腹も凹んできたのである。
人生、いろいろとあって、毎日、凹んだりもっこしなったり大変だけれど、生きてる限り、人生は続くのであーる。
だから、今日も、

つづく。

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