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滞仏日記「ミニチュアダックスフンドの会に突如参加が決まった三四郎!」 Posted on 2022/04/11 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、三四郎の風邪が治らず、(一度は抗生物質がきいて咳が止まったのだけれど)ここ最近、タラーっと鼻水と「ふんふん」という鼻孔のつまりのようなくしゃみ?がひどくなり、急だけど、お医者さんの予約をとった。
今日は日曜日だったので、特徴などをネットに入れて調べたら「ケンネルコフ」と出た。
素人がネット検索で病名診断するのは危険だが、それは三四郎が最初に獣医さんに診断をされた病名と一緒だったので、まだ完治していない可能性があるな、と思った。(あるいはジュリアのところで他の犬から新たにうつされた可能性もある)
それでも三四郎は元気なので、パリは物凄くいい陽気だったし、様子を見つつ、軽く近所を一周することにした。(あはは、大丈夫です)
いつものエッフェル塔の芝生の上で日向ぼっこをしていると、どこからともなく、スーパーミニチュアダックスフンドがやって来た。三四郎よりも二回りは小さい!!
「こんにちは、わー、可愛いですね」
「こんにちは。この子は三四郎。6か月です」
「うちの子は、ビリーよ、1歳なの。あなたこの辺に住んでいるの?」
「ええ。すぐ、そこに」
「じゃあ、私たちのグループに参加しませんか?」
いきなり、マダムがそんなことを言い出したのである。
ナンパか!!!!
父ちゃんにも春が来た!!!!
と、色めき立ったのも、束の間、マダムは携帯を取り出し、ぼくに写真を突き出した。おおおお!
な、なんと、5,6匹のミニチュアダックスフンドがベンチの上にずらりと並んでいる超かわいい写真なのである。
青とか緑とか黄色のスカーフを首に巻いているじゃあ、あーりませんか。
「なんですか、これ?」

滞仏日記「ミニチュアダックスフンドの会に突如参加が決まった三四郎!」



「テッケル・パーティよ!」
テッケルというのがダックスフンドのことで、ま、ダックスの会、ということになる。
「知り合いのアメリカ人がミニチュアダックスフンドを飼っていて、ある日、その輪が広がって、というのもこの辺にはダックスがいっぱいいるからサークルにしましょうということになり、みんなで手分けして、見かけたら声をかけているの」
「素晴らしい。三四郎も参加できるんですね?」
「ええ、もちろんよ。アメリカ人が多いけど、あなた、日本人でしょ?」
「はい。三四郎とその父、HITOです」
「HITO、ぜひ、参加してください。毎週、エッフェル塔の周辺で集まって、じゃれあっているのよ」
彼女の名前はフランシーヌ。横に、ニコラくらいの男の子がいた。
ということで風邪ひきの三四郎ではったが、急遽、ミニチュアダックスの会に入会することになってしまったのであーる。ぱちぱち。
実はダックスと言っても(ぼくは飼うまで知らなかったのだけど)様々な種類に分かれている。三四郎は毛の長いミニチュアダックスで、短い子もいれば、ビリーのようにちりちり巻き毛の子もいる。
フランスには毛の長い子が少ないので、三四郎はちょっと目立つ存在なのだ。
様々な人種の人間がいるように、ミニチュアダックスフンドにもいろいろな子たちがいる、それぞれ、趣があって、可愛いのであーる。

滞仏日記「ミニチュアダックスフンドの会に突如参加が決まった三四郎!」



「そうよね~」
とフランシーヌは言った。
「まず、頑固でしょ? そして、めっちゃ寂しがり屋でしょ? 自分でこうだと思ったら気が済むまでそれをやるし、出来ないと訴えるし、凄いですよね」
「全く、一緒です。三四郎も頑固で、寂しがり屋ですよ」
「そういうのがずらりと集まって、それはそれはすごい世界なんですよ、テッケル・パーティ!!!」
「わお!!!」
ぼくらはお互いの犬の個性について長話をし、次回、テッケル・パーティの集合場所とか時間を交換してから、別れた。
いきなり現れたフランシーヌ、はじめて会ったのに、昔からのママ友みたいな感じで、仲良くなった父ちゃんなのであった。
(あはは・・・。ダックス会のレポート、お楽しみに!)
そして、今日は、ほんとうにダックスフンド君とたくさんそれ違ったのである。
朝の散歩だけで4匹のダックスとすれ違った三四郎。
御覧のように、カフェでお茶をしていたら、てけてけ・テッケルと歩いて来る。
「パパしゃん、また、ダックスがやって来たよ」
と三四郎がぼくの方を振り返った。
本当だ、こりゃ、テッケル・パーティが流行るはずだなァ、と父ちゃんは三四郎との会話を楽しんだ孤独な日曜日であったとさ・・・。

滞仏日記「ミニチュアダックスフンドの会に突如参加が決まった三四郎!」



何処からかやって来た三四郎ではあったが、人間の赤ちゃん並みに手がかかる。
パリと田舎の獣医さんにお世話になり、来週はいよいよ2本の歯を抜く手術も決まった。
全身麻酔の大手術になるようだ。
息子もその二日後に大学受験(合格率7%)だが、勉強もせず、音楽ばかりやっているので、目標の大学には絶対入ることは不可能だと親的には確信している。やれやれ。
今日、フランスは大統領選挙であった。
ぼくには選挙権がないので、傍観するしかないのだけれど、現職のマクロン大統領と極右政党のマリー・ルペンさんが上位2位を占め24日の決戦投票に進むことになった、・・・さて、どうなることか。
明日の今頃にはいろいろとフランスの未来が判明しているところであろうが、ぼくはその頃、三四郎を連れて動物病院にいるはずだ。
どこを見つめて生きて行けばいいのかちょっとわからない日常が続いているのだけど、人類にとって、ここは踏ん張り時なのかもしれない。
まずは、三四郎を休ませ、十斗には栄養ある食事を与え、父ちゃんは日記を配信して、日曜日を締めくくるのであった。

つづく。

滞仏日記「ミニチュアダックスフンドの会に突如参加が決まった三四郎!」



ということで、今日も日記を読んでくださって、ありがとう。

そして、お知らせでーす。
父ちゃんのライブ、8月8日がどうやら、関西のどこか、らしいという情報。8月12日が関東のどこか・・・。まだ、流動的で、どうなるかわからないのですが、日程のチェック、お願いいたします・・・。

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