JINSEI STORIES

退屈日記「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん、喧々諤々、撮影終了!」 Posted on 2022/05/02 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、一年ちょっと前に、不意に舞い込んだ、NHKBSの自撮り番組、「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん」、とりあえず、なんだか、大変そうな番組だな、と思って引き受けたのだけど、フランスの三度目のロックダウンの最中だったこともあり、想像通りやはりかなり大変な撮影となった。
とくに制作会社の社長Lさんとは真っ向からぶつかり(笑、今はそんなことありませんよ)、セーヌ川ライブで「バラ色の人生」を歌いたい、と訴えたにもかかわらず、「そこは特に興味がありません」と冷たくあしらわれ、でも、実際の映像を見たら、「使わしてください。バラ色の人生にやられました」となって、本当に、よくわからないまま、番組が出来て放映され、それがなんだか、これもよくわからないのだけどLさんの周辺では受けたようで、NHKさんから「秋編も作ってほしい」と再び依頼が舞い込み、えええ、マジか、と思いながら目立ちたがり屋の父ちゃんは優柔不断にもそれを引き受け、そういう喧々諤々が冬版まで続いてしまったのが、去年のおさらいとなる。
しかし、さすがにもう終わりだろうと思っていたら、電話がかかって来て、今年もお願いします、とLさんに言われたのだけど、皆さん、ご存じのように今回は様々な事情で(しかし、これはLさんのせいじゃない)、ぼくは疲れ切り、深く傷つき、やめることになった。
しかし、なんでか、そこでぼくの母さんまでが登場してきて、見たい見たい、と言い出し、4度目になる一年越しの「春ごはん」の撮影が再開することに・・・。
こういう流れの中、自分の性格にあきれながら、3月、4月の二か月間を費やし、無事に撮り終わることが出来たのである。
ここまで、問題山積ながら、続くというのは、実に不思議なことではないか。
Lさんから、「心底疲れた」と、先日、ラインで小言を言われたのだけど、まァ、お互い様なので、仕方がない。
うわべだけの笑顔でのお付き合いはぼくには出来ないので、言いたいことは言わせてもらわないと、・・・じゃないと、自撮り撮影番組なので、こちらも心底疲れるのである。

退屈日記「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん、喧々諤々、撮影終了!」

退屈日記「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん、喧々諤々、撮影終了!」



そういえば、一度は中断した今回の、2022年度版の「春ごはん」再開に至る背後に、母さんからの「もう一度見たい」という強いプッシュがあったことは事実だが、もう一人、パリに転勤してきたばかりのニュースウオッチ9のキャスター、有馬嘉男さんが、ぼくのライブの後、「辻さん、あれは辻さんにしかできないから、続けて」と説得されたことは大きかった。
というのは、ぼくはLさんとだけしか話してこなかったので、タイタンさんも日本だし、NHKさんは渋谷だし、一万キロの距離があるので、どういう風にこの番組が視聴者の皆さんに届いているのか、ちっとも分からなかったのである。
有馬さんとはわんちゃんつながりの仲間になったこともあり、彼の発言はぼくの狭い視野を広げてくれる効果があった。
ともかく、自分でもよくわからない中で、どうやったらフランスで生きるシングルおやじの気持ちを日本に届けることが出来るだろう、といろいろと試したのが、今回の撮影であった。
ラストシーン用に、窓際でZOOを歌い終わった時、でも、ちょっと手ごたえがあった。やっぱり、音楽だな、と思った。
今回は、最後の最後まで、柱を見つけることが出来ずに撮影してきたのだけど、(毎回、一応、柱を見つけてそこに寄り添って撮影してきた)、ようは、ZOOの歌詞「愛をください」に尽きるのだ、と途中で気が付いたのである。
「愛をください」は、息子に向けられた言葉であり、三四郎に向けられた言葉であり、コロナ禍、或いは戦争で苦しんでいる人やそれを見守る世界中の人々に届けたいメッセージでもあり、要は、今、世界に必要なのは「愛をください、愛をあげたい」なのだ、と思ったのであった。

退屈日記「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん、喧々諤々、撮影終了!」

退屈日記「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん、喧々諤々、撮影終了!」

退屈日記「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん、喧々諤々、撮影終了!」



今回の番組も、Lさんとディレクターの義和さんがタッグを組んでNHKの方々と話し合い、きっとぼくの意図を組んだ番組を仕上げてくださることだろう。
ぼくは編集に一切かかわっていないが、彼らはぼくの日記で骨子を組み、ぼくが撮影した自撮り映像で輪郭を描いていく。それをナレーターの本上まなみさんが、絶妙の語りで、枝葉をつけてくださり、木々が茂るという仕組みである。
こういう番組はかなり珍しいのじゃないか、と思う。
ぼくが毎回、Lさんとぶつかるのは、とってもいいことなのだ。面倒くさいけれど、だからこそリアルなのだ。
この番組には台本がない。現場に制作の人間は一人もいない。
ぼくが自由に撮っていったものを、自由に書いたこの日記をもとに、一度も会ったことがない二枚目の義和がまとめていく。
毎回、もうだめだ、これで最後にしようと思って撮影が終わるのだけど、見てくださった方々から、たくさんの感想が届くので、みんな、やめられない、ということかもしれない。でも、ともかく、今回も、喧々諤々の中、2022年度版の「春ごはん」撮影が無事に終わったという次第である。
明日、5月3日、10時半から、去年の第一回放送分の「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん」 が再放送される、らしい、笑。
<BSプレミアムのみ>2022/5/3 (火・祝) 10:30~11:29
ぼくは見ることが出来ないけれど、そこにこの番組の原石があるので、ぜひ、眺めてもらいたい。
ある時、ZOOM会議の最中、Lさんに言われた。
「辻さんは、そんなに大変な性格だから、ご自分と向き合うのも本当に大変でしょうね」
うちのスタッフのいる前で、こういうことを言う人だけど、ぼくは嫌いじゃない。
嘘がないし、ぼくはまさに、その通り、面倒くさい人間だって、すごく自覚しています。
でも、ボロボロになってこそ、信じられるものが出来るのだと思う。きっと、いい番組になるような気がする。はい、私からは以上となります。

つづく。

退屈日記「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん、喧々諤々、撮影終了!」



退屈日記「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん、喧々諤々、撮影終了!」

今日も、読んでくださり、ありがとうございまする。
義和的には大丈夫でしょうか? 笑。

ということでお知らせです。

大和書房刊「父ちゃんの料理教室」は6刷が決定、今、帯を新しくしています。笑。
マガジンハウス刊、「パリ、息子とぼくの3000日」は6月30日に満を持して発売予定です。

さらに
辻󠄀仁成 アコースティック セレナーデ フロム パリ
Jinsei Tsuji Acoustic Serenade From Paris
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【ビルボードライブ大阪】(1日2回公演)
8/8(月)1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
[お問い合わせ] ビルボードライブ大阪: 06-6342-7722
〒530-0001大阪市北区梅田2丁目2番22号 ハービスPLAZA ENT B2
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【ビルボードライブ横浜】(1日2回公演)
8/12(金)1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
[お問い合わせ] ビルボードライブ横浜: 0570-05-6565
〒231-0003 神奈川県横浜市中区北仲通5 丁目57 番地2 KITANAKA BRICK&WHITE 1F
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発売日
Club BBL会員、法人会員先行=6/6(月)12:00正午より
一般予約受付開始=6/13(月)12:00正午より

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