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滞仏日記「大風邪のせいで家から出られず、アトリエで、咳込みながら絵を描く父ちゃん」 Posted on 2024/05/01 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、風邪はずいぶんと楽になったが、喉に痛みがちょっと残った。
これさえ、終われば、熱も下がってきたので、外出できそうだ。
弟子の長谷っちが、サーモンの塩漬けを届けてくれたので、(携帯に電話があり、ドアノブに鮭をぶら下げております、と言われた、覗くとビニール袋が・・・)、それを焼いて、食べた。
かたじけない。
栄養をつけないとならないので、ニラ玉も作った。
にんじんの葉っぱで作ったふりかけもまだあったので、白飯に載せた。
薬を大量に飲んでいるので、何か食べないと胃がやられてしまうのであーる・ある大辞典。
異国で一人だと心細いが、同じような境遇の仲間がいるので、心強いのである。(長谷っちの新作、ちょっと探偵小説風で、面白かったです)
ごはんがおいしいので、これは回復傾向にあるのかも・・・。
よし。

滞仏日記「大風邪のせいで家から出られず、アトリエで、咳込みながら絵を描く父ちゃん」



まだ、外出はできないので、アトリエにこもり、描きかけの絵に、筆を入れた。
小説と絵って、まったく違うように思われるかもしれないが、似ているところもある。
絵も小説も細部が凄く大事で、全体を認識しながら、細部に筆を入れていく作業は実に似ているなァ、と思う。
しかし、同時に、小説の場合は、各パラグラフを入れ子にすることも可能だし、加筆するのも、文章を入れ替えるのも、一度描き上げてからでも、パソコンだから、簡単に編集できるのだけれど、絵はそれができない。
完全にできないわけじゃないが、塗りつぶして描きなおすことになる。
ぼくの絵は、油絵具を落とす前に、白いカンバスに詩というか、文字を書いてから、イマージュを広げるスタイルなのだ。
その言葉・文字が、ものすごく大きなインスピレーションを与えてくれる。
絵なのだけれど、物語があって、伊勢丹アートギャラリーの作品は緩やかに巨大な物語の一部をなしていたりする。
ただ、言葉ではなく、絵なのだ、ということ。
その一枚に、物語が存在するようなものが、個人的には好きだから、最初の一言がとっても大事なのだ。
ぼくは詩人にあこがれていた。
詩が長大になって小説となり、詩に色がついて絵画になった。

滞仏日記「大風邪のせいで家から出られず、アトリエで、咳込みながら絵を描く父ちゃん」



咳がとまらない。
喉が痛い。
でも、咳をしながらでも、絵が楽しくなると、どんどん、絵の世界が広がっていく。
ぼくの右脳が世界をひろげていくのが、わかる。
ぼくは抽象画という概念があまり好きじゃない。「辻さんの絵って、抽象画ですか?」と聞かれることがあるので、「ぼくは印象派です」と答えている。あはは。
世界から得た感動が、筆先で結晶を生んで、一枚の作品を築き上げるのだから、こんなに楽しい創作はない。
咳がとまらなくなっても、絵を描いている時が一番好きだ。
大学時代、ぼくは鬼の絵をたくさん描いていた。実家にあるが、母さんが「これは誰にもやらない、わたしのものだ」と離さないので、あげることにした。
最近は、仏さまをたくさん、描いている。
とくに仏像画の中心に置く言葉はとっても大切なものを選んでいる。
企業秘密なので教えられないが、薄い鉛筆とか消えかかった絵の具で、ぜったい透けないようにこっそり記している。
魂がそこに宿るように。
この夏、青山の新生堂に、120×300センチほどの巨大な涅槃仏の絵が展示されるのだけれど、この絵には魂を込めた。(芸術新潮にも載るみたいだ。いいね)
絵に魂を込めるって、どういうことなんだろう?
そういうことをわからずにやっている直観が、自分でも面白いな、と思う。
咳がとまらないので、ここまでにする。

滞仏日記「大風邪のせいで家から出られず、アトリエで、咳込みながら絵を描く父ちゃん」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
三四郎は、ほんとうに、じっとぼくを見ています。やっぱ、犬って、何か動物にしかない感覚があるのかな。親が体調悪いのわかるのかもしれないですね。犬に風邪がうつるかどうかわからないので、あまり、べたべたしないようにしているから、距離感を感じるだけかもしれませんが、明日は、ちょっと遠くまで散歩に出てみようかな、と思います。
さて、風邪ひき大魔王からお知らせです。
ラジオが、値下げの新プランで、笑、身近になりましたよ。
コンサートツアーは最後になりますが、ラジオで会いましょう。

ツジビル村営放送、ラジオ・ツジビルに関しては、こちらから・・・。
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TSUJI VILLE

滞仏日記「大風邪のせいで家から出られず、アトリエで、咳込みながら絵を描く父ちゃん」



滞仏日記「大風邪のせいで家から出られず、アトリエで、咳込みながら絵を描く父ちゃん」

5月26日に、エッセイ教室をやります。正式募集は、5月1日ですが、課題は「お弁当」エッセイです。エッセイ好きなみなさん、今から課題取り組んでくださいね。
詳しくは、とりあえず、こちらをご覧ください。
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https://www.designstoriesinc.com/wp-admin/post.php?post=52012&action=edit

それから、それから、
フランスツアーが6月に行われます。
パリは、ベルビルにある老舗の劇場「Le Zebre」にて行われます。チケットが発売になりました。在仏、在欧の皆さん、お時間があれば、ぜひに。
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●6月30日、パリ、Le Zebre チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-paris-concert-le-zebre-30-juin-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301135.html

そして、7月3日、リヨン、La Marquise
なぜか、パリの会場よりも、売れています。売り切れる前に、お早目に!笑。
チケットはこちらから、どうぞ!
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https://billetterie.seetickets.fr/tsuji-in-lyon-concert-la-marquise-peniche-03-juillet-2024-css5-envolproduction-pg101-ri10301835.html

●7月20日から7月28日まで青山・新生堂画廊にて、個展!
●9月後半、コルシカ、アジャクシオ、ライブ。(ライブは、だいたい、9月25,26日のどちらかになります。作家としての登壇も予定しています)

自分流×帝京大学