某月某日、三四郎の部屋の監視カメラにオーブが数多く飛んでいるのを見つけたあの夜から、ぼくは毎晩、寝る前に、監視カメラの映像を確認しないと眠れなくなった。
それでいくつか分かって来たことがある。
オーブは明らかに存在するということ。
埃や虫とは飛翔の仕方が根本的に異なるということ。
オーブは明らかな輪郭を持っているのと玉ゆらの動きをするということ。
そして、もちろん、肉眼では見えないということだ。
三四郎のふけとか、体毛についた埃であるならば、と考え、部屋の徹底的な拭き掃除をし、三四郎を隣の仕事部屋で寝かせてみたことがあった。
しかし、やはり、オーブは相変わらず飛んでいた。
水蒸気という説もあるので、室内の壁の湿度を湿度計などで測ってみたこともある。しかし、どの壁も湿度はなかった。
窓のない完全な密室だが、目を凝らしているとオーブが出現する。
だいたい、画面中央から不意に出現し、こちらに向かって消える。
他に、地面を這うような動きをするオーブも多い。
ところがここ数日、オーブの動きがおかしい。

最初にオーブを確認した時に比べると、ここ最近はオーブの数は減り、しかも、玉ゆらではあるけれど、移動の速度が速いのだ。
前は、ゆったりと飛翔していたので、スクショで撮影出来たが、今は一瞬で消えるものが多く、のんびりと移動してくれない。
密閉された部屋で、窓がないので、室内の空気の対流というのも考えにくいし、天候はこの二週間ずっと快晴と安定している。雨は降ってないので、湿度ではない。
空気の対流がないのに、出現するオーブは物凄い速度で玉ゆら移動する。
それはまるで「おたまじゃくし」のようでもある。
残像が尻尾のように見えるオーブもいる。
虫とか埃の舞い方とは明らかに動きが異なっているので、オーブだとわかる。
しかし、動きが急に早くなったので、スクショをしても撮影が出来ないし、待機しているぼくの指は何度も攣りそうになった。笑。
「くそ、ゆっくりと飛んでくれよ」
ぼくは独りごちた。真夜中に。
しかも、総数が以前より、圧倒的に少ないのである。
でも、しかし、だ。出現するので、いるのは間違いがない。
この正体については様々な仮説が成り立つのだけれど、ぼくは彼らは目に見えない霊体であろうと決めつけることにした。すると、途端に、愛おしくなった。
宮崎アニメで出てくる「真っ黒くろすけ」（ごめんなさい、書き方がわかりません）みたいな感じであろうか。

うちの「真っ白しろすけ」たちを監視カメラに確認する瞬間、ぼくはほっと落ち着いている自分に気が付くようになった。
はじめてそれを目撃した時は、三四郎に群がる犬霊のようなものか、と思ったが、そうかもしれないが、そこに出現する彼らはぼくらに危害を加えるわけではないし、平和に過ごしてくれているので、無害なのである。
昔、幼いぼくには、大気中でキラキラと輝く精霊が見えていた。
勝手に精霊と決めつけただけで、本当は太陽光の屈折など、別の自然現象である可能性はあるのだけど、ちりちりと無数に舞う光のフラッシュは、少なくとも常に僕の周囲にいてくれたし、逆に、大人になってからは見えなくなった。
しかし、今、監視カメラを通してぼくに見えているこの「真っ白しろすけ」はもしかしたら、三四郎の目には見えているのかもしれないし、三四郎を守る霊体なのかもしれない、と思うと、共存は喜ばしいことにも思えてくる。
この築120年の建物は、過去の第六感日記で書いてきた通り、様々な霊的な現象があった。手の届かないところにある日巨大な手形がついてたり、誰もいないはずの上の階で足音が続いたり、子供の話し声が聞こえたり、ニコラが泊まった夜には紫色の幽霊が足元から彼の身体によじ登ったり、と…。
そういう奇々怪々な現象を経験してきたぼくからすると、オーブが飛んでいることは不思議なことではないのだ。むしろ、かわいい。
ただ、もう少し、その実態を見極めたいと思ってはいる。
科学的な検証はできないけれど、オーブがこんなにいるのだから、もっと知ってみたいと思うのだった。そっと、見守るように・・・。

つづく。

※　遅い時間になると速度が増し、撮影困難になる。右端、椅子の辺りに消えかかっているものは、最初中心に大きく出現し、慌ててスクショするのだけど、間に合わないのである。動画を撮りたいけれど、この監視カメラの動画機能は月額で高額なので、ためらっている。笑。

今日も、読んでくださり、ありがとうございます。
オーブが他の部屋にいるのか、も検証してみたいですね。

ということで、お知らせです。
NHKの今年度「春ごはん」の撮影はすべて、終了いたしました。
で、去年放送をした、「春ごはん」が明日3日、再放送されます。
「ボンジュール！辻仁成の春のパリごはん」 が再放送！！！
＜BSプレミアムのみ＞2022/5/3 (火・祝) 10:30～11:29
＜BS４Kのみ＞2022/5/29(日) 16:30～17:29
お時間があれば・・・。

それから、大和書房刊「父ちゃんの料理教室」は６刷が決定、今、帯を新しくしています。笑。
マガジンハウス刊、「パリ、息子とぼくの3000日」は6月30日に満を持して発売予定です。

さらに
辻󠄀仁成 アコースティック セレナーデ フロム パリ
Jinsei Tsuji Acoustic Serenade From Paris
________________________________________
【ビルボードライブ大阪】（1日2回公演）
8/8（月）1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
[お問い合わせ] ビルボードライブ大阪： 06-6342-7722
〒530-0001大阪市北区梅田2丁目2番22号 ハービスPLAZA ENT B2
________________________________________
【ビルボードライブ横浜】（1日2回公演）
8/12（金）1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
[お問い合わせ] ビルボードライブ横浜： 0570-05-6565
〒231-0003 神奈川県横浜市中区北仲通5 丁目57 番地2 KITANAKA BRICK＆WHITE 1F
________________________________________
発売日
Club BBL会員、法人会員先行＝6/6（月）12:00正午より
一般予約受付開始＝6/13（月）12:00正午より