JINSEI STORIES

滞日日記「息子のバイト先のオーナーと長電話。息子の裏の顔を知って、驚愕!!!」 Posted on 2022/07/28   

某月某日、息子のアパルトマンの不動産屋から電子契約書が送られてきたので、それ関係に強いママ友がいたので頼んで確認をしてもらう。問題ないわ、ということなので、サイン。無事に、息子の新居が決定した。
頂き物の焼き蛤とお気に入りの泡で「乾杯」をしていると、パリのレストランのオーナーAから電話がかかってきた。
「やあ、ジュートのアパルトマンが決まったんだって?」
「さすが、情報、早いね」
「良かった。うちの店にもメトロ乗り換えなしで来ることが出来るみたいだし。学業と仕事の両立にはちょうどいいね」
「ねぇ、噂で聞いたんだけど、あいつ、君の店と雇用契約結んだんだって?」
「ああ、一応ね。うちも人が必要だったから、やるならきちんと働いてもらいたくて」
「学生だから、勉強が一番でお願いするね」
「当り前だよ。フランスは大学に入るのは簡単なんだ。でも、出るのがかなり難しい。ちゃんと卒業出来てはじめて、評価されるのがフランスだからね。うちらもジュートのことを大事にしたいから、学生のうちは、学業を第一、店を第二、でやってもらうよ」
それを聞いて、安心をした。
「ところで、あの子、ぼくの前では一滴もアルコールを飲まないんだけど、君の店で働くようになって、初日にいきなり十杯くらい呑んだって、・・・それも、よければ、限度を教えてやってほしい。限度を知ることが大事だ」
「そんなに呑んでないよ。あのね、あの子は珍しい子で、5杯くらい呑んだ時に、ぴたっとやめるんだよ。もう、これ以上は大丈夫ですって。弁えているというか、限度をすでに知っているから、そこは安心していいと思うよ」

滞日日記「息子のバイト先のオーナーと長電話。息子の裏の顔を知って、驚愕!!!」



「それから、たしかにぼくらはジュートを連れまわしているし、ワインが飲めなかった彼を飲ませるようにしたのはぼくらだけど、ギャルソンはワインの知識も必要だし、彼はもの凄く向学心があるんだ」
たしかに、そういうことに、興味を持つととことん学びたがるタイプではある。
「この間、うちに呼んで、みんなで飲んだ時があってね」
「えええ、もう、そういう感じなの?」
「ああ、うちのギャルソン頭とか、毎日、呼び出して飲んでるみたいだよ」
大丈夫かなぁ・・・。
「その日はシャンパーニュの飲み比べの勉強会をソムリエたちとやったんだけど、もちろん、ジュートも一口ずつ全部味わって、一つ一つに対する自分の感想を語っていた。お父さん譲りというか、ありゃあ、酒豪になるな」
「まじか。あはは」
「このシャンパーニュはフルーツの香りがする、とか・・・。すでにソムリエのようなことを言っていた。でも、そういうお酒に対する向学心がないとうちの店では仕事が出来ないから、これも勉強だと思ってちょっとずつ飲ませている」
「なるほど」
「あ、で、ツジーさん。この間、店が終わった後、聞いてみたんだ、本人に。どうだい? って」
「うん」
「そしたら、接客したお客さんが、食後に、あれがおいしかった、あのワインが素晴らしかったって、褒めてくれたそうで・・・。それがとっても、自分のことのようにうれしかった、と言っていたよ」
「へー」
「あと、あの子、おとなしいし、話し方が控えめだから、お客さん受けもいいんだ」
外面がいいから、あり得る話だな、と思った。
「ま、とにかく、楽しんでやっているようだし、給仕頭がとってもジュートを気に入っていて、面倒をみているから、安心してくれたまえ」
「ありがとう。かなり安心をしたよ」
「いずれ、うちの戦力になってもらいたい。大学院まで進むそうだから、5年は学生をやらないとならないし、生活費はうちで稼げるだけのものは出すから、安泰だろ?」
「それは助かるね。ぼくは家賃だけ払えばいいんで」
「うん。あと他にもいろいろと話したけど、彼は大学で学ぶことの意味はまだ見つけ切れてはいないみたいだね。音楽活動が相当にうまくいっているようだから、音楽、大学、バイトの順番で人生を計画しています、とみんなに力説していたよ」

滞日日記「息子のバイト先のオーナーと長電話。息子の裏の顔を知って、驚愕!!!」



「そうなんだ・・・」
ま、そうだろうな、とは思っていたけど、仕方がないか。それでも、大学に籍を置いて、レストランで接客を覚えて、社会を学びつつ、自分の才能を伸ばしていくのであれば、ぼくは反対しない。むしろ、応援しないと・・・。
「ありがとう。君たちに感謝だね」
「うちも助かっている。カフェとは違って、品のいいお客さんばかりの店だから、知識とやる気とハートを持った子じゃないとうちには勤まらない。あの子なら、うちのチームの中でも、やっていけると思う。ぼくも助かっているよ」
長電話だったけど、彼と話しながら飲んだ久々のシャンパーニュは美味しかった。
「ところで、いつだろうね?」
「何が?」
「君が客でうちに来て、ジュートがサービスをする日だよ」
「げっ」
そのことを考えていなかった。やば!
それは、ちょっと、恥ずかしいから・・・。
「あいつが休みの日に食べに行くよ。あはは」
ぼくは笑ってごまかしておいた。
ここからは、社会という器を息子は学んでいかないとならない。
自分で稼ぎ、一人暮らしをし、自分のビジョンを実現していく人生をいうお酒を自分のペースでそこに注ぎながら・・・・。

つづく。

今日も読んでくれてありがとう。
こういうことを、息子からではなく、ひと様から教えられていくというのも、不思議な感じがしますが、うちの息子はぼくに対しては非常におとなしい子なので、笑、しょうがないですけど、ま、頑張っているようなので、ひとまず、アパルトマンの契約も終わり、バイトも決まり、大学も決まって、安心しました・・・。
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第6回 新世代賞作品募集

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