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滞仏日記「ついに、三四郎と再会したのだ!!! ひゃっほー、さんちゃーーん」 Posted on 2022/08/22 辻 仁成 作家 パリ

滞仏日記「ついに、三四郎と再会したのだ!!! ひゃっほー、さんちゃーーん」

某月某日、ということでパリに戻った。
映画の撮影は7割ほど撮り終えたので(難しい大きな場面はだいたい、終わった)、一度、パリで編集をして、全部の絵を繋ぎ、足りないものを再度、じっくり考え、後半の撮影(うまくいけば一週間程度の撮影)に備える、という感じである。(辻組の皆さん、ありがとう。再会を楽しみにしているよ)
引っ越しもあるし、地球カレッジなどもあるので、いったん、ぼくはパリに、あ、噛み噛み大魔王の三四郎もこれ以上、ほっとけないのでね・・・。あはは。
ということで、福岡から羽田空港を経由し、パリのシャルルドゴール空港まで、実にスムーズな移動であった。(荷物は福岡で預け、パリで再会、いいねー)
パリは熱波で大変だということだったが、結構、涼しく、過ごしやすい日曜日の夕刻であった。
とりあえず、荷物を家において、三四郎をお迎えに。撮影部のまっちゃんの実家で作ってるカステラと空港でゲットした明太子をマントさんに持って・・・とことこ。
ということでさんちゃんと再会~。
ぼくらは、いつもの芝生公園で待ち合わせたのであーる。
さんちゃんが遠くに見えた。
三四郎、いつものごとく歩かず、ぐずぐず、とぼとぼとしていたが、遠くに、ぼくを見つけた瞬間、矢沢永吉さんの「時間よ、止まれ」状態になった・・・。
次の瞬間、濁流のように転がりながらぼく目掛けて、走り出したものだから、リードが伸びきって、一度、ひっくり返って、後ろにジャンプ。
それでも、突進してきて、ぼくの足元で、嬉しょーーん!!!!
あはは。そうか、そうか、そんなに嬉しいのかぁ!!!!

滞仏日記「ついに、三四郎と再会したのだ!!! ひゃっほー、さんちゃーーん」



おおお、筋肉が凄い。確かに痩せているのだけど、でも、重いのである。
何が違うのか、写真や動画からはわからないことがわかった。
毛が、毛が伸びたのである。
めっちゃ全体の毛が伸びていて、ロン毛になったビートルズみたいなお姿。
だから、違和感があったのか、なるほど、でも、可愛い。
ぼくが抱きかかえると、腕の中でもう大暴れ、わかった、わかった、もう、大変。
悪かったねー。こんなに待たせてごめんなさい。
たくさん、べろべろされてしまった。マントさん、微笑んでいる。
そうか、マントさんも、ずっと一人暮らしで生きてきたのか、三四郎がいなくなると、寂しくるだろうな。ジュリアからも、早くまた預けてね、ムッシュ、と連絡が入っていた。
あはは、人気者め。

滞仏日記「ついに、三四郎と再会したのだ!!! ひゃっほー、さんちゃーーん」



息子が8月頭までパリにいたので、心配したけれど、そこまで家の中は散らかっていなかった。
あいつが出し忘れていたゴミが玄関にあったので、それをちょっと廊下に。
窓を全開にし、空気を入れ替え、三四郎の生活環境を整えてあげて、いつもの椅子でごろん。もちろん、ぼくの足のあいだにサンシーがいる!!! 
三四郎はうれしさが止まらないみたいで、ずっとぼくの身体にすりすりしている。
「よしよし、よしよし」
今日はここで寝てあげようかな、一緒に・・・。えへへ。
やっぱり、三四郎は超かわいい~。

滞仏日記「ついに、三四郎と再会したのだ!!! ひゃっほー、さんちゃーーん」



映画製作の話が今年の頭くらいにあった時は、もう、無理だと思っていたので、びっくりしたけど、引き受けるにあたり、三四郎のことが心配だった。
でも、博多の中洲の方々ががっかりしているというので、なんとかあの原作を映像化し、世に出す必要があった。
ぼくとしても10本目の監督作品、ここで終わらせられなかった。けれども、三四郎には長いこと迷惑をかけることになった。
「合宿は楽しかったかい? 他のわんちゃんたちとは仲良くやれていたのかい?」
ぼくが話すと、いつものように、ビクターレコードのあのワンちゃんのように、耳を傾けて、不思議そうな顔をする。
まあ、いい。暫くは、パリにいるから、安心しなさい。
「お、そうだ。来月、引っ越すからね。今度の家は一階で、ドアをあけると目の前が広場だから、いつでも走り回れるよ」
「わん」
「よしよし、その前に一度、田舎に行こう。海を走ろう」
「わんわん」
海という日本語は覚えているようであった。
「海だ、海!!!」
「わん!」
かわいい。ぎゅっと抱きしめてあげた。ぼくのお腹の上で、気持ちよさそうにしている三四郎・・・、ずっと、一緒なのであった。
ともかく、今は家に帰ったばかりなので、詳しいことはまた明日。
今日は疲れたので、筆をおきますね。
わん!

つづく。

滞仏日記「ついに、三四郎と再会したのだ!!! ひゃっほー、さんちゃーーん」

今日も読んでくれて、ありがとう!!!
やっと自宅に戻ってきました。ロン毛になった三四郎は70年代のジョンレノンやポールマッカートニーのよう。一緒に、ビートルズを歌いたくなりました。明日からの生活を考えると、頬が緩む、父ちゃんでした。次の仕事は31日の地球カレッジまでないので、ちょっとのんびり、三四郎とのんびりするぞーな父ちゃんです。皆さん、ありがとう。

地球カレッジ

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