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滞仏日記「おバカで何が悪い!熱血父ちゃんの終わらない夢。語らず死ぬな。その1」 Posted on 2022/09/12 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、昨日、2021年の日記を再ツイートしたのだけど、あれは、フランス人ならだれもが知るコンサートホールでいつかライブをやりたいと思って、渡仏した時から今日までの思いを綴ったもので、冗談ではない。
やれるものならやりたい、と熱血父ちゃんは、去年くらいから思い続けて、各方面と交渉をはじめた、という内容の日記であった。ふー、説明が長い・・・。あはは。
その会場は「オランピア劇場」という、ビートルズやローリングストーンズ、エディット・ピアフ、スティング、マドンナもやった有名な会場(日本でいえば、武道館、アメリカならマジソンスクエアガーデン、みたいな知名度。キャパは2000ちょっと)、なのだが、敷居は恐ろしく高く、歴史的な場所で、簡単に立つことが出来ない。
いろいろと審査もあるし、まず、自分がやりたくても、世界中のミュージシャンがそこを目指すので、ぼくのようなフランスでは無名のアーティストには難しい。
門前払いが関の山、簡単にはやらせてもらえるようなところではないのだ。
でも、父ちゃんは昔から無謀だから、やりたい、と思うと、うずうずするタイプであーる。
うずうず、うずうず、えへへ。

滞仏日記「おバカで何が悪い!熱血父ちゃんの終わらない夢。語らず死ぬな。その1」



そんなに凄いところじゃなくてもいいとは思いつつも、しかし、志は高い方がいいし、所詮、夢だから、夢見るのはタダだし、いつか、オランピアでやってみたいと自分に言い聞かせて、なんとか、頑張って生きてきた。
「オランピアへの道」という張り紙を仕事机の上に貼ったりしてね、笑。
無理だと分かっているのだけど、こういうところが、熱血父ちゃんなのである。
熱血~!!!!!!!!
人間みんな夢見ていいし、そもそも自由なんだから、いいじゃんねー。62歳は夢みたら、あかんのかい? あはは
「有言実行、それが俺のモットー」という歌詞が、ECHOESのdreamingという曲の一節にあったっけね。ま、若い頃に描いた夢なのであった。
前置きが長くなったが、それまでの経緯は、昨日再ツイした、2021年の日記に譲りますので、まだ読んでおられない皆様、こちらから、どうぞ。
👇
https://www.designstoriesinc.com/jinsei/daily-2382/

滞仏日記「おバカで何が悪い!熱血父ちゃんの終わらない夢。語らず死ぬな。その1」

※ 特注で、アンプまで作ってしまった、父ちゃんであった。気合が入っている・・・。制作、ケンタウロス・スズキ氏。うちのベーシストさんです。



ところが、2021年の日記に書いた通り、ぼくは、周囲に言いふらし続けてきたし、死ぬまでにはやるよ、と言い続けてきたのもまた事実なのであった。
で、パリの呑み仲間、お馴染み、オペラのうどん屋のおやじ、「呑もちゃん」こと野本氏には飲むたび、「パリで20年生きてきた。一度、あのすげーステージに立って、自分の歌を観客にぶつけてみたいんだよねー、やりたいんだよねー、おっさんやけど」
と絡んできた。
「やったらええやん」
野本は土佐の男であーる。やったらええやん、確かに・・・。
しかし、飲み屋で、こんなことを言い続けてるだけじゃ、実現は無理。
在仏歴20年でも、フランスでヒット曲もなければ、知られていない。コツコツ、ライブハウスでやり続けてきたのは事実だけど、無名なのであーる。
ところが、さすがに、諦めかけていた時、日仏音楽の架け橋を長年手掛けている日本のゴッドマザー・LOUMI氏から、一人の男を紹介された。
プロモーターのベルトランという男であった。去年のことである。

滞仏日記「おバカで何が悪い!熱血父ちゃんの終わらない夢。語らず死ぬな。その1」

※この男がカギを握る、ベルトラン、であーる。え? この人、大丈夫かって? あやしい? えええ、そんなァ。どこらへんで、判断してますか? いや、ベルちゃん、いい奴ですよ。音楽愛が半端ない。でも、たしかに、ぼくはよく、あっちこっちで騙されてるからねー。ううう、大丈夫、ベルちゃん、信じてるよー。



実は、今から、遡ること、十年ちょっと前、XJAPANのギタリスト、PATAさんのバンドと、ぼくのバンド、ZAMZAが、ドイツのベルリンとコロンでライブをやった。もちろん、ZAMZAがフロントアクトであった。その時のプロモーターがベルトラン氏であった。
「覚えているよ、あんたのロック」
これが去年、ベルトランと再会した時の彼の最初の一言である。ぼくは覚えていなかった。えへへ。
「パリのライブハウスの時も一度、観に行ったよ。数年前に、ブール・ノワールでやったよね?」
「へー」
実は、フランスでは、ライセンスのあるプロモーターが介在しないとライブが(ライブハウスなども含めて)出来ない仕組みになっている。
ぼくとベルトランはカフェで向かいあった。
もちろん、要件は知っていた。
「それは簡単なことじゃないよ」
「ああ、そうだよね。わかってる」
「まず、君、オランピア劇場に立つ、自信あるのかい?」
いきなりのジャブであった。もちろん、と返事をしたのはいいが、正直、途方もないことなので、実感がわかない・・・。無謀であーる。普通はこんな大それたこと、考えたりしないだろう・・・。
ベルトランのニヤっと笑ったあの顔が忘れられない。
「オッケー。君の音楽は好きだから、手伝いたいけど、パリには規模的にも、もっとやりやすいいい会場がいくらかあるんだけど。そこじゃダメなの?」
「分かってるよ。もちろん、出来ないなら仕方ないけど」
ぼくらは、お互いの目を覗きあった。
「ちょっと時間をくれないか。ボスとも相談してみる。それに、会場側の審査もあるし、ま、じっくりとやろう」
ぼくらは、そんなやり取りをして、その日は別れた。
でも、ベルトランが、なんらかの協力を約束してくれたし、プロモーターをやってくれることにもなった。
それだけでも大前進であった。
しかし、その二週間後、ベルトランから残念なメールが届くことになった。
「やはり、壁は高い。まず、コロナ禍でライブが出来なかったフランスのミュージシャンがオランピアに殺到して、会場に空きがない。それから、会場費がばか高い。ぼくらが持ちたいところだけど、コロナ禍でその体力がない。残念だけど、いい返事が出来ない」
いきなり、現実を叩きつけられた父ちゃんであった。
ばか高いって、いくらくらい? ええええ、そんなにー!!!!
ちょうど、一年前のことであった。
そこから、この物語は動き始めることになる。

滞仏日記「おバカで何が悪い!熱血父ちゃんの終わらない夢。語らず死ぬな。その1」



つづく。

ということで、今日も読んでくれてありがとう。
この話はまだ、途中で、・・・続いているんですね。途方もない夢だし、お金もかかるし、しかも、新しいアパルトマンを借りることでさえつまづき続けている、銀行保証どうなった!? そんな、ぼくなのですけど、でも、日本のロックを、音楽を、フランス人に届けたい、という強い思いはあるんです。あります。絶対、自分の音楽、通じると思っているし。ぼくはね、こう見えても諦めるの得意じゃないんです。笑。一年前から、今日現在までのぼくの物語です。どうなるか、今現在まだわからない、この物語は、続きます。少しずつ、現状を呟いていきます。「有言実行、それが俺のモットー」が25歳のぼくの標語でした。そして、一年前の日記がその始まりでした。この夢はまだ終わってないです。ぜひ、読んでください。壮大な阿呆な男で終わるか、ぼくがそのステージ立つことが出来るか、毎日、大きな分かれ目、分岐点に立たされているんです。
62歳ですが(もうすぐ、63歳やんか!)、夢を描いてもいいですか?

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