JINSEI STORIES

退屈日記「寂しい、と言った息子から連絡が途絶え、意味深な写真が届く!」 Posted on 2022/09/17 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、「気管支炎」であったことがわかった。
父ちゃん、眠れない苦しい夜が続いていたが、ドクター近藤に処方してもらった吸入薬が効いて、昨夜は一週間ぶりに熟睡! ←心地よい眠りだったァ!!!
咳き込まないでぐっすり眠れたので、ちょっと元気が出た。やっぱり、医学はすごい。先生、ありがとうございました。
さて、掃除でもやろうかな、と思っていると、息子から一枚の写真が届いた。ん?
ええええ? なんじゃこれ!!!!!
一人暮らしをはじめたアパルトマンの写真なのだけど、テレビの前にちゃぶ台のような小さな丸いテーブルがあって、(これは息子がベッドサイドテーブルとして使っていたものだ)その上に食事が並んでいる。
中央に何かはわからないが、メインディッシュらしきものが置かれ、白ご飯の入ったお茶碗が二つ、みそ汁らしきものが入ったお椀が二つ、水の入ったコップが二つ、置かれている。
つまり、自分の部屋で、誰かと二人で食事をしている、というメッセージなのである。
意味深だァ・・・。

退屈日記「寂しい、と言った息子から連絡が途絶え、意味深な写真が届く!」

※ 中心にあるのはなんだ? 気になる・・・。和食か中華風か、魚か鳥か、・・・。知りたい、、、、



その写真が届く前に、ぼくが送ったメッセージは、
「大丈夫か? 寂しくないか?」
というものであった。
というのは、数日前、息子から「ごはん食べに行ってもいい?」といきなり電話がかかって来た。
これは、辻父子史からすると、かなり珍しいことなのである。しかし、その時、ぼくはレコーディング中で、彼を招いてやれなかった。レーディングしているから今日は無理そうだ、と伝えると、残念そうに電話を切った息子君、心配になるよねー。
長年十斗の精神的な心の支えをやってくれている親戚のミナちゃんから「一人暮らしが寂しい」というメッセージが届いているけど、と心配の連絡が届いたのはその直後のことであった。
そこで、ぼくは「大丈夫か?」とメッセージを送ったのだけど、返事はなし、・・・。
その後、ママ友の一人から、
「どうやら、寂しかったのは、部屋にWi-Fiがなくて、ネットが使えなかったからみたい。工事業者が来てファイバー通信が出来るようになって、サクサク、ゲームが出来るようになって、みんなと仲良くやってるみたいだから、もう、大丈夫なのよ」
と連絡があった。
ぼくの気管支炎がひどくなり、息子の心配もここ数日滞っていたところに来ての、一枚の写真・・・。
意味深で、いろいろと、想像をしてしまった父ちゃんなのであった。

退屈日記「寂しい、と言った息子から連絡が途絶え、意味深な写真が届く!」

※ レコーディング中の父ちゃん。この時はまだ咳がひどくなかったのです。この日に、息子から携帯に電話が・・・・。



まず、この写真から真っ先に届けられる主たるメッセージは「今は、寂しくない」というものであろう。
それは整然と並んだ二人分の食事から、よくわかる。
シンメトリーに、几帳面に配膳されているので、一緒に食事をしている相手が、いつもの男子オタク仲間たちではなく、女性だということが分かる。
となると、医学生のシマちゃんしか考えられない。
息子が親友だと言い張るガールフレンドさんだ。
ぼくの本を何冊も買って読んでくれていることからかもしれないが、父ちゃん的には、十斗に紹介されたこれまでの可愛いガールフレンドさんたちの中では、もっともシンパシーを感じている。←単純なやつ。でも、嬉しいのだ。それは、嬉しい。
お父さんをどう思ってくれているか、で応援の仕方が違ってくるのは、姑的には、当然なのである。え? 日本語、間違えとるか。えへへ。
で、「寂しかったぼくの部屋にバラが咲いた」みたいな昔のフォークソング的大学生特有の4畳半ブルースが画面全体から見て取れる。
シマちゃんはぼくの心の同志なのだ感が半端ない。
シマちゃんは息子より二歳年上の苦学生で、もうすぐルーマニアの医科大学に戻らないとならない。
2か月に一度、パリに戻って来る。
その期間だけ、二人はべったり。シマちゃんの大学もそろそろ再開するので、それまでの間、友情を深めているのであろう。遠距離恋愛ならぬ、遠距離友情、、、しつこい!
父ちゃん探偵の推理はここまで、だ。名探偵ポワロならぬ名探偵ヒトポンであった。

退屈日記「寂しい、と言った息子から連絡が途絶え、意味深な写真が届く!」



一人暮らしが始まり、慣れないバイトと格闘し、Wi-Fiが繋がらない寂しさから、実家のぬくもりを求めたが、父ちゃんはレコーディングで実家に避難できず、シマちゃんとの疑似家族を愉しみ、そうこうしているうちにWi-Fiが繋がった。
来週から、大学が本格的にスタートするし、バイトも忙しくなるので、最後の時間をシマちゃんと大切に過ごしている、といったところか・・・。よしよし。
外に出たから、そうやって、自分で舟を漕いでいかなとならない。しかし、なんとか、舟は沖へと向かっているようだ。
父ちゃんの気管支炎が治ったら、美味しいごはんを作ってやろう。

つづく。

ということで、今日も読んでくださり、ありがとうございました。
父ちゃんはここ数日、体力を付けないとならないので、咳き込みながら、栄養価の高い食事を心がけておりました。昨日は、「玄米、焼サバ、葱、半熟卵」を作って食べたのです。今日は中島君ことエリックが引っ越しの手伝いに来てくれることになったので、ちゃちゃっとサーモンのクリームパスタでも作って食べることにします。この週末には、気管支炎を終わらせたい、もう決して若くない父ちゃんなのでした。めるしー。
さて、父ちゃんからのお知らせですよ。
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