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滞仏日記「三四郎くん、一歳のお誕生日おめでとう。長生きしようね大作戦」 Posted on 2022/09/24 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、日付が変わって、今日、9月24日は三四郎の一歳の誕生日であーる。
「犬の誕生日ケーキ」とかあるのか知らないけど、笑、食べられるものが限られている中で、ドッグフードじゃなく、何か美味しいものを作ってお祝いをしないとなァ、と思っている父ちゃんなのであった。
どんなものがいいだろう、と想像しては興奮し過ぎて、咳き込んでいる始末・・・(気管支炎がきつくて)。あはは。
とりあえず、鳥の胸肉を茹でて食べさせてあげようかな、と・・・。現在、ネットなどで調理法などを調査中。
ともかく、この子がこの世に生まれて一年が過ぎた。
これもネット情報だけど、ミニチュアダックスの平均寿命は13歳くらいらしい。意外と短いので、ちょっとショックな父ちゃんであーる。ぐすん。
平均寿命を生きたとして、その時、ぼくは76歳ということになる。うわー、やばいね。そんなに生きようだなんて、思ったこともなかった。
ま、三四郎を看取るまでは頑張って生きなきゃならないかも。
それが親の責任というものであーる。
ということで、今日の日記、いきなり、暗いスタートになった。
一歳のめでたい日なのに、もう、終わりを想像している・・・、小説家の悪い癖なのだった。
三四郎が我が家にやって来た1月のことを思い出す。
フランスの田舎の「犬屋敷」までぼくは彼を引き取りに行ったのだ。

滞仏日記「三四郎くん、一歳のお誕生日おめでとう。長生きしようね大作戦」

滞仏日記「三四郎くん、一歳のお誕生日おめでとう。長生きしようね大作戦」

滞仏日記「三四郎くん、一歳のお誕生日おめでとう。長生きしようね大作戦」



その時の三四郎は、目もあわせられない超田舎者で、とってもおとなしい子犬であった。車に乗せたけど、車を怖がって、吐きまくった。
大都会、パリに着いてからも、あまりの環境の変化に、最初の夜は朝まで、吠え続けた。でも、愛おしい。
まるで、子供を天から授かったような激しい使命感を受け取った日でもあった。
あれから、今日まで、夏の時期の合宿における「別離」はあったが、なんとかそれも乗り切り、ぼくらはがっちりと家族関係を構築することが出来たのじゃないか、と思う。
わずか一年だけど、人間の7倍(?)の速度で成長を遂げているということだから、人間ならば、小学生というところか・・・。
出会った頃に比べると、そのくらいの成長差を確かに感じる。頑張ったね、と泣き上戸の父ちゃんは目頭を押さえながら思うのだった。

滞仏日記「三四郎くん、一歳のお誕生日おめでとう。長生きしようね大作戦」

※、息子と三人でのお散歩。

滞仏日記「三四郎くん、一歳のお誕生日おめでとう。長生きしようね大作戦」

※ 三四郎と十斗と三人で散歩に、その時、不意に息子が撮影した、ぼくと三四郎の2ショットなり。これは一生ものです。

滞仏日記「三四郎くん、一歳のお誕生日おめでとう。長生きしようね大作戦」



今日、散歩に出たら、お馴染みピエールが愛犬のマルグリッドちゃんを連れて散歩をしていた。
ちょっと毛の長さが違うけど、同じ犬種同士、遠い親戚?、の二匹、めっちゃ仲がいいのだ。
マルグリッドと三四郎、ひしと抱き合って、お互いの存在を感じあっていた。実に心和む、愛おしい光景ではないか。

滞仏日記「三四郎くん、一歳のお誕生日おめでとう。長生きしようね大作戦」

※ マルグリッドと三四郎の抱擁。



ド田舎からパリに出てきて、9か月以上が過ぎた。
彼にとってははじめての引っ越しになる。
途中で合宿を経験しているから、きっと上手に移り住むことが出来るのじゃないか、とは思っている。
この子は、ずっと子供なのだ。
子供ながらの成長はあるけれど、十斗のように学校に行くこともなく、日本語を喋ることもなく、ぼくと一緒にキッチンで並んで料理をすることもない。
当然、大学に行くこともないのだ。
ぼくの足元にずっといて、ぼくを見上げて、静かに生きていく。それでも、生き物とこうやって向き合えることで、ぼくは多大な愛を三四郎から受け取ることが出来ている。
寂しさを紛らわすことも出来だ。生きる意味のようなものも、教えて貰うことが出来た。子犬を育てながら、自分の人生がいったいなんであるのか、を学ばせて貰っている。
この子と巡り合えた意味は物凄く大きい。
「ありがとう、三四郎。そして、一歳の誕生日、おめでとう」

つづく。

今日も読んでくださって、ありがとうございました。
昨日は、NHK・BSの「ボンジュール、パリごはん、夏編」いかがでしたか? 
世界で一番小さな家族であった辻家に三四郎がやってきて、そして、入れ替わるように息子が大学生になって巣立っていくまでの、それなりの波乱と愛が美味しい料理で紡がれていたならば、よかったです。(父ちゃんは例のごとく、まだ観ておりません)
どうなるんでしょうね? これから先の、父ちゃん・・・。
心配・・・。
さて、そして早くも「夏ごはん」の再放送が決まりましたよ。お知らせです。
なんと、今月、27日の火曜日なんですって。見逃した皆さん、どうぞ!!!
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●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022 夏」(59分)
【再放送日時】2022/9/27 (火)23:00~23:59<BSPのみ>
       2022/9/27 (火)17:00~17:59<4Kのみ>
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それから、ついでに、小説教室が本日、9月24日(土)です。気管支炎なので、時々、咳をするかと思いますが、ごめんなさい。なるべく、我慢をします。えへへ。一度は小説を書いてみたいけれど、小説の敷居が高く感じて、なかなか書けないとお嘆きの皆さまに、わかりやすい、父ちゃんの小説講座です。愉しみながら、小説を書いちゃいましょう。
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