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退屈日記「ナンパ(?)された父ちゃん・・・ううう、ちゃう、ちゃいます」 Posted on 2022/10/19 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、フランスから日本へ入る時、前は72時間以内のPCR検査が義務付けられていたのだけど、今回から、それはなくなった。
72時間前のPCR検査は結構大変で、出発が月曜日だと土日に検査をしないとならず、やってる検査場が少ないので、慌てたこともあった。
今回から緩和されていて、フランスから日本に入国する場合は、アプリ「MySOS」の事前登録だけでよくなった。
でも、年配の方には難しいようで、空港ロビーで、日本の方ですか? これ教えてください、と年配の方(ぼくよりは若い? 笑。あ、同じくらいかな)に言われたので、教えてあげた。
ただ、AIが審査をする間、待たないとならない。
さすがにそれはお付き合いが出来ず、地上係員の方に相談をされた方がいいですよ、と誘導をした。
そんなに厄介ではないが、PCRを三回うってないと、PCR検査を受けないとならないので、そこは要注意である。

退屈日記「ナンパ(?)された父ちゃん・・・ううう、ちゃう、ちゃいます」



あと、日本の航空機会社だと、機内に入るまでマスクの着用、機内でもマスクをしないとならない。
それを安心と思うか、面倒と思うか、で航空会社を選ぶしかないが、ぼくはその方が安心だし、マスクは好きなので、(保湿をしてくれる。肌にも喉にもいいので、マスクは家の中でもつけている)苦ではない。
フランス人も結構、乗っているので、従っていた。
年配のおじさんに、日本語で「あなたは日本人ですか?」と訊かれた。
「ええ、そうですよ」と仏語で返した。
するとおじさん、言葉が通じて嬉しかったのだろう、笑顔になって、仏語で返してきた。
「私は5年ぶりの日本です。日本政府が外国人を受け入れたのでこうやって日本に行くことが出来て嬉しい」
「わあ、それはよかったですね」
ぼくらは搭乗ゲートから並んで歩いている。背の高いムッシュだ。
「どちらに行かれるんですか?」
「ああ、東京で仕事をしてから、京都へ行きます」
「京都はいいですよね。ぼくも昔はよく仕事で言ってました」
「ああ、そうですか? 京都に詳しいですか?」
「そこまで詳しくはないですけど、まあまあ」
「あの失礼ではなければ、東京でご飯でも食べませんか?」
あれ、へんだな、と思った。
「いや、ぼくは福岡に行くんです。このまま、直行で。東京は11月に」
「ああ、それは残念だ。でも、お話が出来てよかったです。マダム、よい旅を」
マダム!!! やっぱり!!! マスクしてるし、ロン毛だからだろう。やれやれ。

退屈日記「ナンパ(?)された父ちゃん・・・ううう、ちゃう、ちゃいます」



だいたい、フランスの人はあまり、ちゃんと人のことを見てないし、日本人はきゃしゃだから、ぼくは5割の確率で「マダム」扱いされる。
この間、バンドのメンバーとカフェで打ち上げをやった時にも、ぼくだけ、ずっとギャルソンは「マダム」と言い続け、メンバーの苦笑を浴びた。
すると、一番大きな体躯の、東京葛飾生まれのホセ・ケンタウロス(185センチ、髭面)が
「ぼくだって、よくマダムって言われるんですよ」
と言いだし、(何自慢?)みんなが、ええええ、となった。
「だって、君、髭が」とぼく。
「だいたいは後ろから、髪が長いから、マダムと呼び止められるんです」
「だよね。正面からなら間違えないか」とエリック。
「それが、たまに、正面からでも言われるんで、辻さんが言われるのは当然ですね」
という、よくわからない話になって、大爆笑とあいなった。

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※ こちらが、ホセ・ケンタウロス。あはは。

ともかく、日本で間違えられることはないので、安心である。
さ、福岡にまもなく、到着です。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
これからバタバタしますので、今日は、ここまで・・・。えへへ。

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