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ノルマンディ日記「田舎のビストロで学生たちの原稿を再読し感動する父ちゃん先生」 Posted on 2023/03/01 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、帝京大学でこの春からぼくはクリエイティブ・ライティングのゼミを持つことになった。
現在、ゼミ生希望者から送られてきた小説やエッセイを読みこんでいるのだが、これが、なかなか。皆さん面白いものを提出してきたぞ~。(今日で締め切った)
地球カレッジの応募原稿と視点が違うのは学生だからであろうか。
京都造形大学でも約10年間、クリエイティブ・ライティングのクラスを持っていたのだけど、あの頃のみんなも、かな~り、トガっていたっけ。
教え子の中には活躍する小説家になった子もいるし、プロのライターになった子もいる。
帝京大生はどうだろうと思っていたが、これが、実に面白い。ゼミ生は5人と決めていたのだけれど、うーむ、どうしようか、悩んでおるのじゃあ。
今日は彼らの原稿を田舎のビストロで食後、お茶を飲みながら、再読。(一度読んだのだけど、気になったので、二度目を通している)
田舎と侮るなかれ、ここのビストロ、パリよりもうんと雰囲気がいいし、美味しいのだ。
ぼくが頼んだのは蛸のグリル。ひゃあ、美味しかったぁ。
ノルマンディの田舎のビストロで帝京大生の文章を読む、この不可思議な感覚・・・。わかるかなぁ~。
その間、三四郎は足元のバッグの中でじっと寝て待っておーる、えらいね。

ノルマンディ日記「田舎のビストロで学生たちの原稿を再読し感動する父ちゃん先生」

ノルマンディ日記「田舎のビストロで学生たちの原稿を再読し感動する父ちゃん先生」



ぼくのゼミ、単位とか出さない。
受けたからといって単位がもらえるゼミではないのだ。
なので、単位が欲しい人には意味のないクラスということになる。
意欲のある人だけが、参加できる特別ゼミなのだ。
ということだったので、もしかしたら一人も生徒の応募がないのじゃないか、と廣田先生(ぼくの上司先生)と心配もしていた。
ところがふたを開けると、結構な生徒から関心が寄せられ、もっとも全員が課題を提出したわけではないが、提出された皆さんには可能性があった。
もちろん、若いからこその無謀さもあるし、恐れを知らないというか、大胆なところもあったが、そこが、ぼくには新鮮であった。
中には、すでに、作家としての文体を獲得しつつある子もいた。
文体は獲得していないが粗削りな素の自分をそのままぶつけてくる書き手もいて、それはそれで大変面白かった。
可能性というものだけは定規で計測できるものではない。少なくとも、ぼくはその可能性を掬い取ることを心がけている。
応募は、学部を超えて行われ、各部から連絡が入ったが、やはり、課題の提出は、文学部からが一番多かった。

ノルマンディ日記「田舎のビストロで学生たちの原稿を再読し感動する父ちゃん先生」



ノルマンディ日記「田舎のビストロで学生たちの原稿を再読し感動する父ちゃん先生」

食後、生徒たちの作品を頭の中で抱きかかえたまま、ぼくは「車のガソリンを入れに」ではなく、「車の充電をしに」行ったのである。
フランスは排気ガス公害が酷く、パリなどは目がかすんで見えないこともある。
検査アプリがあって、日によってはパリ市内、真っ赤な危険日が続く。
こういう日にランニングをすると身体によくない、とかかりつけのお医者さん。
ぼくはパリではランニングを控えるようになった。
そこで、未来のために、車も電気とガソリンを選べるものに替えた。
電気自動車が増えたことで変わったのは、高速のスタンドである。
ガソリンスタンドの奥に、充電スタンドが拡充された。
ぼくが住む田舎にも、数か所、充電スタンドが出来た。パリ市内はそこら中にある。(日本はどうなのだろう?)
ぼくの車はガソリン満タンで130€(18000円くらい)、だいたい450キロ走ることが出来る。けっこう、高い。
それに対して電気だと、一回のチャージで60キロ走ることが出来て、4~5€なのだ。
450キロ走るとなると、ええと35€前後だから、この差は大きい。(計算が苦手なので、誤差、お許しください)
もちろん、充電するのに、充電器にもよるけど、30分から1時間くらいかかる。短気な人に、電気自動車はむかない。
パリだと、家のガレージのコンセントで充電することが出来る。家庭用電気だと、一晩かかるが、寝ている間に満タンになるので便利だ。
で、今日、充電をしている間にも、ぼくは生徒たちの原稿を読んだのである。その時、ちょうど、新たに二人の生徒から原稿が届けられたのだった。う、おもろい・・・。
ノルマンディの港のはずれにある充電スタンドに停めた車の中で、一生懸命、生徒の原稿に目を通す父ちゃん先生なのであったぁ~。
でも、生徒たちが書いた作品を通して、今の日本の問題が見えてくるから、大学の先生もためになる。
さ、春から、ゼミの先生になる父ちゃん、がんばるっちゃあ。

ノルマンディ日記「田舎のビストロで学生たちの原稿を再読し感動する父ちゃん先生」

ノルマンディ日記「田舎のビストロで学生たちの原稿を再読し感動する父ちゃん先生」

※ 三四郎が窓から外を見ている・・・。このあと、つきあわせたので、可哀想だから、砂浜を走らせた。

ノルマンディ日記「田舎のビストロで学生たちの原稿を再読し感動する父ちゃん先生」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
日本の東京の大学生が書いた原稿をフランスの田舎の充電スタンドで読んでいるって、すごい時代になりましたね。授業もZOOMで普通に出来るし、むしろ、電子によって、より深くつながることも可能な時代です。対面の授業は日本に帰る時にやりますけれど、むしろ、対面ではない面白さもあるわけです。コロナ禍がそのきっかけでしたが、・・・。地球カレッジも、パリのキッチンから世界中にいる皆さんに生で料理作りを配信できるのですから、面白い時代です。
さて、ということで3月19日、その地球カレッジでは、「気まぐれ文章教室」を開催いたします。ブロガーの皆さん、エッセイストを目指す皆さん、今までよりももう少し文章に磨きをかけたいとお考えのあなた、時間を持て余しているそこのお父さん、お母さん、お姉さん、お祖母さま、どうぞ、ご参加くださいませ。小説の書き方というよりも向きあい方、心得、コツ、推敲の仕方などを熱血にお届けしたいと思います。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリック!!!

地球カレッジ

ノルマンディ日記「田舎のビストロで学生たちの原稿を再読し感動する父ちゃん先生」



そんな料理好きな父ちゃんのパリでのライブは、5月29日、エディット・ピアフも立ったあのオランピア劇場で開催されまーす!!!

チケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。JALパックさんが誠心誠意優しくアシスタントしてくださいます。こちらです、

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ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。

https://linkco.re/2beHy0ru

自分流×帝京大学