JINSEI STORIES

滞仏日記「日々のごはん」 Posted on 2023/02/01 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、息子が大学生になったからかもしれない、フランスの大学生たちの生態(?)が、気になる今日、この頃なのである。
今まで、大学生との接点といえば、第七大学やイナルコ(外国語)大学などに招かれ、日本文学について講義をした、程度。
楽しい機会ではあったけれど、でも、関わりを深く持った、と言えるほどではなかったかもしれない。
で、十斗が大学生になり、一人暮らしを始めたことで、意識して、フランスの大学生たちを見つめるようになった。
ふむふむ、なるほど~。
やっぱり、親だからね、気になるのである。
ところで、今日、息子から凄い写真が送り付けられてきたのだ。
それは彼が作った料理の写真なのだけど、めちゃくちゃ美味そうなのであーる。
どうです? これ・・・。

滞仏日記「日々のごはん」

※ 一眼レフで撮影したのかなぁ。綺麗な色だね。



多分、サーモンの照り焼きなのかなぁ。
サーモンの切り身を買って、皮目から焼いて、照り焼きソースをかけたのに違いない。或いは、もっと凝ったソースかもしれない。
左側にあるのは、半熟卵だけれど、よく見ると、父ちゃん自慢の煮卵に似ている。
確かに、あの子は父ちゃんの煮卵を食べて育った。
煮卵丼など、しょっちゅう作ってやったので、味を真似たかったのかもしれない。
餃子やシュウマイの皮まで手作りをする彼の料理熱が凄まじい。
もちろん、嬉しいのだけれど、親として、そのエネルギーがどこから湧き上がって今の彼を構成しているのか、がちょっと気がかりだったりする。
彼だけに限らず、今時のフランスの大学生は、みんな家で料理をするのだろうか?
確かに、十斗の親友、ウイリアムやトマ君らは料理が大好きだ。
Youtubeの影響?
ぼくの知る限り、つまり、十斗の周りには、料理好きな男子大学生たちが集まっており、日々、料理(アジア飯)の研究なんかをやっているのだから、ふ~、やれやれ。
それって、どうなんだろう?

滞仏日記「日々のごはん」

※ 日々、こういうのも作っているらしい・・・。とんかつ、ポテトサラダ。

滞仏日記「日々のごはん」

※ ハーカオ、皮も手作りなのだそうだ、食べたいね。



なぜ、息子はここまで料理に凝っているのか、はて、何かを認めさせたくて?
或いは、何かを伝えたくて? 
では、ここで、クエスチョン。
なぜ、息子は料理の写真をぼくに送り付けてくるのでしょう?
毎回、まず写真だけが、送られてくるのである。
「やば、うまそうだね」と返すと、料理名がその後、こそっと明かされるのだ。
奇妙な親子関係ではあるが、もちろん、こんなに美味しそうな料理が出来るのだから、親として、悪い気はしない。
でも、不思議である。どこへ向かっているのであろう。
母親の不在を埋めるため、ぼくはこの子のために、料理、をはじめた
それを今、彼が受け継いで、こういうものを拵え始めた。
日を追うごとに、明らかに、腕があがっている。
「友だちが食べに来るのかい?」
と訊いた。
「いいや、自分のために毎日、作っている」
広東点心の一種、海老の蒸し餃子、ハーカオを手作りで作って食べた、と写真が送られてきた時もびっくりした。
昔から彼は蒸し餃子が大好きだった。閉店したメイライの店でも、まず、ハーカオを注文していた。
好きこそものの上手なれ、とは言うけれど・・・。
皮から全部作って、一人で食べた、と自慢する。
なぜ、と問うと、彼は、なぜって、美味しいものを自分で作って食べたいからだ、と言い返して来る。
今時の大学生がみんな料理上手になったら、レストランがつぶれちゃうじゃないか、と思うのはぼくだけだろうか?
確かに、TikTokを覗くと料理の短動画だらけだから、子供たちが影響されないわけもないが、ぼくの時代に、家で料理をする大学生、もちろん、いたけれど、それは生きるための料理であって、ここまで本格的なものではなかったような・・・。

滞仏日記「日々のごはん」

※ ふわふわ卵スープだ。



しかし、ちょっと変だよね。
母親がいない。で、こんな変なおやじに育てられた。
無事に大学生になった。一人暮らしをはじめた。
すると、料理の写真をぼくに送り付けてくるようになった。
この春から、ぼくは大学でゼミを持つことになっている。
あら、息子とほぼほぼ同年代の子たちを指導することになるのじゃないか。
きっと、ぼくは息子を通して、今時の大学生の気持ちを知りたいのかもしれない。いやぁ、あいつ、変わっているからなぁ・・・。
さて、息子は次に何を作って送りつけてくるのであろう。愉しみ、であーる。

滞仏日記「日々のごはん」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
2月4日は、マノンちゃんとニコラ君と十斗を我が家に招いて「節分」パーティをやろうと計画している父ちゃんです。うちのスタッフさんのお子さんたちも出来れば呼んで、青少年の節分大会って、面白くないですか? あはは、実現できるか、まだスケジュール確認をしていませんが・・・。とまれ、春が近づいていますね。いいことです。戦争を早く終わらせてほしい、と願ってやまない立春の父ちゃん、でした。
さて、2月になりました。NHKの父ちゃんの「パリごはん」、新作の放送日が迫ってきました。今回は、あの、ちくわぶディレクターの義和さんが、渾身の編集をされたようで、ぼくも楽しみにしております。それから、地球カレッジは、2月26日になりました。明日にでも、新しいご案内を差し上げますが、タイトルは「父ちゃんのカフェ飯教室」に決定いたしました。笑。自宅の狭いキッチンからの生配信になりますが、パリのカフェなどでフランス人がよく食べるようなカフェ飯にスポットをあてて、普段料理をやらないお父さんにも参加して貰いたいし、父ちゃんみたいな独身のあなたにも、ぜひ、ご参加いただきたい、そういう遊び心満載の地球カレッジになればいいな、と思っておりまする。間もなく、ご案内させて頂きますので、日程、メモしといてくださいね。
そして、5月29日のオランピア劇場でのライブがじわじわと近づいてきました。セトリが出来ました。ゲストもあり、内容の濃い、ライブになる予定です。

滞仏日記「日々のごはん」

さて、父ちゃんの5月29日のオランピア劇場でのライブ、直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。FNAC(フナック)でも買えます。

https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/

フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、

https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/

そして、新作「辻仁成のパリごはん 2022年秋冬」(59分) 放送時間のお知らせです。
2023/2/17(金)後10:00~10:59【BSプレミアム・4K同時】
2023/2/21(火)後5:00~5:59【BS4K】※再放送
2023/2/21(火)後11:00~11:59【BSプレミアム】※再放送
さらに、
●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん2022夏」の再放送が決まりました。
【NHK BSプレミアム】 2月12日(日)12:30〜13:29
(初回放送 2022年9月23日)
お知らせ多すぎますね・・・。メモしておいてねぇ。えへへ。



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