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滞仏日記、2「緊急取材、コロナ拡大によるアジア人への風当たり実態」 Posted on 2020/02/04 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、DS編集部並びにパリのライターさんらに今日現在のコロナウイルス拡大による直接及び間接的な影響や嫌がらせについて、アンケートをとった。ぼくがパリを出て、僅かに4日しか過ぎてないというのに、と驚くばかりの返事が続いた。なので、欧州旅行を控えている方も多いと思うので、心がけとしてご報告しておきたい。

ニコラの両親のように、偏見もなく接してくれる人がほとんどであることは大前提だが、差別とまではいかないまでも、当然のことだと思うけれど、アジア人に対して、不安が隠せないのは事実なようだ。ぼくがこうやって滞在している東京でも、やはり中国人団体らしき人がいるとなんとなく距離を置こうとしている自分がいる。一万キロ離れたパリでそういう行動があっても不思議ではない。フランス人には日本人も中国人も区別がつかない。やはり、知らない、分からない、未知だからこそ、みんな怖いのである。これは人間、何人であろうと、一緒なのだ。

そこで今朝、パリに現在暮らしている人たちから届いた「こんな目にあった」報告をまとめてみた。

・息子とバスに乗ったら前に座っていたフランス人二人がいきなりマフラーで口と鼻を隠した。(料理人、45歳)
・地下鉄で座っていたら、隣に座ったマダムが私の存在に気付いて慌てて席を立って別の場所に移動し、「え? わたし、コロナに疑われたんか」と思った。(編集部、40歳)
・バスに乗っている時、風邪を引いているので咳を我慢していたのだけど、我慢をすればするほどに喉がイガイガしはじめ、余計に激しい咳が飛び出し、乗客全員が私を振り返った。恐怖の目をしていた。(ライター、36歳)
・目抜き通りで若者たちがこっちを見ながら、「ウイルス」だと囁いていた。(ライター、25歳)

などである。直接的な差別をされたというのはなかったけれど、在仏日本人たちには(今までなかっただけに)衝撃的な出来事でもある。まさか、自分がコロナ感染者に思われる、遠ざかられるのかと思うと情けないという意見もあった。その結果、在仏日本人たちが考えたこと、防衛策は以下のようなものである。
・しばらく込み合った乗り物には乗らずに歩くことにする。
・行きつけのバーなどには顔が出せない、出したくない。
・変な目で見られたら、「言っとくけど、私ウイルスじゃない」と強く抗議をする。

滞仏日記、2「緊急取材、コロナ拡大によるアジア人への風当たり実態」



WHOのテドロス事務局長の発言には「緊急性」とそれを「曖昧にさせる」両方の意見が混ざっている気がしてならない。初動遅れとその後の中国の対応への称賛発言、並びに世界への説明不足は、逆にコロナウイルスの風評被害と差別を世界に広める結果をもたらしているのじゃないか。WHOの対応は半年後、失敗だった、と記録されるような気がしてならない。各国政府の初動の遅れも、結局は、WHOのこれまでの説明の影響によるものかとも思う。慌てて、事態の急変に気づいた各国政府が独自の水際防衛策を打ち出したが、それも、足並みが揃わない。各国で温度差があるのもWHOに責任があるような気もする。今日のニュースによると、中国指導部が新型肺炎を巡る初動の遅れを認めた。これは異例のことだ。同時に、テオドス事務局長の中国対応称賛が間違えだったことを意味している。オリンピックの時期が迫るので不安が募る。海外在住者にとっては厳しい視線が向けられる日々が続くことを意味している。

自分流×帝京大学