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滞仏日記「小さじ1の油でチキンカツを作ってしまう健康志向の息子からの提案」 Posted on 2024/01/25 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、朝、三四郎とちょっと離れた町にオリーブオイルを買う、ついでに、動画配信をやっちゃった父ちゃんなのであった。
見知らぬ田舎路地を、ただ、テクテクと歩くだけの、動画だったが、一人で盛り上がってしまった。三四郎はいい迷惑。
人の家の壁とか、門とか、路地とか、植木とか、波とか、空とかを映しながら、彷徨った30分であった。

滞仏日記「小さじ1の油でチキンカツを作ってしまう健康志向の息子からの提案」

あまりよく知らない町を歩く動画って、人が見て面白いのか、わからないのだけれど、個人的にはブラタモリ気分であった。しかし、途中で、面白い場面に遭遇したのだ。
ノルマンディのごみ箱は、地中に埋め込まれている。かなり、環境について考え、進んでいる、と思う。
バカでかい巨大なゴミ箱だと思ってもらえばいい。
「瓶」と「紙」と「プラスティック」とに分かれており、地表に出ているのは、高さ1メートルにも満たないひょろっとした筒。上部に捨てる穴が開いていて、(子供が絶対潜り込めない、瓶がやっと入る大きさ)、そこに分別のごみを捨てるのだ。
父ちゃんもよくワイン瓶を捨てに行くのだけれど、穴に瓶を投下すると、ひゅーっとしばらく音がして、がしゃんと割れる音がするまでに結構時間がかかる。
かなり深い。つまり、かなりでかい箱が地中に三つも埋没しているということになる。
それをどうやって回収するのか、不思議でならなかった。
その回収現場にたまたま、遭遇したのである。
クレーンが付いた巨大なごみ収集車が、そのクレーンを使って、地中に埋め込まれている瓶用の巨大なゴミ箱を、つまり筒の先に、ひっかける鉤がついており、そこに引っ掛け、(かなり原始的だが)持ち上げ、ごみ回収車の後部の、これまた原始的なゴミの受け台みたいなところまで、リモコンで動かし、そこで開扉、ゴミを落とす、というものだった。こんな説明でわかって頂けたであろうか?
(写真をご覧ください)

滞仏日記「小さじ1の油でチキンカツを作ってしまう健康志向の息子からの提案」

※ 運転手さんが車からおり、リモコンで、クレーンを操作し、ゴミ箱を地面から引き抜く。ゴミ箱の上の灰色のお墓型のものが、ゴミを投下する筒、であーる。

滞仏日記「小さじ1の油でチキンカツを作ってしまう健康志向の息子からの提案」

※ クレーンが回収車の後部に巨大ゴミ箱を移動させ、底が開いて、ゴミが回収車に落下するという、超原始的な装置。かなりのエネルギーが必要な感じ・・・。汗。

滞仏日記「小さじ1の油でチキンカツを作ってしまう健康志向の息子からの提案」

※ ゴミ箱が空になると、元の場所に戻す。運転手さん一人でこれだけのゴミを回収するのだから、すごい。



一人の運転手さんが、車から降りて、リモコンで、すべてのゴミの回収をする。三つのゴミがどうやって、回収車内で分別されるのかまでは、わからなかったが、田舎なのに、この進んだ発想、感動ものであった。
パリでも似たようなシステムがあったことを思い出した。
緑色の巨大な丸いゴミボックス(バカでかい青りんごみたいな)が、たまに、歩道に置かれてある。
そうだった、パリでも同じ方式で、クレーンで持ち上げ、すさまじい音をたてて、回収車に瓶を投下しておった。
ノルマンディでは、それが地中に埋没されており、美観を壊さない工夫が凝らされている。ノルマンディの勝ち。あはは。
でも、環境への取り組みが素晴らしいなァ、と思った、
ところで、うちの環境問題にうるさい息子君から、パパは油をとりすぎる傾向にあるから、減らした方がいい、という提案メッセージがその直後に届いたのだ。ほー。
まずは、息子が作ったチキンカツの写真をご覧いただきたい。
横に、ジャガイモのソテーも添えられているが、これ、どのくらいの油で作ったのか、おわかりであろうか?
正解は、小さじ1の油で、これができる、と言い張るのであーるぬーぼー。

滞仏日記「小さじ1の油でチキンカツを作ってしまう健康志向の息子からの提案」

※ 右がジャガイモのソテー、左がコーンフレークころもで作ったチキンカツ。ソースもオリジナルなのだとか・・・。恐ろしい大学生料理人であーる。



息子君は、エアーフライヤーという新兵器を使い、このチキンカツを、小さじ1の油で作ったのだ、と豪語しておる。
「パパの健康のために、エアーフライヤーハいいと思うよ。それに、油を大量に消費しないでいいから」
なるほどー。
ちなみに、息子君作のこのチキンカツは、コーンフレークをころもにして作ったのだという。その発想はインターネットから得た、というのであーる。素晴らしい。
それで、これだけゴージャスな料理ができて、小さじ1の油なら、やはり、加齢と闘う父ちゃんも考える必要があるように、思うのだった。

ということで、ノルマンディのゴミ収集車と勤勉な息子君から、父ちゃんも環境と健康にいいことをこれから心がけていきたいと思った、冬の散歩道なのでありました。ちゃんちゃん。
さんちゃんは、どうなの?

滞仏日記「小さじ1の油でチキンカツを作ってしまう健康志向の息子からの提案」

※ トマ君というのは息子の親友で、料理友なのだ。この二人はいつもどっちかの家に行っては料理をやっている。フランスの未来・・・、大丈夫そうですね、あはは。

滞仏日記「小さじ1の油でチキンカツを作ってしまう健康志向の息子からの提案」

※ 僕の未来は? パパしゃん・・・・。

滞仏日記「小さじ1の油でチキンカツを作ってしまう健康志向の息子からの提案」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
今時の大学生って、こういうことばかり考えているのでしょうか? ちょっとある意味で心配になりますが、ある意味で頼もしいなァ、とも思います。エアーフライヤー、次回、電気屋さんに行った折に、チェックしてみたいと思います。
さて、この後、午後便の日記で、個展について、ちょっと重要なお知らせがありますので、個展を見に行く可能性のあるみな様、チェックをお願いいたします。
はい、さて、今年の父ちゃんのスケジュールのお知らせです。
●小説「十年後の恋」集英社文庫版が1月19日全国発売。
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●2月28日から、新宿伊勢丹のアートギャラリーで個展(詳しくまたご報告します)
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。(検索ください)
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ!!!
以上です。

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自分流×帝京大学

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