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滞仏日記「辻さんは無名で誰も知らない、とギタージャンボリーのPに言われた」 Posted on 2024/02/27 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日はJWAVEのラジオ「グッドネーバーズ」に出演させてもらい、ナビゲーターのクリス・トモコさんの前でZOOを熱唱した、父ちゃんであった。
で、楽しくラジオは終わったのだけれど、日本最大の弾き語りフェス、ギタージャンボリー(JWAVE主催)のプロデューサーのHさんがやってきて、雑談をしたらば、
「辻さんのファンは喜んでいます。しかし、驚かないでくださいね。若い観客はツジジンセイを誰も知らないのです」
と言われた、のであーるきめです。
笑顔がひきつるのを、必死で、堪えた父ちゃんであった。
横にタイタンのOさんが立っていたが、ぼくの動揺をかばうかのように、失笑されていた。
「辻さんのこと、みんな、知っていますか? と訊くと、ほとんどのお客さんは知らないというんですよ」
と言うのです。
まじですか、とも言えない。
なにせ、日本を出てはや22年、そりゃあ、誰も、父ちゃんのこと、知らんわな。
想定内想定内、と薄ら笑いを浮かべてひきつる、父ちゃんであった。
でも、フェスでは、トリ前なので、しーんとなることを予感して、Hさんは、前もって、ぼくを動揺させないように、そう、おっしゃったのに違いないのだった。
Hさんは、もしかすると、ぼくをトリ前にして、失敗したかな、と思っているのかもしれない。ああ、そうだな、たぶん・・・。
申し訳ない、無名で・・・。ううう。へこむ、父ちゃん。
しかし、Hさんはいいやつだった。
「だから、お客さんを、辻さんの演奏と歌で驚かせてやってください。がっつーんと決めて、かっさらっちゃってください、彼らのハートを!」
こんな風に、落としては、励ます、下げて上げる熱血男なのであった。あはは。ま、
笑いつつも、心はぺちゃんこに萎れた父ちゃんであった。
でも、Hさんからは、応援したいという熱いリスペクトを感じる。その熱意に大きく応えたいじゃないのー。えいえいおー。

滞仏日記「辻さんは無名で誰も知らない、とギタージャンボリーのPに言われた」

※ クリスさんです。つねに自然体な方・・・。

滞仏日記「辻さんは無名で誰も知らない、とギタージャンボリーのPに言われた」



ともかく、今の若年音楽ファンには無名ということがわかって、これは、逆に、よかったのかもしれない。
当日、拍手がなくても、驚かないですむ。Hさんの優しい気配りなのだ。
しかし、心配ご無用。
ぼくは、渡仏した時も、ひとり道端でライブをやっていたし、みんな外国人(フランス人ね)ばかりで、当然だけれど、アウェーの路上で歌い続けてきて、そこからのオランピア劇場への20年だったものなァ。
ということで、ぼくを知らない人たちが集まるフェスに出るからには、拍手がない、ことはもう十二分に心得えた。
「誰だ、この人」
と思われて、立つステージ、想像してほしい、ふふふ、ええのー。
本望じゃのー。
やったろうやないかい!!! 鼻息荒い人になってる!
渡仏した日に、橋の下で歌い始めたあの頃を思い出すかもしれない。
あとは、自分の歌をたんたんと届けるだけだ。
これは、逆に、いい経験であり、楽しいことかもしれない。
5000人のぼくを知らない人たちの前で辻節をさく裂させられる快感、たまらんのー。
しかし、ブーイングが飛ぶことも考えられるのー。ひゃあ、勘弁よー。
三四郎、パパしゃんは東京で闘ってるぞよ。
でも、自分のファンに向けて歌うだけじゃあ、成長はないね。永遠の異邦人。
疑いの目で見られている中で、「あのロン毛のおじさん、なかなかいいね」と言わせられたら、いいよね。
よし、そう考えたら、熱血が騒ぎ出した。
まず、ストラップ買いに行こうっと。(ストラップ、フランスから持ってくるの忘れたんだよねー、あかんやつ)

滞仏日記「辻さんは無名で誰も知らない、とギタージャンボリーのPに言われた」

※ JWAVEから見えた大きなビル、これ、もしかして、話題のあれすか?

滞仏日記「辻さんは無名で誰も知らない、とギタージャンボリーのPに言われた」



ということで、今日はJWAVEで打ちのめされた後、からの、ライブと個展に備えての、髪を切りにいった熱血父ちゃんであった。
美容師のお兄さん、
「忙しいすね」
と言った。
「まーね、人生だからね」
「辻さん、白髪もないんですから、気にしちゃだめですよ。その年齢で黒髪の人いないですから」
これ、誉め言葉かいな。
アシスタントの子に、肩を揉まれ、
「ええ、この筋肉、柔らかい。何をされているんですか」
と驚かれた。
「筋膜リリース」
とわけのわからない返答をして、異次元を生み出した、父ちゃんであった。
筋膜リリースと黒髪を維持する方法については、また、次の機会にね。
えへへ。

滞仏日記「辻さんは無名で誰も知らない、とギタージャンボリーのPに言われた」

※ 長く伸びたので、切りました。



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
無名でありつつ、どこまでも挑戦をし続け、先生であることに、甘んじないことが、父ちゃんのモットーです。大家になるより、チャレンジャーでい続けたい、今日この頃。
ま、勇気をもって、がんばりましょ~。
はい、お知らせになりまする。
伊勢丹アートギャラリーの個展ですが、気を付けてほしいのは、初日の28日は抽選で決まった方しか入れないので、正式には、29日の朝10時から、3月5日の午後6時まで、ご自由にご来場いただけます。「辻個展、29日から、3月5日まで」とメモをよろしくお願いいたします。混乱を避けるため、との画廊の判断ですので、ご理解ください。

●小説「十年後の恋」集英社文庫版、重版!
●小説「東京デシベル」がイタリア、Rizzoli社から刊行されました。
●3月3日、両国国技館、ギタージャンボリー出演。
●3月6日、ツジビル・ライブ(SOLD OUT)
●4月19日、ロンドン、ライブ。詳細はこちらから☟

https://www.eventbrite.co.uk/e/2gz-tsuji-and-hide-live-japanese-music-in-london-tickets-790578039197?aff=oddtdtcreator

●6月28日、ボルドー・ライブ、予定。(詳細待って)
●6月30日、パリ・ライブ決定(詳細、待って)
●7月3日、リヨンでライブ。(詳細、お待ちー)

https://www.instagram.com/japan.stories?igsh=MTA2dWFjODdsZnNrZA%3D%3D&utm_source=qr
新しいデザインストーリーズのインスタも再始動! スタッフみんなで、パリの今を配信中!
https://www.instagram.com/designstories_paris?igsh=cHlpdGFvdWkyYmdj&utm_source=qr
・それから、ぼくのなりすましが、ファイスブックで暗躍していて、問題が起きている、というので、皆さん、フェイスブック、ぼくのなりすましには、近づかないように、友だち申請とかしないでくださいね。要注意です。
以上です。

滞仏日記「辻さんは無名で誰も知らない、とギタージャンボリーのPに言われた」

自分流×帝京大学