PANORAMA STORIES
三四郎もびっくり、父ちゃんの絵が日本酒のラベルに Posted on 2026/01/09 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
去年の秋に、パリのマレ地区で開催されました、父ちゃんの個展に、黒づくめの一人の男がやってきて、藍色の中に浮かぶ花の絵を、購入したい紳士がいるのですが、と神奈川県なまりのある日本語で言ったことは、前にもラジオか何かでお伝えした通りで、その人物の上司というのが、酒造会社を経営しているGさんであることは、絵が日本に搬送された時に、わかっていた、父ちゃんでした。
知り合いの知り合いを介してのご紹介で、前に一度、この神奈川の酒蔵を訪問したことがあったのです。
逝去した我が秘書、菅間恵理子さんのお墓のすぐ近くにあったので、お墓参りを兼ねて伺いまして、
「先生、いつか、うちの酒のラベルを描いてください」
ということを丸顔の、笑うセールスマンのような体系とでもいうのでしょうか、かなりの紳士ですが、どこか理数系の匂いのする人で、この人もまた熱血人間なんですが、お酒はあまり強くなく、でも、ここの日本酒は、ぼくの友人でもある宮川氏がフランスでやっている「蔵マスター」という日本酒コンテストで、グランプリを獲得したこともあったので、縁が縁を繋いで、面識がありました。
で、購入された絵というのは、所有権は買われた方のものなんですが、著作権というのはぼくにありまして、許可するかどうか、ぼくが判断をしないとラベルには出来ません。
そこでそのGさんから、今日、一枚の合成写真が送られてきたのです。
それをメールで開いた時の衝撃と言ったら、ありませんでした。
このような文面が添えられております。
「先生、イメージで、あくまでもイメージで、先生のお作品をこのような形でラベルにしてはどうか、というAI画像を作成いたしました。御覧いただき、ご意見をお待ちしております。謹言」
きんげん・・・。
なかなか、メールで見ない言葉遣いで、この人の真面目さが伝わります。「謹言」とは手紙の締めくくりで使う、謹んで申し上げます、みたいな硬い表現なんですが、・・・。
たしかに、この写真の雰囲気は「謹言」でございました。

ちなみに、パリの個展で展示された時の、この作品はこのような感じでございました。
上の写真ですね、下の写真も別の方が現在もっておられます。


この絵が、日本酒のラベル、って、凄いなあ、と感動をしておりましたら、
つづきのお手紙が届きました。
「先生、もし可能であれば、このような形を元にこれから試行錯誤を繰り返しまして、今年の春、5月前後に、世の中に出してまいりたいと思っています。特別限定版なども作ることが出来れば、幸いです。先生のますますのご活躍をお祈りいたしております。謹言」
でた、「謹言」しかし、この日本酒の風格にあいますな。
ま、日記ですから、このように面白おかしく書いてみましたが、こういう依頼があった、ということ、本人的には、けっこう、気に入っているということです。
実現できるといいですね。

ノルマンディは凍てつく寒さですが、愛犬、三四郎は浜辺を走り回っています。
かわいいですな。
こういう日は、熱燗で、顔を赤く染めたいものです。
日本酒のラベルについては、進展があり次第、ご報告を申し上げたく思います。謹言。
えへへ。


ということで、辻仁成展覧会情報
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近づいてきました、日動画廊パリでのグループ展です。
GALERIE NICHIDO paris
61, Faubourg Saint-Honoré
75008 Paris
Open hours: Tuesday to Saturday
from 10:30 to 13:00 – 14:00 to 19:00
Tél. : 01 42 66 62 86
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それから、8月前半に一週間程度、東京で個展を開催いたいます。
今回のタイトルは「鏡花水月」です。(予定)
タイトルは突然かわることがございますので、ご注意ください。
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そして、11月初旬から3週間程度、リヨン市で個展を開催予定しています。詳細はどちらも、決まり次第、お知らせいたしますね。
お愉しみに!
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そして、電子書籍で「海峡の光」が配信されております。文学の方もどうぞ。
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Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。


