PANORAMA STORIES
父ちゃん、パリ個展日記(内覧会の巻) Posted on 2025/10/16 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
昨日はお客様のおしゃべりで、個展が台無しにされたと思い、やけ酒をあおって、呑み過ぎ、笑、体調を崩し、三日目は、画廊への出勤が、夕方の6時頃になってしまったのであります。やれやれ。二日酔い・・・。頭も痛い。
でも、気持ちを切り替えないとならない。
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今日は、フランス人の美術関係者&メディアを集めての内覧会が行われるから・・・。
出版社、ギャラリスト、美術関係者などが勢ぞろいする大事な日なのです。
昨日の事件があるので、スタッフには、厳しく指導をし、入場者のチェックなどもやらせていただきました。
というのは、内覧会あらしの泥棒がこの界隈に出没しており、関係者を装って、紛れ込み、ワインなど飲みながらバックルームに忍び込んで、財布を盗むのが横行しているのである。この画廊も先々週、携帯を盗まれている。
そのため、今日は見張りのアルバイトを雇いました。といってもマネージャーMMの娘さんでファッションモード界で働くNMちゃんだ。笑。(ちなみに、カタログのデザイン・制作はNMちゃん)
今日は、とっても静かな内覧会となりました。
何が、違うのか、というと、美術館、画廊でのマナーをフランス人はよく心得ているからです。ワインなんかを置いてあっても、群がったり、食べながら歩き見学することもない。
誰かが大きな声でしゃべりだすと、隣の人が、口に指をあてて、しっ、静かに、とやります。
これは美術館でも一緒。
絶対、作品に触れてはならない。触る人がいるんですよ、とほほ。
でも、そういうことが分からない人が結構いるので、これはもう、マジで、よくありません。
静かに作品をみて、用意されたワインも控え目に呑んで、作家であるぼくとひそひそ会話をする、それが内覧会のルールなのであります。
☆
素晴らしいゲストが集まったし、美術界の皆さんにおほめを頂き、ちょっと気分を取り戻した、父ちゃん画人なのでありました。
美術団体のディレクターなどもいて、MMが名刺交換を仕事していました。
次につながれば、嬉しい限りだね。
左が、友人のディディエ氏(SALON社の社主)。右がセリーヌさん(モード界の方である)
こういう場所で、横のつながりが増えていくのです。
ロビー外交というやつだ。
こちら、新作のWA/KOSUMOSシリーズの対の作品である。藍染の藍色を油絵具でつくり、帯のような絵を描いた、美しい作品なのです、自画自賛。えへへ。
内覧会(ベルニサージュ)ということもあり、あくまでも主役はぼくの作品になるので、その絵を見まもる方々のまなざしにも力が籠っています。
井戸端会議をする人はいません。そもそも椅子に座ってだべる人なんか、一人もいないのです。
みんなが帰った後も、ディディエは、残ってくれたので、シャッターを下ろす前に、記念撮影をしました。
こちらのシャンパンが好きで、今日は内覧会の乾杯に用意させて頂きました。マグナムボトルです。しかも、二本。広がりがあり、とってもドライで、呑みやすい泡です。好きなものをふるまうのがいいですね。
フランスで40年近く活躍されるHAIJIMA画伯です。この後ろの「穴」という作品をとっても褒めてくださいました。ちょっと興奮気味に、これは素晴らしい、と言われ、気分をもちなおした、父ちゃん。やっぱり、アーティストに褒められるのが一番嬉しいかも・・・。
よかった。
最終的に、今日はいい日でありました。
画廊の人たちと記念撮影・・・。
負けずに、明日も、頑張ります。ちょっと体調を崩したので、ここからはスタッフに任せて、ぼくは小説「泡」に取り組みます。第二部がもう少しで終わりますので、今は第三部の構想を考えながら画廊に通っている、ものづくりのプロでありました。
あはは。
画廊をしめた後。夜の22時くらいです。スタッフの渚のシンドバッド嬢、森さん、MMを送り出し、しばらく、佇み、作品たちに「おつかれ」を言ってから家路についた父ちゃんでありました。
そして、今日のごはんは、ジャコと高菜のパスタにしました。外食は疲れるからね、自炊です。麺30g、目玉焼き載せです。おいしゅうございました。
個展は、26日、16時まで続きます。
また、明日。
えいえいおー。
辻仁成、個展情報。
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10月26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」現在開催中です。
住所、20 RUE DE THORIGNY 75003 PARIS
地下鉄8番線にゆられ、画廊のある駅、サンセバスチャン・フォアッサー駅から徒歩5分。
全32点展示。残り数点になりました。
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1月中旬から3月中旬まで、パリの日動画廊において、グループ展に参加し、6点ほどを出展させてもらいます。
Posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。