PANORAMA STORIES
父ちゃん、パリ個展日記(個展会場で小説を書く) Posted on 2025/10/22 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
パリでの個展期間中ですが、現在、当サイトで連載小説をやっておりまして、笑、これが、すでに30回を超える大ロング連載になっておりまして、しかも、終わる見込みがない、というすごい状況下なのです。
それでも、まもなく、なんとか、第二部が完結しそうなのですが、個展をやりつつ、小説も書かないとならない、これ、うまれてはじめての経験のさなかにあり、頭と身体がかなり摩滅しているのは事実であります。
それでも読者の皆さんからの期待もそこそこ大きく、バランスが難しい日々を泳いでおります。
なので、個展会場に入りましても、バックヤードのコーヒーマシーン脇の小さな机で小説「泡」を執筆している、父ちゃんなのでありました。
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小説は無料連載ですから、やめても誰からも叱られないんですが、逆に、こういう自由なものだからこそ、やり遂げたいという意地が出て、困っております。
さらに言えば、マジで久しぶりに小説なる世界、本気で取り組んでいる自分にも驚いています。そして、小説、やっぱり、天職なんでしょうね・・・楽しい。
いったい、第何部まで続くことでしょうか・・・アカリちゃんとしゅうくんの運命やいかに・・・
とりあえず、現在構想に詰まっているところでございまして、言い訳みたいな話ですが、今日はお休み、となります。
えへへ。
先行きが不安でなりません。
※ 学芸員さんが一人お休みなので、今日は父ちゃん学芸員、稼働しました。今日も雨で、人は少ない…マレ地区なり。
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『退屈だなー、今日、夜、何食べよーかなー。早くノルマンディに帰りたいなー』
独り言なり。
地下のバックヤードでも小説を書いている父ちゃん・・・。
そうこうしているうちに不意に晴れ間が・・・
で、ぼうっとしていたら、昔ね、ぼくの舞台に出演してくれた美波ちゃんが観に来てくれました。フランス在住だそうです。
あはは、親子みたいでしょ?
不意に元気になった。
で、疲れたら、いつものあきらくんのカフェに行き、一休みするんですが、彼は月火曜が休みらしく、
「だから、昨日、来たでしょ? もーやんなっちゃうなー、辻さん、月曜火曜は俺休みだって、いないんだって、何度も言ったのに、来ちゃうんだもの、困っちゃうよなー」
と言われました。
別に、君に会いに行ってるわけじゃないよ、コーヒー休憩するため、と喉元まで出かかるんですが、なんか、自分目当てで俺が言っていると勘違いしているあきら君も日本から一万キロ離れた異国で頑張っているわけですからね、そっとしておきました。
「そうか、そうか、じゃあ、木曜とか金曜に行くね」
やれやれ。でも、パティシエ・あきら君のケーキはマジでうまいです。
※ あきら君作のクロワッサン、真四角で、かわいいな。うまいのか、食べたことないから知らない。
今日は、日仏のカップル、日英の親子さん、など、いらしてくださいましたよ。美波ちゃんも、日仏カップルだものね。
オランダから二組もいらしてくださったり、ドラマティックな火曜日でございました。
そして、いよいよ、後半戦、あと4,5日で個展も終わり、ノルマンディにやっと戻って、新しい創作にむかえます。
絵を描いている時が一番、穏やかでいられるので、日常を取り戻せる時を心待ちにしている父ちゃんなのでありました。
頑張ります!
さんきゅー。
えいえいおー。
辻仁成、個展情報。
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パリ、10月26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」現在開催中です。
住所、20 rue de THORIGNY 75003 PAROS
地下鉄8番線にゆられ、画廊のある駅、サンセバスチャン・フォアッサー駅から徒歩5分。
全32点展示。残り数点になりました。
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1月中旬から3月中旬まで、パリの日動画廊において、グループ展に参加し、6点ほどを出展させてもらいます。
Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。