PANORAMA STORIES
ノルマンディ日記(絶体絶命大ピンチの巻) Posted on 2025/11/04 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
毎日、とにかくいろいろなことがおきますが、マジで、今日は絶体絶命な出来事がおきてしまったのです。
まずは、この写真をご覧ください。
可愛らしい、愛犬、三四郎の写真でございます。
こんなにかわいい風景なので、写真を撮りたいと思うのは親心というものじゃありませんでしょうか・・・。


このアングルの写真を撮影するために、父ちゃんはヤンキー座りをし、携帯を低く構えて、ぱしゃり、とやったわけです。
そのあと、ボールを投げて小一時間遊んでやり、海辺のカフェでコーヒーを飲んで、さ~、夕食も近いので車に戻ったわけですが、・・・。
あかない。
ドアロックを解除しようとしても、うんともすんとも反応をしないんです。
あれ、おかしいな、と思って、ポケットを探すと、車の鍵、がない!
慌てて、探しますが、車は目の前にあるのに、鍵がない・・・。
入れない。
そんな、バカな。
どうなった?
どこかで落とした?
カフェだろう、と思って、三四郎をかついで、走りましたが、カフェのギャルソンさんも一緒に探してくださいましたが、どこにも見つからず・・・
えええ、どこじゃ。どこ・・・・
もしかして、海でおとした?
マジか、そりゃ、絶望的じゃ! 
( ゚д゚)///////~( ノД`)シクシク…
もうすぐ、潮が満ちてくる時間なのであります。
や、やばい・・・。
三四郎を抱えて再び走る父ちゃん。
一年分の体力をそこに注ぎ込んだ感じでございました。ぜーぜー、老体に鞭打つってこれのことなのね、心臓が痛い・・・。
走りながら考えたのは、もしも、鍵が出てこなかった場合、見つからなかった場合、えええ、いったい、どうなるのか、という最悪のシナリオでした。
車の鍵には、家の鍵もついているのです。
それだけじゃありません。
パリの事務所の鍵とか、パリの駐車場の鍵もついているのです。
どこにも帰れなくなります。
がっびーーん。
まもなく、満潮になろうかという時間です。
まんちょーーーー。
三四郎を抱えたまま、神様、神様、なんでもいうことを聞きますから、なんとか、お願いします、と半泣きになりながら、浜辺を走りました。
☆
三四郎とボールを投げて遊んだあたりはすべて見回しました。
何往復もしたのです。
で、潮が満ちています。鍵が、車の鍵、家の鍵がぜんぶ、海に沈む・・・。
途方にくれました。
絶体絶命の大ピンチです。
そうだ、写真を撮影したんだっけ、と思い出しました。
あの時、ぼくはしゃがんで三四郎を真下から撮影したんじゃなかったか。
その時、ずぼんのポケットの中に入っていた鍵が落ちた・・・。
おおおおお!
下は砂浜、だから、音がしないでそのままカフェに移動した・・・ということじゃないか。
家にも、車にも、どこにも行けない場合、どうしたらいいんだ。
もうすぐ、パリで打ち合わせがあるのに、いや、それより、ごはんが炊きあがるのに、ああ、それより、家に入れないじゃないか、うわあああ、絶体絶命の大ピンチじゃあああああああ。
そこで、携帯を取り出し、最後に撮影をした三四郎の写真を見て、同じ砂の場所を探せば見つかるかもしれない、と思ったのでした。
そして、これが、その時の写真です。

この砂!!!
どこだ!!!!!
見回しました。割と綺麗な砂の感じ・・・、この近くなはず・・・。
海は満ち始めているから波打ち際に割と近いは、ず、あああ!
あった!!!!!!!
きらっと光った金属の輝き。
ということで、間一髪、父ちゃんは鍵を見つけることが、奇跡的にできた、のでした。マジで、奇跡です。
何キロも続く浜辺の、しかも、満潮が近づく波打ち際の手前・・・。
その時、思ったのは、やはり、神様はいる、ということと、鍵はポケットじゃなく、腰にぶら下げたサイドバックの中にいれとけ、という2点でした。
教訓です。
みなさん、気を付けてください。
今日があるのは、日ごろの行いの結果なのです。やっぱりな。
はい、今日も精一杯感謝をして生きたりましょう。
えいえいおー。


今日のごはん。
「バンバンジー風チキン」
二日前に、チキンの丸焼きを作った残りを、翌日はスープにし、今日はバンバンジーにしました。美味しかったです。

丸焼き時の写真はこちら。まずもも肉を食べて、白肉をスープとバンバンジーにしました。残ったのは、三四郎と山分けです。笑。
仲良し愛犬家族!
※ パリの展覧会情報
2026年1月16日から3月7日まで、パリの日動画廊において、フランス人画家のグループ展に参加し、8点ほど出展させてもらいます。
☆
日動画廊さんはパリ8区にあります。
住所は、61 Rue du Faubourg Saint-Honoré, 75008 Paris
となり、ええと、ブリストルホテルとエリゼ宮のあいだくらいの交差点角にあり、だいたい、警察官さんが立っています。
気になる作品があれば、直接日動画廊さんに、連絡してみてね。日本語、通じます。

Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。



