PANORAMA STORIES
何食べているの~、父ちゃんのノルマンディ飯(タルト・ノルマンド) Posted on 2025/11/06 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
まずは、フランスに出現したスーパームーンをご覧ください。
かわいいですねー。
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さて、
パリから戻って来た翌日かな、アトリエの門のところに、ぎゅぎゅうと詰められていたりんごが入った紙袋がぶらさげられていたんです。
隣の、90歳のミッシェル翁の仕業だとすぐにわかりました。(ぼくのことをいつも、マダム、というおじいちゃん)
一人暮らしなんですが、時々、顔を出してくれます。
「マダム~、いい天気だねー」
という感じで。
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御覧ください。
ミッシェル翁の家になるりんご、すごくないですか、これぞノルマンディの光景なのです。


で、これでミッシェルさんに、タルト・ノルマンドを作ってあげようと思って、作ったんですが、窓のボレー(雨戸)は空いているのに、ドアをノックしても出ないんです。
心配になったんですが、連絡先とか分からないので、翌日、もう一度、覗きにいきましたが、やはり、雨戸はあいている。
普段、雨戸って、外出する時は必ずしめるんですね、一応、田舎とはいえ、ぶっそうだから・・・。
でも、腐らせるわけにはいかないので、反対側のお隣さんに、差し上げました。


今回のタルト・ノルマンドのレシピは、有名なシェフのレシピだから、載せません。ネットなどで、調べて作ってみてください。
お菓子のレシピって、細かい容量が大事になりますから、ぼくのいつものいい加減なレシピだと失敗させちゃう可能性もあるので、えへへ。
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ブリゼ生地(パット・ブリゼ)をつくり、こうやって型にはめます。

カットしたりんごをのせ、砂糖、バターを載せます。お砂糖は、カソナードがいいですね。

何日も雨戸があいたままなので、めっちゃ心配したんですが、今朝、隣から声が聞こえてきました。
覗きに行くと、息子さんたち(とはいえ、ぼくと同年代)と一緒に、チェーンソーで木を切っていたんですよ。
「ミッシェル~」
ぼくが手を振ると、
「あああ、マダム~。久しぶりだねー」
と手を振ってくれました。
あはは。
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生地は準備していたので、急いでタルトを拵え、オーブンで素早く焼いて、持っていったのです。
息子さんと娘さんは、ぼくのことをムッシュと言ってくれましたが、目もちょっと悪く、耳の遠いミッシェル翁は、
「ありがとう、マダム、わざわざ作ってくれたんだねー」
と大喜びだったのです。
ま、ま、・・・。
そのまま、マダムで通した父ちゃんでありました。えへへ。
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辻仁成、次の展覧会は、1月、パリの日動画廊でのグループ展になります。
詳しくは、下の父ちゃんの美術サイトでご確認ください。
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Posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。



