PANORAMA STORIES
フランス田舎暮らし日記、1「暖炉で火をおこす」 Posted on 2025/11/26 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
ノルマンディの冬の朝は眠いし早い。
というのも、太陽が昇る前に、家をあたためることからはじまるからだ。
真っ暗なアトリエの中央に鉄製の暖炉があり(これが、鉄製なのだけれど、古い暖炉なのだ)火のともる、そこらへんでも絵を描いている。
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ガレージに薪が積んであり、それをとりに行く。よっこらしょ。
ガレージはマイナス温度だから、かなり寒い。
大きな薪と小さな薪があり、小さいのに火をつけて、大きいのを燃やす、という仕組みだ。
最初はなかなか火がつかなかった。今は、すぐに出来る。
そうすると、ちょっとぬくくなるので、暖炉の横で、ぼくは絵を描き、三四郎はごろごろしている。



※ この古い道具は、「ふいご」(ベローズ)と呼ばれます。火に空気を注ぎ込む手動式の道具で、空気を送り込むと、ぼわっと、薪の炎が強く燃えあがります。

※ 着火。
で、太陽が昇ったら、三四郎と散歩に出る。
ピッピとポッポ(おしっことうんち)はそこでやらせます。笑。
それから、コーヒーを淹れ、飲みながら、また絵に向かうのだけれど、同時に、今は連載小説「泡」の執筆もやっている。
このバランスが絶妙・・・・。
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これから、しばらくは、アトリエに籠って創作をしないとならない。
パリ、東京、リオンの展覧会があるからで、100点以上は制作する。
小説の連載もあるし、版画もはじめたので、そっちも頑張っている。
版画は、リノグラビュールという種類のもので、なかなか、面白い。
人生は、楽しいことを探して、それを追求することに尽きる。
人里離れた森の中のアトリエだけれど、なんで、こんな場所に辿り着いてしまったのか、不思議でならない。
でも、理屈なんかない。導かれているのだろうな、と思って、今は魂を叩きつけていく。



辻仁成、展覧会情報
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2026年、1月15日から、パリ、日動画廊、グループ展に参加。(辻仁成以外は、Henry Zers, Pierre Lesieur 彫刻のPatrick Blochの3氏)
2026年、11月に、フランスのリヨン市で個展が決まりました。詳細は後程。
東京での個展は、2026年の8月を予定しています。詳細は、待ってね。

Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。



