PANORAMA STORIES
再び、熱血しげちゃんが行く! 1 Posted on 2026/01/07 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
みなさん、覚えていらっしゃいますか?
コロナ禍、まっさいちゅうの2020年、ぼくは元ボクサーの熱血しげちゃんから、「辻さん、オンラインツアーやってください。今ですよ、今!」
と連絡を受けたのでした。
まあ、とにかく、元気の塊で、怖いもの知らずで、若干、生意気、笑。
こんなメールが飛び込んできたんです。
☟
「辻さん、ルーブル美術館とかベルサイユ宮殿とかエリゼ宮とかのオンライン・ツアー、出来ないっすかね? ルーブルに眠るツタンカーメンの棺の前から、ベルサイユ宮殿の鏡の間から、辻仁成が日本中のお茶の間に高画質で生中継したら、みんなびっくり仰天するんじゃないすかね。エリゼ宮でもいいです。エリゼでマクロン大統領と握手したら、日仏友好の懸け橋…」
なにが、日仏友好の懸け橋じゃ、と思うじゃないですか?
この男、なにもの?
「わちし、江戸っ子です」
わたしのことを「わちし」という、まさに江戸っ子ですな。
この男はでも、介護施設のご老人たちにシラス丼を食べさせるツアーをやっていたり、しかも、それはいまだに、続いているんです。万博も、自力で立てないご老人たちをあの大阪万博に連れて行くツアーとかをやってたんです。
でも、熱血過ぎて、最近、噂を聞きませんでした。2020年以降、音沙汰がなかったわけです。
そのしげちゃんから、今日の朝、いきなり、メッセージが届いたんです。
「わちしです。覚えてますか?」
ああ、しげちゃんだ。もちろん、覚えているよ。元ボクサーで、子煩悩で、前のめりで、熱血男・・・。
5重の塔の前で、子供たちを背負って3重の塔をやるような、ちょっと笑えるお父さんでもありましたね。
思い出しましたか?
で、実際、コロナ禍2020年に、ヴェルサイユ宮殿オンラインツアー(父ちゃんが案内役)を実現し、15000人もの日本の皆さんに感動を届けた、あの変なやつ、です!
実は、彼、ずっと元気がなかったんです。ちょっと前に、日記でも書きましたが、別人なくらい、暗く、パワーがない・・・。
「概念を捨てないと。概念にとらわれ過ぎているから、うまくいかないんだよ」
と、父ちゃん、励ましました。
「それが、わちし、何をやってもダメなんです。社員もいるし、家族もいる。考え方を変えないとならないんです、わちし・・・」
いろいろと励ましましたが、笑顔は取り戻せませんでした。
月日は流れます・・・。

ボクサー時代のしげちゃん、熱血ですね。

お父さんになっても、熱血、3重の塔パパでございます!
実は、人づてに観光業がうまくいってない、というのを聞いていたんです。長いコロナ禍でしたからね、オンラインツアーだけじゃ、やっていけなかったんです。
しげちゃんが暗いと知り合いから連絡がきて、心配していたんですが、
「辻さん、わちしです」
と、私と言えない男から、今朝、電話があったんですね。
で、何だろう、と思ったら、ここ数年の苦労を一気に語りだし、それはそれは大変な人生で、大阪万博では、ご老人たちにミャクミャクを見せに行ったりとそれなりに頑張っていたようなんですが、
「あちし、今一つ、熱血がおとろえているんです。何かパワーをください」
というわけです。
わちし、が、あちし、になっているじゃあ、ありませんか。大変だ。
「大丈夫か、熱血しげちゃん」
「辻さん、お願いがあります。あちしに、力を貸してください」
「いいよ。しげちゃんのためなら、なんでもやらせてもらいますよ。ヴェルサイユ宮殿ツアー、楽しかったもんね。また、楽しいことやろうよ」
ということで、話を聞いてあげたのですが、なんと、彼がぼくの個展にあわせてツアーを計画したい、というのです。
「ツアー?」
「辻さんの11月のリヨンでの個展の時期に、辻さんの個展を見学して、食の都、リヨンで美味しいものを食べるツアー、という企画を、あちし、考えたんですが、どうでしょうか」
「あ、なるほど」
「あちしを男にしてください」
「男でしょ?」

父ちゃんが東京に滞在中、しげちゃん、お弁当を差し入れに来てくれたこともありました。
かつてのしげちゃんは熱血で、不可能な企画も、持ち前のパワーで、押しのけていたんです。
「でも、辻さん、試さないで、ダメっていうのじゃ、ビジネスチャンス開けないです。誰もがやらないことをやってこそ、人は感動するし、新しいビジネスの可能性も広がるのだし、観光業壊滅的とかって、言うだけで何もしないの、わちしの生き方じゃないんすよ」
「はぁ? 」
しげちゃん、もう、生まれも育ちも江戸っ子で、私と発音できない。「わちし」と自分のことを言う。めっちゃ東京訛りが凄い。美術が「びじつ」、新宿が「しんじく」、潮干狩りが「ひおしがり」、人が「しと」、必然が「しつぜん」、行きたいが「行きてえ」なのだから、魅力的ですね。
パリに行きてえ、と言われ、思わず腹が立ったこともありました。
ま、それは横においといて、
「しげちゃん、武士に二言はないよ。手伝うよ、リヨンツアー」
ということになりました。
皆さん、11月4日からはじまる、辻仁成リヨン個展に、このしげちゃんが、ツアーを組むということに、なるかも、しれません。まだ、未定ですが・・・。
パリ事務所のスタッフがなんというか、分かりませんし、一応、企画書を見せてもらうことになりました。
「でも、しげちゃん、添乗員は誰がするの?」
「あの、あちし、です!!!!」
おおおお、やる気茶屋。
生で、あちし、が聞けるのは、おもろいなー。あはは。
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熱血しげちゃん、過去記事はこちら
☟
https://www.designstoriesinc.com/panorama/daily-889-1/

とまれ、お待ちを・・・
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ということで、辻仁成展覧会情報
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近づいてきました、日動画廊パリでのグループ展です。1月15日から3月7日まで、・・・。
GALERIE NICHIDO paris
61, Faubourg Saint-Honoré
75008 Paris
Open hours: Tuesday to Saturday
from 10:30 to 13:00 – 14:00 to 19:00
Tél. : 01 42 66 62 86
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それから、8月前半に一週間程度、東京で個展を開催いたいます。
今回のタイトルは「鏡花水月」です。(予定)
タイトルは突然かわることがございますので、ご注意ください。
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そして、11月初旬から3週間程度、リヨン市で個展を開催予定しています。しげちゃんが日本からのツアーも企画中。詳細はどちらも、決まり次第、お知らせいたしますね。
お愉しみに!
Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。


