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孤独が辛いこの頃の老境父ちゃん Posted on 2026/02/09 辻 仁成 作家 パリ

孤独が辛いこの頃の老境父ちゃん

はい、おつかれさまです。
父ちゃんです。
実は、この数日、鬱気味で、なんか、孤独が辛い、という寂しさの中にあり、ノルマンディに籠っているので、友人はいますが、スタッフさんもいないし、三四郎はいますが、なんか、この関係も時に、重苦しいものを連れてくるので、このままだと、老後に不安を覚えないでもないな、と思って悩んでいる父ちゃんであります。
恋愛とかはもう年齢的に無理だし、いろいろな過去の記憶が頭の中で整理できずに横たわっているし、でも、人間だから、笑顔をむけられたいし、優しくされたいし、とか、老後の面倒をみてもらうつもりはないけれど、寄り添えるものは友人であろうと、家族であろうと必要かなとも思いまして、息子も、いい子ですが、彼は今、人生の海原に飛び出そうとして血気盛んなところだし、足を引っ張るわけにもいかないなー、と・・・。
ある種の弱気になっております。
熱血はどこへ行ったのか、ということですよね・・・。
なんか、胃が重いし、頭も痛いんです。いつも、スタッフさんにいろいろとお願いしていますが、みなさん、家族があるので、子育てとか親の介護もあるから、パートナーがいたり、そっちが優先なんで、父ちゃんは、孤独上等と思いながらも、三四郎の世話をし過ぎて、三四郎も過保護になっていくばかりで、ふんふん、要求が多すぎて、昨日は思わず、怒って怒鳴りつけてしまいました。泣。
認知症の始まりは、狂暴化、だそうで、やばいな、認知症になったら、どうしましょう、とフランスの田舎で思う今日この頃です。ひゃああ、老境じゃああああああああああああ!
思ったよりも早い到来に驚くためごろう。

孤独が辛いこの頃の老境父ちゃん

孤独が辛いこの頃の老境父ちゃん



父ちゃんは自然が好きなので、今の唯一の愉しみは、周辺に広がる自然の中を三四郎と散歩することだったりします。
パリにもアトリエ兼事務所があるし、そこで眠れるので、戻れば寂しいことはないのですが、友人もそれなりにいますからね、ただ、都会の喧騒の中に佇むと、なぜか、身体が痛くなるんです。
電磁波とか、科学的な理由はわかりませんが、速度についていけない、というか、ノルマンディの山の中は、寂しいけれど、気の流れがものすごくいいんですよね。
でも、夜になると、急激に寂しくなりますね。押し寄せる加齢にどうやって打ち勝っていくのか、ちょっと考えたいと思っています。
創作はやっぱり、大きな原動力で、ますます、創作力は旺盛になっているので、作品は過去最高のものが出来つつあり、・・・つまり、問題は、孤独、ということでしょうかね。孤独最高、と豪語している人間ですが、マジで、たまに、昔のことを思い出し、心が空洞になるのです。

孤独が辛いこの頃の老境父ちゃん



で、当然、独り言が増えましてね、絵を描きながらも、ずっと、ぶつぶつ、絵に向かってしゃべっているのだから、困ったものです。それを足元で聴いてる三四郎・・・。
アトリエの隣のミッシェルは90歳で一人暮らしですが、ご近所の娘さん夫婦、息子さん夫婦の家に、時々行くし、彼らがしょっちゅう、見回りに来るので、ま、大丈夫。
裏のエブリンおばあさん89歳は、大豪邸に住んでいますが、一人で、時々、垣根越しに、
「ひーさん、何しているの?」
と声をかけてくださいます。
「あなた、昨日の夜、屋根裏部屋の電気つけっぱなしだったでしょ?」
「あ、そうなんです。忘れてました。最近、物忘れがひどく」
老人会話も出来るようになりました。笑。
母親くらいの年齢の女性ですが、毎日、庭いじりをされていて、足腰も丈夫です。ノルマンディのおじいさん、おばあさん、自然と向き合っているので、元気な人が多いですね。ぼくも見習って、庭いじりとかしたいのですが、なにせ、げいじゅつかですからね、創作に集中すると時間がわからなくなります。辛うじて、三四郎が、ごはんの時間になると、くうーん、とないて教えてくれるので、それが一日のメリハリになっている感じ。やれやれ、こんな辛気臭い話、したくないですね~。
老境じゃあああああああああ!
ついにきたぜ、はるばる波を乗り越えて、老境丸じゃあああああああ!
スポーツカーでも買って、フランスの美しいマダムと高速道路をぶっとばしてやりたい、ところですが、現実は、三日前に作ったボロネーゼを冷凍庫から取り出し、解凍し、フライパンをそのまま食器代わりにして、食べている、という、なさけない、現実なのでありました。
しかし、名作はうまれると思いますよ。だからこそ、リア王のような小説が書けると思っています。創作のエネルギーは過去最高なので、この寂しさを作品の中で爆発させてやるしかないですねー。
父ちゃんに老後は必要ありません。つねに、青春の末期、にいるのですから・・・。
えへへ。

孤独が辛いこの頃の老境父ちゃん

お皿に盛りつけると、三四郎が、くんくん、嗅いでくるので、立ったまま食べています。でも、料理は美味しいです。

孤独が辛いこの頃の老境父ちゃん



2026年の父ちゃんの現在地

3月7日まで日動画廊でグループ展に参加中ですので、ぜひ!
電子書籍「海峡の光」
パリのオランピア劇場ライブ盤、各配信サイトで配信中。
3月11日に、文庫「父ちゃんの料理教室」大和書房。
3月18日に、エッセイ集「キッチンとマルシェのあいだ」光文社。
8月5日から三越日本橋本店特選画廊A全面で「辻仁成展、鏡花水月」。
10月、パリ、アートフェア出展の予定
同時期、仏文学イベント、予定。決まり次第お知らせします。
11月、リヨンでの個展、決定。
同月、パリでのライブ、予定・・・。
この頃、小説「泡」刊行予定。
他、予定多数・・・。あくまでも、予定ですが・・・。

自分流×帝京大学

Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。