PANORAMA STORIES

愛犬との会話で始まり終わる一日 Posted on 2026/03/15 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
今日は、ぼくが三四郎にむけて喋っている主な会話(独り言)を列記させてもらいます。もちろん、相手がいて、語りかけているわけですが、相手はもちろん犬なので、返事はありません。彼の気持ち、ご想像ください。

父ちゃん「はーい、おなよう、さんしー。今日も一日がはじまったよ、素晴らしい一日にしようね!」
三四郎「・・・」(尻尾ふってます)
父ちゃん「はい、おいでピッピ(おしっこ)とポッポ(うんち)にいくぞー。うまくできたら、朝ごはんだからね。はい、こっちにおいで、早く」
三四郎「・・・」(嫌がっています)
父ちゃん「さんちゃん、まだ? ぼくだって生きてるんだもんね、すきなタイミングでうんちくらいさせてよ、って思ってない? 寒いから早くしてよ。ポッポしたらごはん。ポッポしたらごはんだよ」
三四郎「・・・・」(頑張る三四郎)
父ちゃん「まず、お風呂だよ。ご飯の前に、足を洗わないと、はい、お風呂行って、お風呂、よーし、待て。動くなよ。すぐに終わるからね。終わったら、ごはんだよ」
三四郎「・・・・」

朝ごはんは、ドッグフード(クロケット)ひと握りくらい(40粒程度)と少なめですが、ガレージの扉をあけて門までの15メートルくらいをボールを父ちゃんが投げ、それをとってくると、一粒貰えるという仕組み、を、40回くらいやります。40×30メートルです。ものすごい速さで走ります。その間、父ちゃんはスクワットをやります。200回くらい、ここでやっちゃえるので、二人の運動タイムなんです。
そのあと、しばらく、父ちゃんはお絵かき、さんちゃんはお昼寝。(犬は17時間くらい寝ます)

愛犬との会話で始まり終わる一日



父ちゃんはガレージのアトリエで大作にむかいます。しばらくするとさんちゃんが起きて来て、父ちゃんの足元に座り、ひたすら見上げます。
父ちゃん「雨降って来たね。やだね、雨だよ。散歩に行けないね。やむの待とうね」
三四郎「うううう、わんわんわん!」
窓の向こうを犬と人が過ったので、吠えだします。いつものことなので、よしよし、吠えるな、うるさいよ、と頭を軽くおさえて、やめさせますが、興奮したさんちゃんは、しばらく、ううう、と獰猛に唸っています。
父ちゃん「お前は、番犬だからな、ここでいつも見張ってるんだ、パパしゃんを守ろうとしているんだよね。偉いな。でも、もういい、うるさいから、吠えるのやめなさい。それに、あれは敵じゃない。もういないし」
三四郎「ううう」
父ちゃん「でも人間はそんなもんじゃない。ミサイルとかぶっぱなして、戦争とかするんだ。ミサイルが撃ち込まれたら、お前なんか木っ端みじんだぞ。そんな目で見ても、父ちゃんも木っ端みじんだから、きゃんきゃん泣くしかないんだ。戦争は容赦ないぞ。ああ、やだな。父ちゃんは戦争嫌いだ。考えたくない」
三四郎「・・・」
父ちゃんは昼ごはんを作ります。三四郎は、足元にくっついて見上げています。見られながら食べるの苦手でしたが、だんだん慣れてきました。でも、ちょっと三四郎のおやつを用意しておいて、落としたふりをして、こっそり与えます。レストランでは欲しがりません。この落としたふりが大事なんです。そして、人間の食べるものはあげていません。長生きしてもらいたいからですが、
三四郎「短くてもいいから、それ食べたいんだよ」
という視線を浴びる父ちゃんでして、いつも、食べ物が喉を通りませんな。

愛犬との会話で始まり終わる一日



父ちゃん「はーい、さんちゃん、おやつする? え、おやつするのか。よーし、おやつやるか」
三四郎「・・・・」

ここで、ドッグクロケット10粒くらいで、またドッグランやって遊びます。その間父ちゃんはスクワット、50回~10回程度。
その後、さんちゃんはお昼寝。
父ちゃんは日記とかエッセイとか書くために、仕事場にあがります。
父ちゃん「はーい、さんちゃーん。散歩に行くよ。散歩終わったら、おやつだからね。ピッピとポッポしましょうね」
三四郎「・・・」
海の方まで散歩します。夏は海で、ボール遊びします。
父ちゃん「あのさ、まっすぐ歩けないの? なんでいちいち、拒否るの? 歩こうよ。他の犬と比べたくないけれど、見てごらん、あの犬、すたすた歩いてるじゃん。あれやらなきゃ」
三四郎「・・・」
他の犬が近づいてきます。三四郎、伏せて待ちます。
父ちゃん「さんちゃん、吠えちゃだめだよ。お友だちだからね」
三四郎「ううう、わん! わんわんわん!」
父ちゃん「こら、さんちゃん! なんていじわるな子なんだい」
相手によって、態度が違う三四郎。大型犬と小型犬には吠えません。
父ちゃん「さんしー、海はきれいだね。夕陽が沈んでいくね。今日もさよならだ。こうやって、毎日が過ぎていく。だんだん、過ぎていくんだ。バイバイ、しよう。明日も会えるように」
三四郎「・・・」

愛犬との会話で始まり終わる一日

ドッグランやって、ご飯食べて、スクワットして、父ちゃんがギターを弾くと、横にお尻をくっつけて、じっと聞いています。流れる静かな時間・・・。
6時になると、とたんに、父ちゃんの足元にきて、
三四郎「ふんふんふん」
と要求します。時計をみると、6時ジャスト、なんとも、腹時計の正確なことか・・・。
夕飯です。手作りの鳥ささみ煮込みをたしたドッグフード46グラムです。冷凍庫から、凍らせた鶏肉を取り出すと、もう、きゃんきゃん、喚きだします。
父ちゃん「わかってるよ、用意してんじゃん」
三四郎「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん」
電子レンジでチンしている間も、
三四郎「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん」
トレイに盛って、犬小屋の前まで、行き、
父ちゃん「はい、お手」
三四郎「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん」
父ちゃん「はい、反対もお手」
三四郎「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん」
父ちゃん「はい、どうぞ」
三四郎「☆◎◇▽✖◎◇」

愛犬との会話で始まり終わる一日

愛犬との会話で始まり終わる一日

愛犬との会話で始まり終わる一日

愛犬との会話で始まり終わる一日



父ちゃん「ちょっと疲れたかな」(ウイスキー飲んでます)
三四郎「・・・」
父ちゃん「じゃあ、ピッピだけしに行くよ。それが終わったら歯磨きガムだ」
三四郎「・・・」
夜の散歩はピッピだけ、そのあと、歯磨きガムがもらえるのです。
父ちゃん「じゃあね、さんちゃん、夜の見張りお願いします。パパは寝ますね。また、明日。ねんねだよ。ハウスでねんね」
三四郎「・・・」(ハウスの中へと入っていきます)
父ちゃんはフランス語をベッドの中で勉強してから、ねんねします。
おしまい。

愛犬との会話で始まり終わる一日

愛犬との会話で始まり終わる一日

父ちゃん作「天下無双のポルケッターメン」のチケット発売スタートとなります。炙りポルケッタ―ハンもサイドディッシュでございます。笑。父ちゃんがここ数か月、開発苦心した新型欧風ラーメン一号ですので、新横浜のラーメン博物館で開催される「対麺」イベントでご試食できますので、どうぞ。400食、限定ですので、よろしくお願いします。詳しくは、こちらのHPから、どうぞ。

https://note.com/preview/n140dda70d0e6?prev_access_key=dbd8f2a5eeaaee47588a0d7e01e2e747

愛犬との会話で始まり終わる一日

帝京×パリ・オンラインアートカレッジ



Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。