PANORAMA STORIES

三四郎との対話、2 Posted on 2026/04/12 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
今日も三四郎と一緒です。笑。
最近、4歳になったからか、持論を展開する、三四郎です。
「パパしゃん、今日は何、食べる気?」
「何にしようかな、毎日、献立考えないとならないから、人間は大変なんだよ」
「ぼくはいつも同じドッグフードだから、そういう苦悩はないけど、逆に、選べる自由、羨ましいよ」
冷蔵庫を漁って、あるものでだいたい決まる日々の献立です。
「牛豚合挽ひき肉発見、そして、玉ねぎ、レモン・・・。なるほど、これで何が出来るでしょ?」
「知らないよ。どうぜ、ぼくは食べられないんだから」
犬との暮らしでいちばん辛いのは、父ちゃんが食べているのを、下からじっと見られることです。食べ終わるまで、ずっと・・・。
一時期は、食事の時間、三四郎を別の部屋に閉じ込めたこと(自分がどこかに籠って隠れて食べたり)もあったのですが、それもかわいそうですよね。そうすると、下からじっと見上げてくるんです。
「ねー、何、食べてるの?」
そういう視線を毎日、感じています。
身体をそむけて、ばくばく食べる父ちゃん。三四郎はテーブルを一周して、反対側から、ぼくの視線に飛び込んできて、また、じーっと見ます。
「美味しそうだね」
「見るなよ」
「だって、目に飛び込んで来るんだもの。見ちゃうでしょ」
美味しいものが喉を通りません。長生きできないかも・・・。

さて、今日は何を作ろうかしら。

三四郎との対話、2

三四郎との対話、2

とりあえず、ニンニク、唐辛子、アンチョビ、にオリーブオイルの香りを移してから、そこで、玉ねぎを炒めます。
玉ねぎが、小麦色になってきたら、豚ひき肉を投入し、火が入ったところで、赤ワインをひたひたになるまで、注ぎました。
「あ、わかった。また、パスタでしょ? 合挽き肉のラグーのパスタじゃないか、と思うんだけど、どうですか? 当たっています?」
う、見抜かれている。
「この感じだと、生クリームとか、ここらへんでいれなきゃダメじゃないの?」
「うるさいな。指図するな」
「ブラックペッパーをたくさん、入れたら美味しくなるよ思うよ。でも、レモンどうするの? いや、レモンと赤ワイン煮込みのラグー肉の相性は悪くないはずだよ。たくさん、入れてみて!」
「だから、うるさいんだよ。頼むから。ハウス!」

父ちゃんに文句を言われて、ひねくれた三四郎は、自分の家(ハウス)にいったん、退散します。
「ちぇ、つまらないなー」

三四郎との対話、2

三四郎との対話、2

レモンは、パスタが茹であがってから、一緒に、投入してみました。
レモンの酸味が、きっと決め手になるはずです。悔しいけれど、三四郎の言う通り・・・。
たっぷりレモンを絞って、パスタとラグー肉と、絡めます。
おお、いい感じになってきた。

三四郎との対話、2

じゃあ、盛り付けます。
「いただきます」
一口、食べてみたら、おおお、美味しい。
思わず、口角が上がります。
「うわ」
笑顔で食べていたら、その視線の先に三四郎が・・・。
じっと、父ちゃんの顔を見ているじゃありませんか。
「ひゃああ、美味しいものが喉を通らない」

こういう時のために、犬の骨のかみかみを用意しておくといいですよ。それを三四郎には与えて、なかなか噛み切れない骨型のおやつなので、ぼくが食べている間、さんちゃんも骨にありつけて、静かな辻家なのでした。
もちろん、骨のおやつは、父ちゃんが食べ終わったら、取り上げます。大きな骨のおやつなので、ぜんぶ食べたら大変な量になるからね。
ふふふ。
幸せな辻家の一場面でした。
えいえいおー。

三四郎との対話、2

三四郎との対話、2

三四郎との対話、2

近況のようなもの。
「歌う詩人」ですが、メンバーがとりあえず、決まりました。ベースが、オランピア劇場ライブに登壇したホセ・ケンタウロス・スズキさんです。パーカッション&ドラムが、いつもお馴染みの山下あすかさんです。とりあえず、トリオでしばらく活動をしますね。「歌う詩人」もよろしく。
ってか、ライブやるのか? 
あ、パリのライブが決まりました。最終確定は週明けですが、11月8日になります。カフェ・ド・ラ・ダンスという素晴らしい会場で、フランス人バンドのエバーマインズと対バンです。新曲「東京デイズ」を彼らと一緒に演奏できるかどうか、週開けに、ご報告しますね。
夏の個展は、8月5日から、11日まで、三越日本橋本店、6階の特選画廊にて。どんな作品か、一部がサイトに上がっています。
☟ こちらをクリックして、ご覧ください。

辻仁成 Art Gallery

三四郎との対話、2

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三四郎との対話、2

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。