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フランスとギンガムチェックの素敵な関係 Posted on 2024/03/10 ルイヤール 聖子 ライター パリ

 
フランスのキッチンで見かける可愛いものの一つに、「ギンガムチェック柄」があります。
テーブルクロス、キッチンカーテン、トーション、そしてピクニックの敷物まで、あの赤と白の素朴な柄を見ていると、フランス人と同じようにあたたかい気持ちになったりします。
 

フランスとギンガムチェックの素敵な関係



 
ファッションより、キッチングッズにたくさん用いられているフランスのギンガムチェック。
家庭はもちろん、ビストロのテーブルクロスにもよく使われるこのギンガムチェックは、フランス語で「ヴィシー(Vichy)」と言います。
実はヴィシー(Vichy)とは、中央フランスにある街の名前です。
おいしい水と温泉でとても有名なヴィシーは過去、繊維産業でも活況を呈していました。
19世紀にはナポレオン3世が皇后と一緒にヴィシーの紡績工場を訪れています。
皇后と侍従たちはそこでギンガムチェックの綿織物に一目惚れをしたそうで、大量の生地をトランクに詰めて持ち帰り、後のパリで大流行させました。
ギンガムチェックがフランス語で「ヴィシー(Vichy)」と呼ばれる理由は、ここにあります。
 

フランスとギンガムチェックの素敵な関係

 
ヴィシーの豊かな水を使った「パスティーユ」というお菓子も有名です。
ヴィシーの温泉水を蒸発させて作ったパスティーユには、ミネラルを含む塩のほか、ミントやアニスの風味が加わっています。
そのお菓子を詰める缶もまた、可愛らしいギンガムチェック柄をしています。
こうしてヴィシーと言えばギンガムチェック、ギンガムチェックと言えばヴィシーというようにフランスでは考えられています。
 

フランスとギンガムチェックの素敵な関係



 
ブリジット・バルドーの着用効果で、キッチンからワードローブへと活躍の場を移したギンガムチェックでしたが、それでもキッチンから姿を消すことはありませんでした。
ギンガムチェックのテーブルクロスはその中でも特にフランス的だと言えるでしょう。
クラシックなビストロではこの柄のテーブルクロスがトレードマークだったりもします。
フランス人はそんなギンガムチェックのテーブルクロスを見て、「パピーやマミー(おじいちゃんやおばあちゃん)の家を思い出す」のだそうです。
丈夫で洗いやすい生地、そして陽気でハッピーなデザインが当時では人気だったといいます。
テーブルクロスに「歓迎」の気持ちが込められているフランスでは、ギンガムチェックがこうしてテーブル周りの必需品となっていました。
 

フランスとギンガムチェックの素敵な関係



 
もちろん、ギンガムチェックは今でもフランスで愛されています。
ただ今は過去のトレンドが再流行していることもあって、ギンガムチェックのテーブルウェアにちょっとした刺繍が施されていたりします。

フランスのジャム、「ボンヌママン」の蓋もギンガムチェック柄で有名ですね。
これは昔、手作りのジャムにテーブルクロスの余り生地がかぶせられていたことから来ているそうです。
 

フランスとギンガムチェックの素敵な関係

※ボンヌママンのジャムの蓋と、ギンガムチェックのトーション。

 
また赤と白のギンガムチェックは、フランス人の大好きなピクニックにも欠かせません。
確かに、ピクニックで使う敷物や保冷バッグにはギンガムチェック柄がよく使われています。
フランス人の方もピクニックで連想するものといえばやはり、この「ギンガムチェック」なのだそうです。
そんな可愛らしいギンガムチェックには、分かち合い、あたたかさ、リラックス感、そして幸福の意味が込められています。
これも家族・仲間との食事時間を大切にする、フランスらしいチョイスだと思いました。
 

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Posted by ルイヤール 聖子

ルイヤール 聖子

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2018年渡仏。パリのディープな情報を発信。
猫と香りとアルザスの白ワインが好き。