PANORAMA STORIES

断崖の街エトルタ、アルセーヌ・ルパンを巡る冒険 Posted on 2019/07/23 小川 裕子 トラベルコーディネーター フランス北西部ノルマンディー地方

その舞台はノルマンディー地方の断崖絶壁の景勝地エトルタ。大自然が作り出した絶景は、クロード・モネをはじめ多くの印象派画家を魅了した。そして画家だけでなく数々の小説も生まれた。代表的な作品といえばモーリス・ルブラン作「怪盗紳士アルセーヌ・ルパンシリーズ」、その中でもこのエトルタが舞台になった「奇巌城」ではないだろうか。今回実はこの『アルセーヌ・ルパン』を通し、日本とノルマンディーを繋げる事が出来た。「愛に国境はない」という言葉はよく聞くが、まさに『アルセーヌ・ルパン愛に国境はない』ことを肌で感じたストーリーをご紹介したいと思う。
 

断崖の街エトルタ、アルセーヌ・ルパンを巡る冒険

エトルタの断崖

ストーリーの始まりは、幾重にも重なった偶然の出会いだった。エトルタには「怪盗紳士アルセーヌ・ルパンシリーズ」の生みの親モーリス・ルブラン氏の記念館がある。今は記念館となっているが、ここは彼が1915 年から賃貸で住み始め、その後1918年に邸宅を購入し、多くの作品が生まれた場所なだけに『アルセーヌ・ルパン愛』に深い方にとっては聖地のような場所だ。

2018年3月「ルパン荘 Le Clos Lupin」がノルマンディーの旅番組で紹介されていたのをSNSで流したところ「怪盗ルパン伝アバンチュリエ」の漫画家 森田崇氏と出会った。森田氏の原作の作品に対する情熱とその思いを現地に届けたいという思いに感銘を受け、今度はエトルタにあるルパン協会の扉を叩いてみた。正直重い扉だと思っていたのだが、なんとこれがスムーズに開き、さらなる展開が広がったのだ。
 

断崖の街エトルタ、アルセーヌ・ルパンを巡る冒険

ルパンの隠れ家

ルパン協会は1985年に文学協会として設立された協会で、活動の拠点はエトルタにある。今現在副会長としてノルマンディー地方でアルセーヌ・ルパンの普及活動をしているパトリック氏はルパン愛好家歴50年。「僕の別の名は*イジドールなんだ」(*イジドールは物語に出てくる高校生で奇巌城の謎を解き 明かした少年)というほど、ルパン愛に深い方だ。胸元にはポケットサイズの本を入れ、彼のガイドでエトルタのアヴァルの断崖を登ると、その話の面白さに自然と回りに人が集まってくる。この方なら森田氏の思いを受け取ってくれるかもしれないと感じまずは思いを伝えてみた。すると「森田氏が来る時には是非声を掛けて欲しい」と有難い言葉を頂き、5月の初対面から約3か月後の8月末にこのお二人をお繋ぎすることが出来た。

8月のお二人の出会いは『アルセーヌ・ルパン愛』に溢れるシーンばかりだった。最初は少し照れていた パトリック氏も森田氏の気さくで朗らかな様子に緊張も和らぎ、二人は少年のようなまなざしになっていた。

「ルパン荘」では、「奇巌城」に出てくる暗号が飾ってある部屋がある。自称「イジドール」を名乗るパトリック氏にとっては、この暗号にまつわる話を森田氏に伝えたい、と色々説明をしてくれた。奇巌城は 読んだものの、頭にすべて入るほど分かっていなかった私は、少しずつその説明を森田氏に伝えようとした。とその時、同じ内容の話が森田氏の口からも出たのだ。聡明な森田氏だからフランス語の理解度も早いのか?と一瞬思ったほど、森田氏が私に通訳をしてくれているような気分だった。

同時にこれがまさに『アルセーヌ・ルパン愛』なのだろうなと肌で感じた瞬間だった。
 

断崖の街エトルタ、アルセーヌ・ルパンを巡る冒険

暗号・ルパンの隠れ家内

私もフランス社会に飛び込んだ時は、自分の好きなスポーツがきっかけとなり扉を開くことが出来た。誰もが通過する道ではあるが言葉の壁もあり、上手く伝わらなくて悔しい思いも沢山した。諦めてきたことも沢山ある。でも思い切って扉を開き、新しい世界へ踏み入れるとその先には大小さまざまな「お宝」があった。その中には目には見えない「感動」というお宝もあった。

今年9月日本のルパンファンとノルマンディーのルパンファンが初めて顔を合わせるツアーがある。きっと参加者一人一人がエトルタでお宝を見つける旅になるだろう。
 

断崖の街エトルタ、アルセーヌ・ルパンを巡る冒険

ルパンが登場する『奇岩城』のモデルとなったエトルタ海岸の針岩

 
 

Posted by 小川 裕子

小川 裕子

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hiroko ogawa
トラベルコーディネーター
フランス北西部ノルマンディー地方在住の旅コーディネーター。2007年よりノルマンディー地方在住。フランス労働省認定 観光カウンセラー免状保持。ノルマンディー地方にて現地の方との触れ合いを大切にした旅もコーディネートしている他、旅番組や雑誌、ガイドブックなどへノルマンディーの魅力をお伝えする活動を展開中。