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異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」 Posted on 2023/02/20 辻 仁成 作家 パリ

今日はお菓子についてのお話。
フランスのケーキや焼き菓子は美味しい。
でも、世界各地にはフランスのお菓子に肩を並べるような美味しいものがたくさん、あります。
今日はモロッコで出会った焼き菓子についてお話しますね。
モロッコは渡仏後、イタリアやスペインに負けないくらいよく旅で訪れた国です。
さて、モロッコ菓子とはどんなもの?

もちろん、アラブのお菓子は、パリでも普通に買えるのですが、一度と美味しいと思ったことがなかったのです。
行きつけのとっても美味しいモロッコ料理のお店でもデザートだけはいつもパス! だって粉っぽくて硬くてちょっと湿ってるし、はちみつの味しかしないんですもの、ね~(笑)。

ところが、カサブランカで仲良くなったドライバーのアディールさんに連れて行ってもらった有名店、Patisserie Bennis Habousでその神髄に初めて触れさせて頂き、ノックアウト! わ、めちゃ美味い!
 

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

アディールさんの後をついていくと、スーク(市場)の奥まった路地の途中、ちょっと怪し気で尻込みしそうな場所にその店はありました。

店の前に、工房があり、ちょうど焼きあがったお菓子が竈から出て来るところでした。お菓子屋さんの方は昼間だというのに意外にも男性客で溢れかえっています。
いい年のおやじさんたちがお菓子を物色しています。(こちらの男性はお酒を飲まない、宗教上の理由で飲めない人が多く、だからお菓子に走るのでしょうか?
それともお菓子を買うのが男の仕事なのかな?)
 

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」



異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

売り子さんがやって来て、出来上がったばかりのアーモンドの焼き菓子をくれました。
くれたというか、口にいきなり押しこまれたというか。仕方なく反射的に食べたら、うわ、っ、と思わず声が飛び出し、そこにいたおじさんたちに笑われてしまいました。
なんと、その焼き菓子、私の口の中で溶けてしまったのです。本当です。見かけはビスケットみたいな丸い形の焼き菓子、「アクバ」という名前。
パリで同じものを食べてもきっと溶けたりはしません。でも、この店のお菓子は本当に口の中で一瞬にして崩壊し、消えてなくなり、甘く上品なアーモンドの味を口腔に残すのです。

初めての経験でした。これが、アラブ菓子の実力だったのか…… 知らなんだ。
 

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

アディールさんがアラブ菓子初心者の私にいろいろと教えてくれました。

「この焼き菓子が一番人気なんだよ。あ、この葉巻みたいなものも人気あるよ。触感がそれぞれ違うんだ。欧米のお菓子のように生クリームたっぷりというものは一つもないけれど、どれも味わい深いだろ?」

うーん、本当に美味しい。研究熱心な私はメモ帳を取り出し、一つ一つのお菓子の作り方や材料などを聞き取りました。そして、大箱を二つも買ったのです。なんでも二週間近く持つのだとか。買って帰らない手はありません。ご近所の人たちにも分けて差し上げたいと思ったのです。いい迷惑ですね(笑)。

お菓子屋さんの箱を持ってホテルに帰ると、フロントマンたちに、そこのお菓子はモロッコ一美味しいんだよ、と言われました。知っているよ、と私は自慢をしました。
ええ、今ではすっかりアラブ菓子の大ファン。近い将来、私もアラブ菓子を自宅で再現していることでしょう。もちろん、レシピはWEBで!(笑)
 

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」



異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

さて、それでは、日本では馴染みの薄いアラブ菓子について簡単なレクチャーをやりましょう。
作り方も簡単。西洋のクッキーに飽きたら、ぜひ、アラブの焼き菓子をお試しください。
 

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

アーモンドのアクバ 
ほろほろと口の中で溶けていく! アーモンドとオレンジフラワーの香りが広がるお菓子。
 

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

コルヌ・ド・ガセル 
「ガゼルの角」という名の代表的なアラブ菓子。ほろっとした食感でオレンジウォーターで風味付けられたアーモンドのペーストが入っている。
 

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

ピスタチオのプチフール
アラブ菓子といえば! の、アーモンドとピスタチオがたっぷり詰まったお菓子。
 

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

シガール 
アーモンドペーストをフィロ生地で巻いて焼いたもの。薄いフィロ生地がサクサクで中はしっとり。
 



異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

ブリワット 
アーモンドのペーストをフィロ生地で包み揚げ、蜂蜜をたっぷりかけたもの。美味!
 

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

ココナッツのゴリーバ 
ココナッツたっぷりのさくさくモロッコクッキー。
 

異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

ゴリーバ 
さくさくした食感のモロッコクッキー。家庭的で素朴な味。
 
 



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異邦人旅日記「一度は食べたいアラブ菓子のすべて」

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いかがでしょうか? 笑。

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自分流×帝京大学

Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。