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「それでも、小説家になりたい人への三つの助言」 Posted on 2022/03/29 辻 仁成 作家 パリ

どうしても小説家になりたいのですが、方法を教えてください、と質問されることがたまにあります。
小説家になりたい方にとっては切実な問題なのです。
しかし、小説家になるための方法というものは果たしてあるのでしょうか?
そもそも小説家という職業が成立している方がこの世にどのくらいいるのか、ぼくにはわかりません。
あまり多くはないでしょう。
別に、筆だけで生きていかないでも、作家にはなることが出来ます。なので、定義として小説家とか作家にどこまでこだわるかで、それを現実的に手に入れられるかどうかがまた違ってくるとは思います。
大切なことは、自分は作家だ、と胸を張って言えることでしょう。
そのために、何よりも精力を注いで生きている方は、みんな小説家ではあるわけです。
「誰でも一冊は小説を書くことはできる」というのを聞いたことがありませんか?
つまり、小説を書き続け、出し続けられるかどうかで、真の作家かどうか、は問われるのだと思うのです。
何事も続けることが大事ですから、これは小説道だけに限ったことではありません。
物事の基本です。
小説には、この基本がとっても大事だということだけは、言うことが出来ると思います。
周囲の期待や批判などに関係なく、歯を磨くように、書くこと。書ける時に書くこと、書けなくても書くこと。
これに尽きます。

もし、あなたが小説家になりたいのであれば、
たいへん、差し出がましいようですが、三つの助言があります。
 



その1
まずは周囲の意見を(これも含め)気にせず、どんどん書いてください。
小説は誰かに習うものじゃない。読んで学ぶものです。いい本を朝から晩まで読んでいれば文学がわかるようになるし、一日中、人一倍、書いていればだれでも文章はうまくなります。
小説学校もいいと思いますが、型に出来るだけはまらないことが、小説家の存在意義ではあるので、その辺のバランスが難しいところです。
あなたにしか書けないテーマはあなたにしかわからないのだ、と意識しながら、取り組むのがいいでしょうね。
鬼のように書き続け、新人賞などに送り続けてください。自分の腕試しと、編集者探しに新人賞が最適なのは間違いありません。
チャンスを掴んだら、編集者にくらいついて、書き続けてください。

「それでも、小説家になりたい人への三つの助言」



その2
信頼できる優秀な編集者を一人つかまえてください。
ここからは信頼した編集者の助言に耳を傾けてください。その人が「よくない」と指摘した箇所は悩んででも直してみましょう。我を押し通すことも大事ですけど、大家が成長しないのは、編集者の発言を受け付けなくなるからです。作家以前は周囲に囚われずひたすら書き続け、作家以降は編集者の助言にちょっと耳を傾け書き続けましょう。

その3
一冊や二冊は誰でも書けるので、うぬぼれないでください。
本当の評価は生きている間には出ないと思って書いてください。がむしゃらにやみくもに書き続けてください。
死ぬまで過去作を懐かしがったり、安易に振り返らないでください。仮に死んでも、次の一行を書くのだ、と思い続けてください。

以上です。
 

「それでも、小説家になりたい人への三つの助言」



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Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。