PANORAMA STORIES
芸術の丘、モンマルトル巡る Posted on 2024/11/30 堀内 ありさ 学生 サンジェルマン・アン・レー
かつて多くのアーティストたちに愛された芸術の丘、モンマルトル。キャバレーやダンスホール、飲み屋などが並ぶ賑やかな歓楽街に魅せられた芸術家たちは、19世紀末、パリ北部に位置するこの地にこぞって移り住んできた。古き良き時代と謳われたベル・エポックの雰囲気を、今も私たちはルノワールやゴッホ、ロートレックらの残した作品から知ることができる。私がまだフランスに来て間もない頃に訪れた、モンマルトルの観光地巡りに少々お付き合いいただきたい。
ブランシュ駅を降りると、あの伝説のキャバレー「ムーラン・ルージュ」がすぐ目の前にあった。昼間だったからなのか、思っていたよりひっそりとして見えたが、正真正銘、フレンチ・カンカン発祥の地。画家ロートレックは、ここに通い詰めては踊り子たちをたくさんスケッチしていたんだったっけ。
サクレ・クール寺院まで行く途中、ジュテームの壁とやらに遭遇。ジャン・リクチュスという小さな広場にある建物の壁に、300を超える言語で「愛してる」が綴られている。ちゃんと日本語もあって嬉しい。告白スポット?ということらしいけど、小さな壁の前は観光客でごった返しているので、ここで愛を告げるのはちょっと難しそう笑。
壁のすぐ隣では小さなブロカントが開かれていた。ブローチの集団に即一目惚れ。きゃあ〜不意打ちすぎる。思えばここが初めてのブロカントとの出会いだったかもしれない。結局誘惑に負け、かわいいバレリーナの女の子を購入。1個10ユーロ。高額なわけでもないが、安くもないお値段。ああ、フランスにいると物欲を抑えるのが大変。特に蚤の市やブロカント。四方八方、溢れんばかりの素敵なものたちに囲まれるので、要注意。
そして目的の場所に到着。言わずと知れた、サクレ・クール寺院。「聖なる心臓」を意味するこの寺院は、パリ一高いモンマルトルの丘の上に聳え立つ。太陽の光を受けて白く輝くその様子に、思わずため息が出た。雲間からのぞく青い空と寺院の白、緑の芝生のコントラストが、ただただ美しい。
寺院は1870年の普仏戦争で犠牲になった兵士たちと、後に政府軍との衝突で全滅したパリ・コミューン(パリの労働者政権)の市民たちを弔うために造られた。234段の階段を登った先にあるドームの展望台には行かなかったが、そこから見えるパノラマは絶景らしい。
寺院を出て数分歩くと、絵描きの集まるテルトル広場に出る。自分の作品を売っているプロの画家たちや、似顔絵を描いてもらっている人たちがたくさん。後ろから覗き込んでみると、おおお、写真と見紛う緻密さで、思わずモデルさんの顔と交互に見比べてしまった。びっくりするくらいそっくり!他にもモダンアートっぽいものから、ちょっと風刺画チックなものまで、実に色々な絵描きさんが集っていた。モンマルトルは今や完全に観光地と化してしまっているけれど、こういう芸術広場のようなところ、少しでも昔の名残をとどめているのかな。
この間、オルセー美術館で観たルノワールの『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』。人々が集まり談笑し合う賑やかな様子は、今も変わっていない。
カフェでギターを弾くムッシュ。絵画だけじゃなくて、音楽も至るところに溢れている。
でもなんと言っても、この日のハイライトは間違いなく、これ。テルトル広場を出た瞬間、どこからともなく私の知っているシャンソンが聞こえてきた。歌声の聞こえる方に歩いていくと、かっこいいお姉さんがPink MartiniのJe ne veux pas travaillerを歌っているではないか〜!唯一私がフランス語で歌える大好きな曲。日本の大学でフランス語の勉強会をしていたときに、友達が教えてくれてからすっかり気に入ってしまい、フランスに来る前に歌詞も頑張って覚えたのだった。それをモンマルトルで聴けるとは!さすが芸術の街、嬉しくて感激だった。
他にも、有名な壁抜け男の像と一緒に写真を撮ったり、ユトリロも描いたラ・メゾン・ローズを見たり、映画『アメリ』のカフェに行ったりと(ミーハーなので、ちゃんとクレームブリュレを頼んでコンコンしてきました笑)、ザ・観光コースを満喫した1日となった。丘の上でアートや音楽に触れ、芸術の風に吹かれるのはとても気持ちがいい。まだまだ知らない魅力がたくさんありそうなモンマルトル。次はどんな出会いが待っているのか、近いうちにまた探索に出かけたい。
Posted by 堀内 ありさ
堀内 ありさ
▷記事一覧大学4年生、文学部。フランス、サンジェルマン・アン・レーに交換留学(2024-2025)。
ピアノと外国の児童文学が好き。