PANORAMA STORIES

アムステルダムの中心に佇む秘密の中庭 ベギンホフ Posted on 2017/12/30 まきの ななこ ライフスタイルキュレーター アムステルダム

2017年もめまぐるしく過ぎ去り、残すところあとわずかとなってしまいました。
毎日一所懸命に生きていると、楽しいことはもちろん、逆に参ったなーと落ち込む日があるのは、日本にいても海外で生活していても同じこと。
今年最後のエッセイは、そんな私の ”マイッタ!” 時の駆け込み寺のような存在である、アムステルダムのとっておきの秘密の場所をこっそりと(笑)ご紹介したいと思います。

その場所の名はBegijnhof(ベギンホフ)。名前からお察しがつくように、起源はベギン会という中世ヨーロッパで誕生した半聖半俗の女性のみの集団居住地のことです。14世紀につくられたと言われているこのアムステルダムのベギンホフには、美しい中庭を囲み今でも多くの女性たちが生活をしているそうです。
 

アムステルダムの中心に佇む秘密の中庭 ベギンホフ

もともとはカトリックだったものの宗教改革によってプロテスタントに改宗を余儀なくされた結果、メインである礼拝堂は明け渡すことになりますが、住居は女性たちの私有財産だったために存続したそう。のちに住宅ファサード裏にはいわゆる ”隠れ教会” なるものもつくられ、今でも見学することが可能です。
 

アムステルダムの中心に佇む秘密の中庭 ベギンホフ

アムステルダムの中心に佇む秘密の中庭 ベギンホフ

14世紀という時代において、ベギン会の女性たちには結婚や労働、教育の自由もあり、ある意味とても進歩的な女性のネットワーク共同体だったと言えそうです。オランダの女性はその頃から逞しかったのだろうなぁと容易に想像がつき、我が身を奮い立たせたりもしてみます。

敷地のすぐ横をトラムが走り抜け、周辺にはレストランやカフェが所狭しと立ち並び、ショッピング天国の目ぬき通りにも程近いというアムステルダムのど真ん中に位置しながらも、外の喧騒が嘘のようなこのベギンホフ。
 

アムステルダムの中心に佇む秘密の中庭 ベギンホフ

小さな扉を抜けて中に入ると、そこにはアムステルダムで現存するふたつの木造家屋のうちのひとつが残っていたり、当時はまだカナルがなかったことからこの一角のみ周辺より1メートル低い場所に建てられているせいか少し冷んやりとした澄んだ空気の中、よく手入れの行き届いたガーデンが広がり、あたかも中世ヨーロッパにタイムスリップしたような特別な雰囲気の宝石のような場所が広がっています。
 

アムステルダムの中心に佇む秘密の中庭 ベギンホフ

アムステルダムに現存する木造家屋のひとつ

 

アムステルダムの中心に佇む秘密の中庭 ベギンホフ

中庭を囲む家々には今でも人が住んでいるので、静かにしてくださいとの注意書きがところどころにあったりしますが、多分、此処にひとたび足を踏み入れれば自然と声のトーンは下がり、ざわざわしていた心が穏やかにひけていくのを感じることができるはずです。

華やかなイルミネーションやパーティー、クリスマスソングに囲まれて過ごすことが多いこのシーズン。日々の忙しさや享楽に流されていた自分に、ちょっと喝を入れたり、ブレない心を取り戻したり。新年のお参りのような感覚で、私は来年も ”ベギンホフ詣出” で新しい一年をスタートすることでしょう。
 
 

アムステルダムの中心に佇む秘密の中庭 ベギンホフ

Posted by まきの ななこ

まきの ななこ

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Nanako Makino
ライフスタイルキュレーター。シカゴ、東京、モスクワ、ロンドン、、、一期一会に生かされて。新しいホテルやブランドなどの立ち上げに携わりながら様々な都市を巡り、2014年よりアムステルダム在住。オランダ語見習い中。放浪癖あり。