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「大麻とフランスの子供たち」 Posted on 2020/02/14 Design Stories  

日本では今日、歌手の槇原敬之さんが覚せい剤所持の疑いで逮捕された。沢尻エリカさんの裁判が話題を集めたばかりだった。芸能界の麻薬汚染の話題が尽きない。一度、薬に手をつけると田代まさしさんじゃないが、なかなか復帰するのが難しい。薬物のバイヤーは経験者を手放さない、と聞いたことがある。パリにもそこら中にバイヤーがいる。

17歳のジョゼフ(仮)がイタリア人の母親とイタリア滞在からフランスに戻ったところを空港で警察に呼び止められた。ポケットからカナビス(大麻)が出てきた。何も知らなかった母親は憔悴してしまい、警察は「こんなにお母さんを悲しませちゃダメだろ、ちゃんとお母さんを連れて家に帰りなさい」と叱って帰らせた。フランスでは個人がマリファナを少量所持することには厳しくない。(THCと呼ばれる大麻に含まれる成分が0.2%以下であれば合法)逆に売買は厳しく罰せられる。

この辺のところを詳しくフランスの子供たちに訊いてみた。フランスでは子供たちに麻薬の恐ろしさを早い時期から教えているのだそうだ。中学にあがるとまもなく警官が学校にやって来て、タバコや大麻についての話をする。匿名でアンケートまでとらされる。そのアンケートには、
ーなにか吸ったことがあるか?(タバコに限られていない)
ー1日に何本吸うか?
ー何を吸っているか?
などと、具体的に書かれてある。

フランスでは14歳の子供の約半分がタバコ、もしくはカナビスなどの大麻を吸ったことがある。ちなみに、オランダをはじめ、ヨーロッパでは(各国で条件が違うが)17カ国で大麻が合法とされている。スペインにおいては自宅で栽培することまで認められている。プライベートな空間で楽しむ分には認めているという国が多い。イタリア、フランスの若者は大麻の大量消費者なのである。

フランスでも大麻を合法にするか否かの議論は続けられているが、今のところは非合法のままである。(大麻を合法化するとワインが売れなくなるという経済的な理由もあるらしい)しかし、大麻所持で警察に捕まったとしても、それが初めてで、少量であれば、今回のジョゼフ君のように怒られて終わり。大麻に関しては、使用、所持、売買と分けられており、個人使用のための少量所持であれば見逃される。しかし、たとえ個人使用であっても売買となると、途端に刑は重くなる。警察がやっきになって探しているのは薬のバイヤーたちである。

「大麻とフランスの子供たち」



13から16歳でも大麻の常習、大量所持や密売をした場合は懲役1年、最高で3750ユーロ(約45万円)の罰金。16歳から18歳では大人と同様の罪が課される。懲役5年、最高で75000ユーロ(約900万円)の罰金。また、売った相手が18歳以下の未成年だった場合は特に刑が重く、懲役10年、 なんと最高で7 500 000 € (約9億円!)の罰金となる。大麻の常習者かそうじゃないか、を見極めるのは難しい。フランスの若者たちの間ではとくに大麻が出回っているが、法律があるので、タバコのように吸っている人はいない。でも、様子を見ていると明らかにやっているという人はわかる。

パリ中心地にもバイヤーが集まる場所が数多くあり、それは意外なことに、中学校や高校(特にお金持ちの子供が通う)の近くだったりする。子供たちは幼い頃から、親に、街角や公園に佇む怪しい男たちがそこで何をしているのか、教えられている。親は自分の子供たちが人生を踏み外さないよう、幼い頃より、子供たちにきちんと説明をしている。でも、タバコはもちろん、大麻をやるのも、自己責任となる。中学、高等学校の校門前では堂々と煙草を吸う子供たちが屯していて、その横を教師たちが普通に歩いている。

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デザインストーリーズ編集部(Paris/Tokyo)。
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