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日本とこんなに違う、フランス人の香水のまとい方・選び方 Posted on 2024/01/10 ルイヤール 聖子 ライター パリ

 
3年くらい前のことだったと思います。
真冬、パリ右岸のカフェでお茶をしていたら、とてつもなく良い香りを伴った給仕さんが目の前に現れました。
性別はニュートラルな感じで、20代前半くらいの若者でした。
私は勇気を出して「どこの香水ですか?」と声をかけ、頂いた香水の情報をしっかり書き留めてカフェを後にしました。

その方が使っていた香水は二つ。
1970年発売の古いものと、近年発売になった新しいものをミックスさせているとのことでした。
しかも誰に言われたわけでもなく、自分で編み出したと彼(彼女)は言います。
フランスの一大産業に、香水があります。
こうして香水のメッカに住むフランス人は、香りのまとい方も自由で個性があって、少しアーティスティックな一面があります。
ちなみに私はそのまとい方を真似てみたのですが、自分にはまったく似合っていませんでした。
ということで、「フランス人は自分に似合う香りとそのまとい方を熟知している」といった感想を私は持ちました。
ただフランスにも香水をつけない人はいるので、ここからは香水を日常的にまとっている人、に限ってお話をすすめていきたいと思います。
 

日本とこんなに違う、フランス人の香水のまとい方・選び方



 
パリのデパート、香水ブティックにはずらりとフレグランスが並んでいます。
見ていると、ずらっと並べられた試供ボトルの前で、フレンチマダムが「ああでもこうでもない」と香りを批評していて、店員さんも負けないよう熱心に説明を繰り返しています。
聴こえてきた話は「私はこれ嫌い、これは悪くない、もっと他にないの」という内容でした。
ですがここでも販売員のオススメは全無視です。
勧められたものには目もくれず、「私はこう!」と一点張り。
販売員さんも大変だなあ、と思うのですが、彼らもフランス人なので、フランス人の特性をきちんと把握しているようです。

たとえば販売員さんと話が弾んだ時に聴いたことは、「自国フランス人のお客さんが一番手強い」という意見でした。
彼らは「似合いますよ」とか「これが一番人気です」という外野の意見をまったく受け入れないので、じっと待ってその人の好みを見て、さりげなく試香紙を出すとか、ほぼ心理戦のような接客をしているとのことでした。
 

地球カレッジ



日本とこんなに違う、フランス人の香水のまとい方・選び方

 
こうしてファッションもメイクも、肌着選びにも言えることですが、フランス人は香水についてが一番エゴイスティックかもしれません。
香り選びだけはかなりエゴイスティックに、自分軸で決定します。
つまり香り選びに「周りにどう思われるか?」という気持ちは一切なく、そこに他人軸は絶対に存在しない。
むしろ他人軸で動く自分なんてかっこ悪い、と思っているのではないでしょうか。(でも他人の批評はよくします)

香水サイトのレビューも辛辣です。
気に入らない香りについては、フランス人は正直な意見をとことん書いています。
そして彼らは書きたいから書いているだけであって、後の責任はまったく取らない。
そもそも口コミを気にしないのがフランス人なので、コメントを参考にする人もほとんどいないのかもしれません。
※しかし気に入った香りについては、ソムリエ的で芸術的とも言える素晴らしい表現をしていて、驚きます。
一方でレストラン探しではグーグルマップのレビューをよく見ていて、口コミやお店の評判を参考にする方が多いですね。
 



日本とこんなに違う、フランス人の香水のまとい方・選び方

 
それから香りのまとい方も強烈です。
何しろ量が多く、人によっては頭からシャワーのように香水を振りまきます。
私も販売員の方に大量にまかれた経験があって、それは「まとわせてもらった」ではなく、(言い方は悪いですが)「ぶっかけられた」といったイメージでした。
ということでフランスでは香水の減りが早いと思います。

ちなみに私のフランス家族は全員、香水を至近距離から喉元にブシュっと着けます。(鎖骨と鎖骨のあいだの喉元です)
腕の内側にふんわりまとう、というのが香水の着け方だとされていますが、そんなハウツーさえも無視するフランス人は本当に多い。
実際、「(香りが)強くないのか?」と訊いたら、「Et Alors(だから何?)」と返ってきました。
フランス人に「Et Alors?」と言われるとなぜか何も言えなくなってしまいます。
そして自分が新しい香水を身にまとい、義母に感想を求めた時、「私は嫌い」とはっきり言われたことがありました。
フランスにいるとこうして正直に批評されますので強心臓になります。

このように個性を大事にするフランスです。
けれどそれには奇をてらった、とか突飛なことをしでかすという意味はなく、議論や意見交換に重きを置く文化なので、「いかに自分をプレゼンできるか」というポリシーを常に持ち合わせているのだと私は分析しました。
 

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Posted by ルイヤール 聖子

ルイヤール 聖子

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2018年渡仏。パリのディープな情報を発信。
猫と香りとアルザスの白ワインが好き。